はじめてのにかいそう
次の日は振替休日。
元々二日掛けて、階層ボスを倒す予定だったのだが、昨日倒してしまったので、今日は二階層に挑む予定だ。
「おっ、今日はペアじゃないんだな?」
二人の着てきた勝負服はこれまでと違ってそれぞれタイプの違うロリ服を着ていた。
「千紗のはこれまでより可愛らしさを全面に出した、甘ロリ系? だけどちょっと活発な女の子を演出しているのかスカートは短めで動きやすそうだな。リザのはよりクールなゴスロリ系? リザの雰囲気にぴったりだ。なんかアニメとかに出てきそうな謎の少女っぽい?」
「そうだよ。これは前に作ってもらったやつなんだ。個人の特徴をより魅力的に見せるタイプだって言ってた」
おー、なるほど。
ペアものだとある程度両者の中間にならざるを得ないからな。
たしかにペアのやつは二人そろうとメチャクチャはまるが、個別に見ると少し違和感がある。
だがこっちはペアだと違和感があるが個別だと個性が際立つ感じがする。
「うん、二人共かわいいぞ」
「ありがと、おにいちゃん!」
「……ありがとうです」
元気に礼を言う千紗と、ちょっと恥ずかしそうに礼を言うエリザベート。
対照的ではあるがどちらもかわいい。
「よし、じゃあ荷物を作ったら、今日は二層に行くぞ」
「……もふもふ、モフリ放題」
リザよ。
顔が緩みまくってるぞ。
大丈夫か?
僕はとりあえず、荷物のつめ方に問題がないか、いつも以上に注意して、みまもる。
そいうや、僕のスキル【みまもり】ってダンジョン外で経験値が入るのか?
まあ、外ではスキルボードも表示されないから、入ダンと同時にスキルレベルが上がりでもしない限りわからないか。
「まあ、考えても仕方ないか。不思議職業に不思議スキルだ。何があってもおかしくない」
これまでのどんな職業とも共通項のない制限と効果を持つ職業。
これまでのどんなスキルとも共通項のない制限と効果を持つスキル。
前例がない以上、自分で調べるしかない。
「準備できたな。いくぞ!」
「おー!」
「おおおおおおおー!」
おおう。エリザベート気合い入りまくりだな!
空回りしないようによく見守ろう。
いつものように荷物検査と、着替えを済ませて受付へ。
今日はポンチョ無しなので体操服ブルマが丸見えだ。
「あれ、今日は二層に入られるんですか? もうボス討伐を終えたんですか?」
いつもの受付おねーさんのところに行くと驚かれた。
「一応昨日、行くと言ってましたよね?」
「いやいやいや。まさか一日でレベル一個上がるとは思いませんよ? まさかレベル二で挑んだんですか?」
「いえ、ちゃんとレベル三に上げましたよ」
「ならダントツの早さですね。レベル一でスライム十体、レベル二で二十体から四十体。レベル三だと百から二百体くらい必要と聞きますけど、一日でそれだけ倒されたんですか?」
普通の冒険者なら一日三十匹見つけられればというところだからね。
一日百体。二人で二百体とかなれば、スライムハンターw の僕でもちょっと厳しい。
「えっと、それは秘密です」
「すみません。そうですよね。」
「あっ、そうだ。昨日仙川の一層のボス部屋に挑んだんですが、最大最強のぴんくがいましたよ?」
「はい? えっ、それを倒されたんですか?」
「ええ、まあ」
「ああ、あなたは保護責任者ですからあなたが倒されたので?」
「いえ、この子達が倒しました」
「えええええっ! け、警察に通報を!」
「ちょっ! 何してんですか!?」
スマホから手を離してー。
「ですが、最大最強ピンクといえば専用装備がなければ、頭から突っ込んで倒すしかないと聞いてますよ? 子供用の装備があるなんて聞いたことがありませんから、当然着ている服は溶けちゃうので丸裸でってことでしょう!? 女児になんてことさせるんですか! いま警察呼びますからね! 警備員さんこの男を取り押さえて」
何事かと警備員が寄ってくる。
荒くれ者の冒険者が武器を持ってうろついているだけに、警備員の数も多いし、荒事にも慣れていそうだ。
「いやいやだから待ってー。いくらなんでもそんな事させませんよ! そうそうこの子達にスキル、スキルが生えたんですよ! それでばばーんと」
「そうだよ! おねーさん。千紗にスキルが生えたの!」
「妾にも生えました」
「はい? スキルが? レベル三で? またまたご冗談を」
「冗談じゃないもん! 本当だよ!!」
「いやいや、普通スキル生えるのってレベルが十とかですよね!? ちょっと早すぎるんじゃないですか? 聞いたことないですよ?」
「それがなぜか生えちゃったんですよ。もしかしたら子供だと生えるのが早いのかもしれません。レベルもけっこう早めに上がりましたし。成長が早いのかも」
僕は適当にそんな事を言う。
小学生がダンジョンに潜っているなんて世界でもほぼ例がないからね!
適当なことを言っても、反論などできない。証拠がなどありようがない。
「……なるほど、日本では初めての試みですし、世界で例はあるらしいですけど、だいたいそういうところはほぼ無法地帯の紛争地帯だったりするので、詳しいことは公表されていないんですよね。……まあ、そういうことなら執行猶予で」
「なんで執行猶予なんですか!?」
「そりゃあ入ダンするのにゴスロリ着せたりブルマ履かせたりしているからです。もうすでに有名ですよあなた? 変態紳士だって」
「紳士ですが変態ではありません」
「いやだって、その服装。あなたの趣味では?」
「違いますよ。うちのばーさん提供の古着です! この子とは従妹同士なんで。こっちの子の親はロリータ服の工房持ってるので、ほぼ普段着なんですよ。こっちに来る時は勝負服でいつもより気合入ってますけど。この子もその伝手でモデルさんしてるんで、その時のを貰ってるんです!」
僕はスマホにホームページ出しておねーさんに見せる。
こんな事もあろうかと、ちゃんとブックマークしておいたからな!
「あらかわいい。ほんとに二人がモデルさんなんですね」
「ありがとー、おねーさん」
「あんまり見られると恥ずかしい」
「ああ、ごめんなさいね。でもほんとにかわいいわぁ。お持ち帰りしたい」
「警察呼びましょうか?」
「冗談ですよ。わかりました。とりあえず処分保留で」
「なんでですか!?」
「こんなかわいい子にあなたが我慢できなくならないはずはありません! 保護観察処分とします」
「そりゃあ偏見に過ぎませんかね? だいたい管理局にそんな権限ないでしょ?」
「冒険者の監視監督は管理局の業務なので、あなた達については今後重点観察対象に指定しますので行動には十分注意してくださいね。万が一なにかあったら、ここの警備員達が容赦しませんよ?」
マジだこの人。
集まってきた警備員さん、なぜバンプアップしてるんですか?
「万が一なんかありません!」
「千紗、おにいちゃんとなら……」
収まりかけたところで何爆弾ぶち込んでいるんですか? 千紗さんや。
「導師が望まれるなら是非も無し」
エリザベートよ、お前もか!?
君たち、おませさんにもほどがありますよ!
「すでに調教済みですか?」
おねーさんの声がアブソリュート・ゼロ並みに冷たい。
「いやいや、調教とかしてませんですから! 二人共何言ってんねん」
「? 万が一怪我とかしても恨んだりなんかしないよ?」
「同意、何を慌てている、導師?」
ごめんなさい。
心が汚れているのは僕の方でした。
「そ、そういうことであれば、まあとりあえず様子見ってことで」
おねーさん方も心が汚れていたようだ。
大人って嫌だねー。
「とりあえず話を戻しますよ? さっきも言ったとおり、仙川一層の階層ボスが最大最強のぴんくだったんですよ。おそらく前の冒険者、あるいはその前かもしれませんが、放置していったのかと」
「その可能性は高いですね。このところ二種免許を取得した新規冒険者が増えてきて、一層に入ダンしていますから。今どき一層に入ダンする人では最大最強のピンクはどうにもできないでしょう。まっぱで挑む人がいないとはいいませんが少ないでしょうね」
「なので今後各ダンジョンのボス部屋が最大最強のぴんくだらけになる可能性があるじゃないかと。二層なんかもやばいかもですね」
「! その可能性は考えていませんでした。最大最強と言わないまでも。特大くらいのサイズが有れば、ピンクを討伐するには全裸になるしかないでしょうしね」
そんな全裸になってまで誰も討伐なんかしないよね。
「うちもたまたまた討伐できるスキルを二人が入手できたんで倒せましたが、今後放置ピンクが増えていく可能性が高いです。うちは今後授業で入ダンしますけど、そのときでかいぴんくなんか出たら、放置せざるをえないですし」
ボス部屋に入れるのは六人まで。
僕が一緒に入ったら一度に五人しか入れない。
八十人いたら十六回も挑まないといけないが、その分でかいピンクが出る可能性が高まる。
「あなたは討伐できないのですか? 一応保護責任者ですよね?」
「あー。僕の職業やスキルが巨大ぴんく向けじゃないというかなんというか」
「近接系ですか? それでも防護服を着れば」
「それはちょっと予算が出るかわかりませんので」
「あー。あれってけっこう高いですからねぇ。学校の予算じゃ厳しいかもしれませんね」
完全密閉しないと、スライムの消化液が入ってくる。
宇宙服並みの気密性が必要なのだ。でなければ着る意味がない。
しかも完全密閉だから酸素ボンベ等が必要で、これにも防護措置が必要だ。
もしこいつが溶かされたら酸素ボンベが爆発して大変なことになる。
そんな装備であるから当然高い。
はっきり言って古着を毎回溶かされたほうが安上がりなくらいだ。
専用装備なしだと誰かが裸を晒すことになるわけで、子供達にやらせるわけにもいかないから、僕か引率の教師がやらざるを得ない。
倒した時、中にいないと階層ボスを討伐したことにはならないからね。
目をつぶってもらえばいいといえばそのとおりなのだが、それでも女児の前で全裸討伐とか外聞が悪すぎる。
教師や僕たちだけで処分したあとで通常討伐に戻っても良いんだけど、最強ピンク討伐にもそれなりに時間が掛かるし次のボスがポップするまで結構時間がかかる。どこまでボス部屋を専有できるかもわからないからできるだけ効率よく回したい。
じゃないと全員が討伐する前に時間切れになりかねないのだ。
「なので今後巨大ぴんくを見かけたら放置することになると思います。一応報告だけいれますが」
「できれば倒していただきたいところですが。無理も言えませんしね。取り残されるピンクとか他の階層の高難易度ボスがあまり増えるようでしたら、職員か自衛隊員にお願いして、討伐可能か打診してみましょう」
「お願いします。まあそういうことで、手続きお願いします」
とりあえずなんとか無事に? 手続きを終えて僕たちは第二階層へと足を踏み入れたのだった。
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