ご飯を作ろう
「ところでお兄ちゃん、何作るの? 買い物袋の中に食べられるやつあるんだよね?」
「うーん、それなんだよな……。肉とか魚とかそういった食材はない」
「えー!? あんなに入っているのに食べれそうなやつないの!?」
「ないな!」
楓が買い物袋の中を覗く。
「うわぁ~ほんとだ。ほとんど調味料じゃん」
「ああ、今回の得々セールは調味料が中心だったからな。食材は家にあったから買わなくていいと思ったんだよ」
「買っといてもよかったのに〜」
「仕方ないだろ、まさか異世界に来るなんて思いもしないし。スールの持っている食材を見てみよう」
楓と探し見つけたのは、どんぐりに似た木の実10個と干からびたキノコ、何かわからない木の根っこだけだった。
「細いとおもっていたが、こんなものしか食べてなかったのか。そりゃ太らないわ」
「いっちゃあなんだけど、これは食べたくない。お腹にたまるもんがいい」
「だよな。他にはなんかないか。ん? これは」
袋に入っていた物を手のひらの上に出してみる。少し茶色く、粒は粗い。ぺろっと舐めてみるとしょっぱかった。
「おー、これ塩だな。塩は買ってなかったから使わせてもらおう。おおっ、そうだ! あれを貰ったんだっけ」
買い物袋の中から取り出したもの、それは無洗米だ。
「抽選で当ててよかった! この米を炊いておにぎりにしよう。あとは味噌汁を作ればいいか。そうと決まればまずは水だな」
裏口から出ると楓と別れる。
オレが水を持ち帰ってくる間、楓には落ちている小枝を拾っててくれと頼んだ。
木々の間を抜け、暫く歩くと川へと出た。
魚が泳ぎ、水は綺麗で澄んでいる。でも、女神の泉を見たあとでは、どんなに綺麗でも普通に見えてしまう。不思議だな。
持ってきた桶に水を入れ、帰り道、オレも小枝を拾えるだけ拾ってきて、途中で会った楓とスールの家へと戻ってきた。
「無洗米だから、洗わなくていいんだもんな。とりあえず3合炊いてみるか」
楓には、拾ってきた小枝を出来るだけ乾いたやつを選んでもらい、オレは鍋にいざ米を入れようとした。
「あー、計量カップがないや。ん? これで代用すればいいか」
スールがコップに使っているのか、木で出来た入れ物が計量カップぐらいの大きさだった。
それを使い大きめの鍋に米と水を入れる。水を吸収させるために、しばらく置くことにした。
米に芯が残らなきゃ美味しく食べられる。失敗したら、その時はその時だ。
それを待っている間、火をかける準備に取りかかる。
かまどに選んでもらった小枝を入れ、出来上がったところで大事なことに気づいた。
「火、どうやってつけるんだ?」
スールはここで火を使うことをしていないのか、暫く使った形跡がない。
……火打ち石とか、そういったものでつけるのだろうか。
そう思ったオレは、かまどの周りなど探してみるがどこにもなかった。
「どうすっかなぁ……火。テレビなどで観たような、木を擦り合わせて火おこしとか? ……やったことないけどそれしかないか。すぐに火がつけばいいけど」
「火? 火…………あ! あるよ、お兄ちゃん。私持ってる!」
「え? 楓が火を持っている?」
「はい、これ」
楓が制服のスカートのポケットから小さい箱を取りだし、オレにくれた。
「色んなことがあって忘れてた。お兄ちゃん、お誕生日おめでとう。これ、誕プレ。開けてみて」
「オレも昨日、自分の誕生日だったことすっかり忘れてたわ」
リボンをほどき、箱の蓋を開けた。
「ライターだ。それもハチワレ!」
6㎝ほどのライター。そこには白黒のハチワレ猫が座って首を傾げているキャラクターが描かれていた。猫の部分が盛り上がっている。
「可愛いな、これ」
「でしょ? お兄ちゃん、ハチワレ猫のグッズ集めてるじゃん。煙草は吸わないけどライターもいいかなって思ったんだ」
「うん、気に入った。ありがとな。それにこのライター、さっそく使える」
貰ったライターで無事、火をつけることに成功した。
米を炊く前に先に味噌汁を作ることにする。
買い物袋から、味噌と煮干しの粉末、乾燥ワカメを取り出す。家の味噌汁は、いりこだしなんだよ。
そのまま食べられる無塩の片口鰯の煮干しも買っていたが、粉末のほうが時間はかからないため、今回はやめておく。
片口鰯の煮干しは、ノン子さんも食べるからな。
味噌汁はすぐ出来た。
「いい匂いだね」
「だな」
手伝おうとする楓だったが、大丈夫だと強く言い、横で見てるだけにさせた。
さて、次はご飯だ。
吸った水もあるので、米に水を足しながら調整し蓋をして火にかける。
「大丈夫? 上手く出来るの?」
「ん~、キャンプの時、飯ごうで炊いたことがあるし、なんとかなるだろ」
「お焦げ、おいしいよね」
「はじめチョロチョロなかパッパ赤子泣いても蓋とるなだったな」
「なにそれ? 呪文みたい」
「ばあちゃんから教えてもらったんだよ。昔の人がかまどで飯を炊くときの言葉らしい。用は火加減が大事だってことだ」
「へえー」
火加減に注意しながら、かまど近くでじっと見る。
楓が話さなくなり、静かになったなと思い振り向くと、ノン子さんの側で横になって寝ていた。疲れていると言ってたもんな。
よし! そのまま出来上がるまで寝ていてくれ。
かまどと楓を交互に見ながら、炊き上がるの待った。
無事炊き上がり、しばらく蒸らしといた後、しゃもじがないので木のスプーンでかきまぜてみる。おこげも少しできていて、食べてみるとちょっと固かったが悪くなかった。
熱々は握れないので少し冷まさせている間、塩や水、皿など準備する。中の具は、鰹節を買っていたので、おかかだ。本当はばあちゃんの漬けた梅干しがあれば言うことなしだが、残念だがここにはない。
さあ、おにぎりを握っていくぞ。
おにぎりは握るだけと思うだろ? いやいや、これが奥深い。持つときはしっかりと、噛んだ瞬間、口の中でほろりと崩れるのが理想だ。おにぎりを握る時の微妙な力加減、そして塩の量。
ばあちゃんのおにぎりは最高だったからな。まだまだそこまでには行き着いていないが、だいぶ近づいてきたとは思う。
楓には悪いが、握ってほしくない。1度、食べたことのある楓のおにぎり……。
具が爆発したようにはみ出て、固いおにぎりは不味かった。なぜ、あんなに固くなる? そしてしょっぱすぎ。一口食べて、水をがぶ飲みしたからな。
炊いたご飯を全部おにぎりにした後、楓が起きてきた。
よかった~、ひと安心だ。
スールには美味しく食べてもらいたい。




