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がんたれ

お読みいただきありがとうございます。

タイトル変更しました m(_ _)m

お話の流れは変わっておりません。

よろしくお願いします。




「スール?」


 横に行き、俯いたスールの顔をあげさせようと名を呼ぶが、スールは動かなかった。


「スールは別にいるんだよ」

「どういうことだ?」

「こいつは拾われっ子! ね~父様~」

「ああ、そうだ。イルグというこの村の男と、別の鳥族の村から嫁いできたピジには、スールという赤子がいた。ピジは自分の親に子を見せたくなり、里帰りをしたいとイルグに話した。夫婦で村へ行く途中、その赤子が病気で死んだのだ。ピジは自分のせいだと責めたため、イルグは悲しみにくれるピジをこのバルジル村へ連れて帰ることにした。その時、とある町でピジが捨てられているそやつを見つけ拾ってきたのよ。ピジには赤子が自分の子に見えたのだろう」


 スールは捨てられていた。だから、鳥族の村なのに、鳥ではないスールがいたのか。そして、自分が何の獣人なのかわからないと言った意味もわかった。


「だとしても、自分の子として育てていたんだろう?」

「所詮身代わりよ。イルグは無口な奴でどう思っていたか知らんが、ピジはそやつのことをどうあつかっていいかわからず、苛まれていった。もともと心が弱い女だった」

「で、でも、ぼくにはお父さんとお母さんだ……」


 か弱い声でスールが顔をあげた。その瞳は涙で潤んでいた。


「お母さんだって? お前のことを、なぜ羽が生えてこないのかと怒鳴っていたじゃねーか」

「それでもやさしいときもあった……」

「おれ、知ってるぜ。イルグが死んでからピジはいつも、イルグはどこ? スールはどこ? って呼んで探していた。お前がここにいるって言っても知らんぷり。ギャハハハッ」

「羽はもとより、お前は出来損ないだから捨てられたのよ。そんな必要とされない出来損ないを我々、誇り高き鳥族が仕事を与え使ってやっているんだ」

「そうだ、感謝しろよ!」


 この親子は人の痛みをわからないのか!? なぜ平気で人を傷つける!?

 泣き出したスール。

 両親の葬式の時、親戚から囲まれたオレと楓のように、スールがだぶって見えた。

 あの時のオレ達には、ばあちゃんがいた。

 スールには―――オレ達がいる!


『がんたれね』

「ああ、ノン子さんの言うように、がんたれだ。楓!」

「うん! わかってる!」


 震えて泣いているスールの左手を取り、ギュッと強く手を繋いだ。右手は楓が繋ぐ。


「あ……」


 泣きながらオレ達を見るスール。ノン子さんがスリスリと慰めるように、スールの足に顔をこすりをつける。


「泣くことはない。オレ達にはスールが必要だ」

「そうだよ。スールのおかげで助かったんだから。スールは出来損ないなんかじゃないよ!」

「め、女神さま……カエデさん。それにノン子さんまで……。ありが……と」

「誇り高き鳥族? 何が誇り高きなんだ?」


 スールの涙をオレの手で拭い、オレはおさを横目で見ながら、さっきされたように鼻で笑ってやった。


「何!? 我々のこれを見てわからないのか?」


 長が怒りを表し、一歩前へ進むと自分の黒茶色の羽を広げた。


「わからないね。羽があるからか? 飛べるからか?」

「これを見てもわからない!? お前も知っているはずだ。この国は蒼虎が守護する獣人の国。多くの獣人がいる中、王族の虎の獣人の次に我々、鳥族が偉いのだ!」

「なぜ?」

「グッ。それでも人族か!? お前達、人族の国は蒼鳥が守護する。鳥だぞ! 我々は蒼虎の獣人であり、蒼鳥の翼を持つ! 素晴らしいではないか! 見よ、この大きい翼を!!」


 自分の羽を、うっとりと見つめる長。

 それが何だ。たったそれだけで誇り高きだと!? そんなことで偉そうにしているのかよ! 


「笑わせるな! 勝手に自分達が言っているだけじゃねーか! 誇り高きじゃなくて、お前らはがんたれだ!!」

「そうよ、がんたれ!! 最低のね!!」

「がんたれ?」

「ああ、オレの住んでいたところの言葉だよ。がんたれは、素行が悪い、役立たずって意味だ!!」

「何だと!?」

「我等を愚弄する気か!?」


 オレの言葉にカロン以外が羽を広げる。怒りが手に取るようにわかるが、こっちだって負けるわけにはいかない。


「どっちが愚弄しているんだよ!? 見てみろよ! 幼い子供二人を泣かせやがって! スールの体に痣をつけているのもお前らだろうがっ。誇り高き人がそんなことやるか!」

「たかが子供。大人の、それも長の言うことを聞けなければ、仕方あるまい」 

「長? 聞いてあきれるね。お前のしていることは、ただの弱い者いじめだ! カロンの親父!! あんたは息子を見て何とも思わないのか?」

「!?」


 村長親子には、さっきから怒り心頭だが、カロンの父親にも腹が立って仕方がない。

 オレから名指しされるとは思っていなかったのか少し驚き、広げていた羽を少しだけ閉じた。


「自分の息子が、頬が腫れるまで叩かれたんだぞ! それを黙って見ているなんてありえねーっっ!! なぜ怒らない? あんたは息子、家族よりも村のほうが大事なのか!? それも、力を誇示するだけの威張りくさったそこの(じじい)がおさめる村。どこにそんな価値がある!? そんな村、いずれ廃れるぞ! ……なあ、カロンの親父。家族を大切に思うなら、あんたの息子がどれだけ傷ついているのか考えてみろよ。そして、あんたの息子がとても素晴らしい子だということに気づけよ!」

「俺の……俺の息子が素晴らしい?」

「ああ。子供なのにスールを助け、守ろうとした。スールだってそうだ。こんなか細い体で足が悪いのに、村のためにと頑張っていた。二人とも心が優しくてそして、強い。誇れるほど、素晴らしいじゃねーか! こんな大きい翼だけの爺達なんかより、よっぽど誇り高き人だよ!!」

「誇り高き……カロンが……」


 カロンの父親が、自分の息子の肩にそっと手を置いた 。

 「父しゃん?」腫れた顔で父親の顔を見てくるカロンに、カロンの親父は翼を完全にたたみ、泣きそうな顔で息子を見ていた。


「言わせておけば……、たかが人族ごときがっっ!! この儂を羽が大きいだけだと!?」


 大きい翼をはためかせ、こっちを睨んでくる。

 こうはなりたくなかったが、あまりにもムカついたので、罵倒してやった。罵倒じゃないな、正論だ。


「女の顔は好みだが人族じゃな〜。ね、父様。こいつら捕まえて闇に売るのはどう? 金になるよ! スールはどうする?」

「そうだな。スールはまだ使えるから村に残すが、仕置きだな。気が済むまでお前がムチで叩くといい。しかし、低俗の人族はここにはいらん。売れば女の方は色町に連れて行かれるのでなかろうか。顔も良いし小さいから、嗜虐的な獣人に好まれそうだな。そして冴えない男の方は、獣人の憂さ晴らしに殴られ、手足を折られ、使えるまでこき使われてボロ布のように捨てられるだろう。こりゃいいわ! 獣人でもないそのネコは、どことでも捨ておけ」

「なっ!?」

「長、それはあまりにも……。奴隷でもないし、ましてや他の種族。それに闇など怪しい者と取引するのは、国で禁止されております!」


 カロンの父親が止めようとするが、爺は聞く耳を持たない。


「うるさいっ!! お前達、人族を捕まえろ!! 男は別にいいが女の方は商品価値が下がるから、傷つけずにやれ」


 爺がニヤリと笑った。





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