助け
爺の後ろにいた鳥族の男二人が前に出てこようとする。
「おい、逃げるぞ!」
戦える術がないオレ達には、逃げるが一番だ。
オレはスールを背負い、森の中へ逃げようと走り出す。
後ろからバサバサと音がし、振り向くと飛びながらこちらにやってくる鳥族の男達。オレぐらいの背格好の男が楓の方を、そしてガタイのいい奴がオレの方へと向かってくる。
「待て!」
『まてといわれて、まつやつなんておらんのにね~。なんでいうちゃろか?』
緊迫した中、オレの横を走っているノン子さんの言葉に、吹き出しそうになる。
森の中へ入りジグザグに走れば、木が邪魔をして翼で追いかけてくるのは難しくなるはずだ。それに夕暮れだ。もう少しすれば夜になる。闇に紛れて隠れることが出来る。
しかし、体力がそこまでないオレに、スールを背負い走るには無理があり、森へ着く前にへばってしまった。体、鍛えときゃよかった。
オレの前に男が降り立ち、楽勝だというような顔をして捕まえようと手を伸ばした。
『ミズキッ!』
「イテーッッ!!」
シャーッとノン子さんが声を出しながら飛びがかり、男の腕を爪で引っ掻いた。躊躇なく、おもいっきり引っ掻いたのだろう。血がダラダラと垂れるほどの深い傷だった。
「こいつ!」
『フン。そんなおそさでアタシをつかまえようなんて、チャンチャラおかしい』
チャンチャラおかしいっていう言葉をノン子さんから聞けるなんて。そっちのほうが、おかしくて面白い。笑わせるなよ、ノン子さん。
その男は怒りで顔を真っ赤にしながら、腰にあったデカいナイフを取りだした!
「ノン子さん、ナイフ!」
『だいじょーぶ、へまなんかしないとよ!』
そう言ったノン子さんは、ナイフを身軽にヒョイヒョイと避け、切りつけてこようとする男に攻撃していった。強い。
楓は!? と、左を見ると、鳥族の男しかいない。足の速い楓は森の中へ逃げ込んだみたいだ。
追っていた男が森の入り口から中へ弓矢をかまえていたが、放つことを諦めたようだ。よかった、無事逃げられた。
オレ達も森へ入ろうと右足を踏み出し前を向くと、目の前にギルムと爺がいた。
「っ!」
「手間をかけさせるな、人族」
「女神さま、ぼくをおいてにげて!」
「できるかよ、そんなこと!!」
こいつらにスールを渡したら、殴られるのがわかっているんだ。誰が渡すかよ!
「あっ!」
前の爺達に意識がいっていたため、楓を追うのを止め、後ろから来た男がオレを弓矢で狙っていた。
「おい、止めろ! 長、考え直してください! これは間違っています!」
カロンの親父さんが飛んできて、鳥族の男を止めに入り、爺に訴える。
「お前、儂の命を聞かぬというのか? 人族の言葉に惑わされおって!」
「出来損ない、こっちに来い!」
ギルムがスールの腕を掴む。
「スールに触るなっ!!」
離させようと体を動かすが、ギルムは腕を離そうとしない。
その時だった。
「うっごおっっ!?」
「あ?」
いきなりギルムが腰を押さえ、オレ達から離れ地面に膝をつく。
「大丈夫? お兄ちゃん!」
オレの横に楓が来る。
「楓……お前が?」
「うん。森から走りだし、勢いつけて飛び蹴りした」
と、飛び蹴り? いくらスポーツ万能といっても飛び蹴りするなんて。ま、助かったからよかったけど。
「て、てめーっ」
「息子になんてことをする!?」
よろよろと立ち上がったギルムに、爺が駆け寄った。
なんだよ、自分の息子が痛めつけられたら怒るんだな。勝手すぎる。
カロンの親父さんは、男に殴られたのか、腹をおさえうずくまっていた。
「おい、こっちに加勢しろ!」
爺の言葉に、あちこち傷をつけられたガタイのいい奴がもう一人の男と共にやって来る。
ノン子さんもすかさず走ってきて、オレの足元で爺達を威嚇した。
「お兄ちゃん……どうする?」
「ああ……」
囲まれてしまった。
いくらノン子さんが強くても、四人の相手は厳しい。
逃げようにも誰かが捕まるだろう。一番先に捕まるのはオレか、スールだ。
どうすればいい!? どうすればこの窮地を脱することが出来る?
漫画や小説なら、ここで助けが入ったり、急に魔法が使えたりする。しかし、現実はそうならない。
やっぱり、水の中で話せたり歩けるとかよりも、攻撃出来るような魔法が欲しかった!
「足の腱を切れ。そうすれば走ることが出来んからな」
「!?」
爺の言葉に男二人はナイフを手に、オレ達との距離をジリジリと縮めてきた。
ヤ、ヤバイ!! このままだとヤバイぞ!!
だ、誰か助けてくれ! 助けてくれよ!!
そう願った時、ザザザッと草むらが揺れる音、そしてザンッッッと地面に降り立つ音が聞こえた。
そして、ガチャンガチャンとする音が辺りに響いた―――。




