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はじめてのくらぶかつどう

 とりあえずカオス空間を払拭するため、僕は軽く咳払いし、タブレットPCを取り出しプロジェクターにつなげる。

 その間に岩崎先生は教室の後ろで三脚を立ててビデオ撮影の準備。

 裏じゃないよ。

 クラブ活動についてはできる限りビデオに撮って後への資料とすることになっている。

 二人には事前に許可は取っていたそうだが、稚拙な授業があとに残るのはちょっと恥ずかしいけどこれも仕事だと割り切っている。

 僕や子供達が見せたくないところは編集していいと言質は取ってあるし。


「さて栄えあるダンジョン探索クラブの第一回目は、モンスター溢れについてです。ふたりともモンスター溢れについてはどのくらい知っているかな」


「はいはーい」

「はい、冴木さん」

「ダンジョンから突然モンスターがあふれてきた!」

「そのまんまですね。君たちはネットとかで調べたりしなかったのかな?」

「うぐぅ。千紗のスマホはダンジョン関係はロックが掛かってて見れないんだよ」

「妾の遠視能力は強力すぎるがゆえに封印されている。封印を解除するには、上位存在からの承認が必要なのです」


 はいはい、君も親にチャイルドロックかけられているのね。

 ダンジョンやモンスター関係のサイトは結構エグい画像や動画が投稿されているからね。

 モンスターの惨殺はともかく、人間がモンスターに蹂躙されている姿とかね。

 これもダンジョンの中でなぜか携帯がつながるせいだ。

 そのためDチューバーなんて言われている人たちがライブカメラを持ってダンジョンに潜って生放送してたりする。

 もちろん安全マージンを取ってはいるのだろうがそれでも事故は起きる。

 あれな映像が生放送され拡散されるなど日常茶飯事だ。

 親たちがこぞってロックするのもうなずける。


「じゃあ、テレビで見るくらいかな?」

「うん、そうだね」

「じゃあ、いちおう当時の映像なんかも交えて説明していくね」


 僕はタブレットを操作し、当時の街中をうろつくゴブリンなどの映像を映し出す。

 中には人間が襲われているようなものも有ったが、流石にそういうのは見せられないので比較的マイルドな動画をチョイスしている。


「まあこんな感じで、一部地域限定ではあるけど大量のモンスターが暴れまわったんだ」


 普通ダンジョンからモンスターが溢れるといえばその出入り口だろうと思われていたが、今回のモンスター溢れは街中にいきなり湧いて出るという非常識さだった。


 そのためモンスターが一気に広範囲に拡散し、対処が遅れた。

 一応モンスター溢れ対策としてダンジョン入り口は厳重に封鎖され、冒険者資格のある人間か、政府機関からの許可がある者しか入れないようになっていた。

 しかしそんなものなど物ともせず、モンスターは湧いて出た。

 元々モンスターはダンジョンの中でリポップすると言われていたし、死ぬと光になって消えて後にはドロップアイテムというものを残す。

 まさにゲーム世界のモンスターのような存在だ。

 そのため中にはダンジョンのことを「神の遊技場」なんて呼ぶ者もいるとか。


「今回、このクラブ活動が始まったのも、今後各クラスでダンジョン教育が始まるのも、元はと言えばこのせいだね。ではなぜダンジョン教育が必要なのかわかるか?」

「はい! おにいちゃんとひと夏の冒険をするためです!」

「全く違います、はい佐藤さん」

「エリザベートです。妾にかかれば、真の目的を看破することなど容易いことです。裏から世界を牛耳らんとする巨大組織と戦う戦士とするため、幼い頃から鍛え上げようというのでしょう」

「巨大組織とは戦いませんが、趣旨は合っています。ダンジョンに入ってある一定時間そこで過ごすと職業とステータスというものが与えらる。これはモンスターと戦う時あるいは逃げるときに重要な役割を果たすんだ」


 最初にダンジョンに踏み込んだ人はさぞ驚いただろうな。

 ダンジョンの探索中いきなり目の前にステータスボードというものが現れ、自分の職業が表示されたのだから。

 職業が見られるまでは時間にして連続三時間ほど。

 一層でこの職業取得の【儀式】を行う必要がある。

 それを行わなければスライムすら倒せないのだから。

 また、このステータスボードは意志の力で出したり消したりできるし、許可すれば特定個人にも見せることができる。ただし録画はできない。


 一見自分の状態がわかる便利なシステムであるが微妙に役に立たないこともある。

 ステータスボードにもレベルや個人差があるようで、レベルが上がらないと、ステータスに表示される情報が少なかったり、人によって表示される項目や情報に差があったりするのだ。

 たいてい初期段階だと、職業くらいしかわからない。

 しかもヘルプも何もないから、表示されている項目がどのようなものかも推測する他無い。

 僕のステータスボードに表示されているのも【しょくぎょう】の項目だけだ。

 なにかの呪いかのように僕はレベルが上がらないからね。ステータスの詳細も未だにわからない。

 さらにはなぜかひらがな表示なので、なお意味がわからない。

 あまりにもレベルが上がらないので、もしかしたら【食業】【諸苦行】なんじゃないかという冗談混じりの発言も飛びかったほどだ。まあその後、マジに漢字変換で出てくる謎変換まで検証しようなんてこともして、わけがわからない事になったけど。


「ダンジョンより職業が与えられて初めてモンスターと戦う準備ができたと言える」

「おにいちゃん、職業がないとモンスターとは戦えないの?」

「その通り。外に出てきたモンスターは冒険者でない一般人が攻撃しても全く倒すことができなかったんだ」


 これは保護バリアといわれる一種の力場? っぽいもののせいだと考えられている。

 ネットあたりではAT○ィールドとか勝手に呼んでるけど。

 その保護バリアで守られたものを傷つけるには同じ保護バリアをぶつけ、中和してやるしか無い。

 AT○ィールドで侵食する感じ、といえばわかるだろうか。ネットスラングのほうが理にかなってるのか事の本質を的確に捉えているのか。

 当初ダンジョンに潜った自衛隊は、角うさぎやカピバラもどきなどにアサルトライフルなどで対抗したが全く刃が立たず、結局素手でぶん殴ったり、蹴ったりナイフで切りかかったりしてなんとか倒した。

 ちなみにスライムはほぼ踏み潰しだそうだ。


 このことからダンジョン内では人の手から離れたものは保護バリアの影響圏から外れ、バリアの中和ができなくなるためダメージが与えられないという予測が立てられた。

 今わかっているのは保護バリアの強さはステータスボードで言えばDEF(人によっては防御力等の表示)の数値がそれに相当し、それと攻撃力との差分がHP(人によっては体力等の表示)の減少幅になるとわかっている。

 この保護バリアの影響が及んでいない攻撃力はゼロとみなされるため、職業のない人間あるいは人間の手から離れた武器ではいくら攻撃してもダメージは与えられないことになる。

 例外は魔法攻撃だけだ。

 魔法はそれ自体に保護バリア的性質があるようで、攻撃力に応じて敵にダメージを与える。

 そんなことを説明していった。


 厳密に言えば、魔物からのドロップアイテムにもDEFやATKが載るらしく、それらで作られた武器であれば、遠隔攻撃ができないわけでもない。

 けっこうな高コストになるため流石に銃弾といった消耗品に使うのはもったいないが。

 しかも使う素材の量にもATKは影響されるため、銃弾のように小さなものでは威力も限られる。

 一キログラムあたり百ATKの素材を使って百グラムの銃弾を作ると十ATKになってしまう。

 さらには銃弾そのものの速度を上げたり、弾の重さを他の一般素材で底上げしても、ATKは十から上がることはない。

 つまり、ATK値が同じなら二十二口径だろうが、44マグナムだろうが、削れるHPはおなじになるということだね。

 もちろんHPが全損していれば与えるダメージは弾丸の威力に依存するのだが。


「ダンジョンに連続して三時間ほどいれば、その時点で職業が与えられ、保護バリアが機能し始める。最初はレベルゼロなので、各ステータスが低くて大した防御力も攻撃力もないが、この状態になって初めて戦うことができるといえる。なので君たち職業のない人はモンスターに会ったら逃げ回るしか方法はない。決して弱そうだからと戦ってはだめだぞ。戦っても全くダメージを与えることができないからね」

「妾のこの邪眼の力さえ通じんというのか?」

「それは職業が有っても通じないね」

「なんと、すでに妨害工作が取られていたとは。どこの機関の仕業でしょうか?」


 邪眼などというスキルはないしね。妨害する機関もないよ。

 まあ、今後生えてくるひとがいないとまでは言わないが。


「また基本的にダンジョンで与えられた力はダンジョンの中でしか通用しない。例外はダンジョン溢れのときだけだね。おそらくダンジョンと地上がつながったためと考えられている。だから職業やスキル、ステータスが上がったからといって、外でむちゃしたらだめだよ?」


 ダンジョンでは超人の冒険者でも地上ではただの人だ。

 モンスター溢れのときは冒険者も地上で力が使えるということが知られるまでに結構な時間がかかったため、被害が拡大した。

 まあ、所詮ゴブリン程度なので、大人なら走って逃げれば逃げ切れた。

 倒すことができなくても捕まえることはできたし。

 逃げ切れなかった子どもたちが犠牲になったということだ。


「さて時間もなくなってきたので、次回の予定について話しておこうか。次回は課外活動になる。さすがに週一回の必修クラブだけでは時間が足りないから、君たちと僕の都合を合わせて課外活動を行うつもりだ。チャットにグループを作ったので、その中のファイルを開き都合のいい日に丸をつけてくれ。週二~三回程度課外活動を行う予定です」

「千紗なら毎日でもいいよ!」

「だめです」

「えー!」

「やる気があるのは結構だが、僕もリハビリや講義の準備等があるので、毎日は無理です」

「そっか、じゃあ仕方ないね! じゃあじゃあ、今日早速!!」


 千紗はやる気満々だね!


「兵は拙速を尊ぶとの言葉があるように、敵に対し先手を打つべきかと」


 難しい言葉知ってるな、エリザベートw さすが厨二。

 何と戦っているかよくわからないけど。


「では帰りの会が終わったら職員室に来るように」

「はーい!」

「うむ、その命令(オーダー)受諾した(アクセプト)


 ちょうどチャイムが鳴って第一回のクラブ活動は終了となった。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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script?guid=on異世界のジョブズに、僕はなる ~定年SEの異世界転生業務報告書~
もよろしくお願い致します。こちらは異世界ファンタジーになります。
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