はじめてのにゅうだんうけつけ
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
二人を伴って受付に歩いていくと、なんかすごく注目を浴びているような気がするが気にしないでいこう。
なにせJSブルマ二人を引き連れての入ダンだ。
僕だって他人なら見てしまうだろう。
「おー、ここが入ダン受付かぁ。千紗受付行ってくる!」
開いている窓口に駆け込む千紗。
「おねーさん、入ダン手続きお願いします!」
「あらあら元気ね。でもごめんなさいね。子供はまず保護責任者の手続きをしないといけないのよ」
「うみゅう。残念。おにいちゃん早くぅ。まずおにいちゃんからだって!」
「分かったから騒ぐな。他の人に迷惑だろ」
「ごめんなさい」
「いいのよ、この時間は人が少ないし。これからはあなた達のような子供も増えてくるだろうから、みんなにも慣れてもらわないとね」
子供たちを大人しくさせるのははなから諦めているのか、他の利用者に慣れてもらうほうを選んだようだ。
子供に言い聞かせるより大人を慣れさせたほうが効率は良いよね。
「はははは、そう言っていただけると助かります。もう少ししたら団体で連れてくるかもしれませんので」
「ええ、話は伺っています。そこの小学校の生徒達のことですね。いまうちと成城で団体用の窓口を新設しているので、そちらの授業で実習が始まるまでにはご用意できるかと思います」
「それはありがとうございます」
教頭を通じて校長先生から話が行っているのだろう。
二人というか実質千紗だけでこの騒がしさだ。
団体用に動線が分かれるだけでもありがたい。
「とりあえずそっちの子が待ちきれないみたいですから手続きをしてしまいましょう」
「はい、お願いします」
僕は冒険者免許証を提出する。
「入ダン歴が短いのにずいぶん潜られているんですね。はい、保護責任者としての基準を満たしていますので、入ダンおよび引率を認めます。こちら管理ナンバーになります。何か問い合わせする場合は必要になりますのでなくさないようにお願いします。おわかりだとは思いますが」
「はい、大丈夫です」
何かというのはメンバーの誰かが行方不明になったとかの問い合わせの時とかだね。
パーティーメンバーじゃないと位置情報とかは教えてくれない。
一応パーティー登録してあればライブカメラのIDからメンバーかどうかはわかるらしいが、カメラは入れ替えられたりする可能性もあるから、本当に本人か確認されるまで時間がかかる。
緊急時には使えないし、緊急時でないと問い合わせなんてすることはないから、結局この紙が必要になるということだ。
「では、ライブカメラを設置してスイッチを入れてください」
僕はカメラを受け取ってヘルメットに装着する。
「はい、いいですよ。ちゃんと接続できていますね。これであなたの手続きは終わりです。おまたせしましたお嬢様、冒険者免許を提出してください」
「はい!」
千紗は元気よくパスケースから免許証を取り出して受付のおねーさんに渡す。
「冴木千紗ちゃんで間違いないですね?」
「はい、千紗は千紗です!」
「写真がゴスロリなのでちょっと分かりづらいですが、だいじょうぶ本人と認めます」
ウィッグは被っていたが化粧自体はしていなかったからね。
「このライブカメラを着けて映像が来るのを確認したら手続きは終わりですよ」
「はい!」
千紗はおねーさんからカメラを受け取って自分のヘルメットに装着する。
「あれ? スイッチどこ?」
変に触ってスイッチが切れたりしないようにちょっと凹んだところにあって、分かりづらいからね。
「本当はスイッチを入れてから着けるといいんだが、切る必要もあるから手探りでも切ったり入れたりできるようにしとこうな」
僕は千紗の手を導いてスイッチの在処を教える。
ちっさくてぷにぷにだな、千紗の手は。
「スイッチは全部で三つある。一つは主電源、ここだ。入ダン中は切ってはいけない」
「おー。ここだね」
「なにかの拍子に切れたりしないように、一度電源を入れるとロックが掛かる。電源スイッチの操作は受付でしかしちゃいけないことになっているから気をつけるように。簡単には外れないようになっているから大丈夫だと思うが」
電源スイッチのロックが掛かったら特殊な機器がないとロックが外せないようになっている。
まあ、単純な機構なので外そうと思えば外せるそうだけど。
とはいえうっかり電源切ると後で呼び出し食らうらしいが。
千紗が主電源のところを触って確認する。
「でもまだ映像も音声も流れない。映像を流す時はここ、音声を流す時はここだ」
僕はさらに二つのボタンに導く。
「トイレに入るとか着替えるとかの時は音声または映像のスイッチは切っていい。できれば片方だけは残しておいてほしいそうだが気になるんであれば両方切ってもいい。ただし十分以上両方を切っていると警告音が鳴るから三十秒以内にどちらかのスイッチを入れないとオペレータから呼び出されるぞ。場合によっては救急隊が駆けつけるから気をつけるように」
電源を切らない限り、向こうからの呼びかけはできるので、それを放置していると緊急事態と判断するのだ。
そうでなくとも映像や音声を切ったときに何をしていたのか説明を求められる。
犯罪行為に加担していないかなどを確認するためだね。
「わかった」
千紗は音声と映像、両方のスイッチを入れうなずく。
「はい、接続確認出来ました。千紗ちゃんも入ダンを許可します。これは管理ナンバーの控えです。おにいさんとはぐれたりしたら千紗ちゃんが管理局に連絡するのよ?」
「わかった! おねーさんありがとう」
千紗はパスケースと一緒にその紙をしまう。
僕の真似をしたようだ。
「どういたしまして。次はお嬢さんね。免許証の提示をお願いします」
「命令受諾」
「ええ?」
「お気になさらず。子供のお遊びです」
受付のおねーさんが差し出された免許証と本人確認を行う。
「ああそういうことですか。こちらもゴスロリ写真なんですね。はい大丈夫です。本人確認取れました。同じようにライブカメラを着けてください」
「命令受諾」
リザはそれを受け取り、まずスイッチの位置を確認する。
「スイッチってこんなふうになってたのね。千紗よく見ていなかったからわからなかったよ」
二人でスイッチの位置や形を確認した後、リザは音声と映像のスイッチを入れてヘルメットに固定する。
「はい、接続確認できました。同じく管理ナンバーの控えよ。なくさないようにね」
「だいじょうぶ。問題ありません」
リザも同じくパスケースに控えを免許証とともにしまう。
「では気をつけていってらしゃいませ。無事のお帰りをお待ちしております」
「はーい!」
「状況開始します」
僕は丁寧に対応してくれたおねーさんに頭を下げ感謝を示し、二人を伴い奥へと進む。
「ここの通路を抜ければもうダンジョンの入口だ。そこから少し下って階段の下に入場ゲートがある」
「いよいよだね!」
「これが妾の覇道の第一歩となるであろう」
どこに覇を唱えるつもりだよエリザベートさんや。
「あれ? 行き止まり?」
「ここはモンスター逃亡防止のための扉だ。今となってはあんまり意味ないけど、取り外すのにもお金かかるからそのまま運用されているわけだ」
階段からじゃなく、いきなり湧いて出るからね。
「なんだ、びっくりしたよ」
「ここに冒険者カードを当てれば扉が開く。やってみるか?」
「うん!」
千紗は胸元から再びパスケースを取り出し、冒険者カードを開閉システムのセンサーに当てる。
ロックが外れる音がして、扉が向こう側に開き始めた。
「おー!」
「出るときはこっちの扉は使えないから気をつけろよ。扉の向こう側には開けるためのセンサーはないからね。並行して走っている隣の通路の扉から出ること。見ればすぐわかると思うけど」
「なんかそんなこと講習でいってたね。なんでかは知らないけど」
「入っていく冒険者と出て行く冒険者の動線を分けるためだな。出口側には退出カウンターや買取カウンターがある。退出手続きをしたやつが再び入ると、ライブカメラなしで入れちゃうからな。分けておけば逆流防止が簡単なんだ」
「なるほどー。わかった」
扉が開き切ると、そこには相も変わらぬ当時の幻影が目に入ってくる。
「ママ、行ってくるね」
千紗は母親に総挨拶すると、ダンジョンに足を踏み入れた。
「千紗のママ。千紗は守護者たる妾が守ります。安心してください」
リザも後を追った。
「母さん、玲奈。会いに来れなくてごめん。これからは頻繁に顔をだすよ」
変わらないはずの母の顔が穏やかになっているように感じられた。
そうだった。
完全に動けなくなるその時まで、母は僕の身を案じていたのだ。
僕を批難しているとばかり思いこんでいたから、恨みがましい顔をしていると思いこんでいた。
だが実際は違っていた。
この顔は僕の身を案じて、逃げ延びたのを喜んでいる顔だ。
妹だって助けを求めているが逃げた僕を責める顔ではない。
よく見ればそんなことはすぐにわかったはずだ。
なのに僕が見ようとしてこなかったため、こんなにも遠回りしてしまったのだと気づく。
そして、見える景色が変わってしまっても、僕の中にあるものは変わらなかった。
「いつかこのダンジョンをクリアして、みんなを助け出すよ」
それまで待っていてくれ。
何をどうやればクリアしたことになるのか、助け出すことができるのか、そもそも助けられるのかさえわからない。
だけど僕は諦めるつもりなんて無い。
決意を新たにした僕だった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
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