はじめてのれべるあっぷほうこくとそうだん
僕たちはダンジョンを出て一旦学校に装備を置きに帰る。
僕はそのついでにPCの録画停止と電源切断のために職員室に戻った。
「和斗先生、おかえりなさい。全部は見れなかったのですが問題はなかったですよね」
岩崎先生が僕に尋ねてくる。
「はい。二人共怪我もなく戻ってきました。いま部室で使った装備の清掃と点検なんかをしているところです」
使った装備はその日のうちにきれいにしないと汚れがこびりついて、取れなくなってしまうことがあるし、装備に破損があれば修理や買い替えの手配をしておかなければならない。
「それは良かったです。今日のことについては後日報告とビデオの提出をお願いしますね」
「はい。了解しました」
「今日は三人とも疲れているだろうから、しっかり休んでくださいね」
「わかりました。ありがとうございます」
僕はタブレットPCの後始末をして、職員室を出て部室へと向かう。
「どうだ? 清掃と点検は終わったか?」
「おわったよー。ポンチョも長靴もゴーグルにヘルメット。プロテクターにペンチはちゃんと拭いて破損もなし」
「後リュックとテントや使ったペグに椅子。こちらも問題ありません。あと着ていった体操服と下着にも破損はありません。ちょっと汚れていますが帰ってから洗濯します」
清掃と点検を終えた装備が机の上に並べられてあった。
「大変けっこうですが、体操服とブルマと下着類は並べなくても大丈夫です! すぐにしまいなさい!!」
なにか犯罪者の押収物を並べられているようにしか見えないよ。
もちろん犯罪者は僕だけどな!
「ちゃんと点検するというので並べたのに点検はいいのですか? 導師よ」
JSのブルマと下着をちゃんと点検するとか、どこの変態さんですか!
「個人の持ち物は個人で管理してください! それ以外は学校の備品ですので管理責任者の僕が確認する必要があるだけです。いいですか? 今後私物の管理は自分でやること。僕に見せてはなりません!!」
「はーい、わかった!」
「命令受諾」
二人はそれぞれ持ってきた袋に自分の体操服と下着を入れていった。
うん、千紗はキャラクターぱんつか。
まだまだ子供だね。
リザよ。
黒はまだ早いと思う。
せめてブラ着けるようになってからしなさい!
二人共ブラはまだのようです。
いや、見たんじゃないよ? 見えちゃったんだよ。
おもいっきし机に広げて並べてあったからな!
こんなところ誰かに見られたら絶対おまわりさんを呼ばれる。
僕が呼んでもいいくらいだ。
「備品の方はちゃんと手入れされてるな。破損もない。さっさと片付けて、遅くならないうちに帰るぞー」
「らじゃー」
「命令受諾」
僕は体操服や下着類以外の備品を手早く確認し片付けさせる。
その間自分の装備も確認を済ませ、片付ける。
管理局で着替えた時にざっと手入れと確認は終わらせておいたからすぐ終わる。
女の子の着替えは子供でも長いね。
ほとんどの手入れと確認は向こうで終わっちゃったよ。
まあ、脱ぐ方はともかく、ゴスロリ服着る方は大変そうだし。
まもなく装備類はロッカーにしまわれ、私物は自分のランドセルの中に。
ふう、これでもう危険物はない!
JS無防備過ぎて怖い。
それとも女子校だからか?
あー、でも小学校って共学でも体育とかの着替えって低学年だと一緒にしてたっけ?
女子校だとそういう経験ないから羞恥心が育ってないのか?
そういや、着替えの時カーテン閉めない子がいるとか言ってたな。
女子だけしかいないと気が緩むんだろう。
ここは男性が気をつけるべきなんだろうな。
少しの気の緩み、油断が致命的になる。
それはダンジョンでなくても同じだと肝に銘じよう。
まあ、男にとって女子校はダンジョンのように未知の空間だけどね!
さて、お片付けも終わって、帰宅準備も整った。
「帰りはリザの家に寄って次は千紗のところね」
初めての入ダンだけあって親たちも心配しているだろうからな。
慣れない体験だけに途中で力尽きてしまうかもしれないし。
「楽しかったねー。特に水スラ! 最初はやられちゃったけど、あれ消えるときがスライムの中で一番キレーだった!!」
「うむ、同意。うまく誘導すれば思い通りの絵がかけるし。なかなか難しかったけど」
あのあと水スラ何匹か見つけてリベンジしたのが楽しかったみたいだ。
「キメラスライムは不思議だったねー。同じように混ぜたのに混ざったりマーブルになったり水玉になったり」
「なんか変な色になったのは気持ち悪かった。混ぜすぎたかな?」
「きっとそうだよー。三個くらいまではキレイだったし」
キメラはなー。
反対属性入れたりすると中で喧嘩しちゃうんだよね。
それでムラがあったり、互いが互いを飲み込み合ってウロボロスみたいな変な模様が出る。
逆に親和性のある属性同士だと、混ざり合う傾向が強く、混ぜる比率で色や性質が変わったりする。
まあ、ピンクは遊ぶのに向かないので、あまり使われることはないけど。
いたずらや嫌がらせでピンクを投げつけるとかあるらしいけどね。
『ぴんくの枕投げ』なんてタイトルで投げ合った動画を公開しているやつがいるとか。
美少女同士ならともかく男同士とかはやめてほしいものだ。
もちろん謎の光が輝きまくったそうです。
まあそんなこんなでやかましい道中をやり過ごし、二人を無事送り届けた後、今日の出来事について報告と相談をすべく元所属していたサークルの会長に電話をかけた。
『おう、進士か。久しぶり、というほどじゃねぇが、まさかとは思うがまた俺たちとダンジョンに潜りたいとか言わねぇよな?』
「いいませんよ。今日はちょっとざまぁができそうな出来事が有ったので、その報告と相談に乗っていただければと」
『おいおい、ざまぁする相手に普通報告とか相談するか? お前も変なやつだな』
「まあ、変な職業持ちですから今更でしょう」
『まあそうだな』
「そこは否定してくださいよ!」
『自分で言ったんだろうが。面倒なやつだな。で何が有った?』
「まあいいですけど。……僕のレベルが二になりました」
『っ! そりゃあ、おめでとうと言っていいのか、今更といっていいのか。そりゃあ確かにちょいざまぁだな。もう少し付き合ってたら俺たちも共同研究として名前が載ったかもしれないってことか』
「いや、多分先輩たちと一緒にいたらまだレベルは上がっていなかったと思います。まだはっきりとした条件はわかっていないんですが」
『そりゃあ、俺たちが発動条件を邪魔してたってことか?』
「いえ、邪魔していたんじゃないと思います。条件に合っていなかったんだ、と思います」
『条件に合っていない、か。色々条件を変えては見たんだがな』
「先輩たちでは絶対に実現できない条件、そして僕の内なるものも関わっている。そんな気がします。先輩が前にお見舞いに来てくれた時に言ってましたよね。『お前の内なる条件が整っていない』と」
『ああ、言ったな』
「先輩たちでは条件を満たせず。僕の内にあるなにか。この二つの条件が合わさって初めてレベルが上ったんじゃないかと僕は思うんです」
『なるほど。そこまで言うってことはなにか根拠があるんだな?』
「ええ、僕のレベルが上ったの、モンスターを倒したときじゃないんですよ。しかも二回とも」
二回めも千紗とリザのレベルが上った時。
『っ! そりゃあ珍しいな。確かにダンジョンを歩いているだけでも経験値は入るとは言われているが、討伐やそれに参加していない時にレベルが上がるなんて本当にレアケースで、中には眉唾ものの発言だって言っているやつもいる』
「事実です。それもあって大体の見当がついたので報告とご相談をと」
『そりゃあ、俺自身レアジョブ持ちだったのもあり、レアジョブについての研究のためゼミにも参加している。大学院にも進んだ。俺やお前のようなレアジョブ持ちは珍しいから、できれば研究させてほしいとは思っている。だがお前と一緒にダンジョンに潜るのはだめだ。また暴走しちまう』
「ええ、それは僕もわかっています。それにさっきは先輩たちが阻害条件ではないとは言いましたがそれもまだ確定したわけではありません」
『そうだな。今日初めてレベルアップしたってんなら、まだまだデータが少なすぎる』
「なので、先輩やサークル、ゼミのみんなにはとったデータについて検討し、どういう対照実験をすればいいのかとか、考えてほしいんですよ。やっぱり自分のことになるとどうしても主観とか希望が入っちゃいますからねぇ。僕が集めた情報を客観的に解析し、考えられる条件を絞り込んでほしいんです。これまでみたいに」
『しかしそれでも、お前に無茶させるかもしれん。今度は俺たちも一緒に潜るわけじゃないんだ。フォローできんぞ』
「大丈夫ですよ。これまで僕は守りたいものがなかった。自分の命を含めて。でも、今の僕には守りたいものがあります。それを危険に晒すようなことなんかしません」
『なんだ、女でもできたか? もうやったか?』
「なんでそんな嬉しそうなんですか!? 女もできていませんしやってもいません。でも大切に思える子たちです」
千紗もリザも一生懸命で本当にいい子だ。
あの子達が傷付くところなんか見たくない。
それまでの僕は妹たちを見殺しにした罪悪感でいっぱいだった。
いっその事、僕が死ねばよかったと、ある意味死に場所を探していたような気がする。
だがもうそんな気は一ミリもない。
僕の助けた従妹。それを守るといいきる少女。
二人共僕の大切な人になっていた。
それが僕の内なるものだと僕は確信している。
ならば、彼女たちを傷つけたり、悲しませたりしたらおそらく僕のレバルはまたピクリとも上がらなくなる。
そんな気がするのだ。
『そういうことであれば協力しよう。できるだけ客観的なデータを出せ。個人情報にかかわるところは消していい』
「ええ。基本的に大体のところはビデオに取っていますから。見せて問題ないところは見せられると思います。ただ、僕以外の人物も写っていますので、本人と親の許可があればですが」
『親ぁ? なんで親が出てくるんだ?』
「今、一緒にダンジョンに潜っているのは小学生の女の子なんですよ」
『……今通報する! そこを動くな、今どこにいる!?』
「冗談はやめてくださいよ」
『冗談なものか! 小学生の女児をダンジョンに連れ込むとか、犯罪だぞ!!』
マジ本気かよ!
「ちょっ、ちょい待ってくださいよ、話せば分かりますから!」
『そう言って犬養は殺された! 世の中、話しのわからんやつばかりだ。まずは物理で説得。話はそれからだ。いいから自首しろ、じゃなかったら通報するから居場所を吐け!!』
「いいからちゃんと聞いてくださいよ。こないだ入ダン年齢撤廃されたってニュースでやってたでしょ? 保護責任者付きで! 今その保護責任者ってのをしてるんですよ!! 学校側に頼まれて! じゃなかったら、入ダンできるはずないでしょ!? 受付だってあるんだから!」
『……そういや、なんかそんなこと言ってたか? 俺たちとは無関係だったから聞き流していたが』
「いってたんです。後でニュースサイトでも検索してください」
僕は非常勤講師になった経緯などを説明し、おまわりさんこっちです、の事態をようやく回避したのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ブックマーク、評価等していただければ励みになります。




