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234話【接触】


「どちら様?」


紬は口をへの字にしたまま、一歩踏み出した状態で髪を揺らす。

いや、風が髪を揺らし頬に纏わりつく髪を紬は爪で摘み、払い退ける。

短い真っ黒だった髪の毛は、少しずつ紫色を帯びていく。

リセ警はその変化に顔を引き攣らせ、後退りを数本した後、身を翻し車にタタッと飛び乗りそのまま、猛スピードで引き返していった。


砂埃が舞い上がり、薄い黄色混じりの茶色い小さな竜巻が起こり黒いあの車が右、左、直進、どちらへ進んでいったのか分からなかった。

キィィ、という急ブレーキ音が耳障りなくらい鳴り、帰りの運転(ドライブ)に乗ってなくて良かったと思う。

男は顔を顰めながら耳を手で塞ぎ、ため息をつく。


「質問に答えなさい」


ぬ、と紬を男は睨み、薄汚れた白衣を直し目の下に出来たくまを擦り、伸びた髪の毛を撫でるとんー、と声を出し何かを考えた後小さく呟く。

聞こえない、と低く声を出しチッ、と舌打ちすると男はヒィィィ、と声には出さず口の形だけを作り震えながら折れた名刺をポケットから取り出し、頭を人差し指で掻く。

名刺の文字は汚れ、読みにくい………。


《占い師開発魔術委員会会長………人》


「肝心な名前の部分が、シミで見えないじゃない。最後の一文字しか見えないわ」


名刺には爪くらいの、茶色い紅茶のようなシミがドンっとついている。

嫌がらせか?


「人類には言葉という情報の伝達手段があるだろう?

それともお前は人が使う、言葉が使えず、脊椎動物亜門哺乳綱コウモリ目に属する動物の総称であるコウモリのように超音波を用いた反響定位、エコーロケーションを行っているのか?

すまないが、私は言葉しか使うことができない……」


男は白い白衣のポケットから招き猫のキーホルダーをつけた携帯電話を取り出し、キーボードを打つ。

ツツツ、と爪で液晶を叩く音がしてクルリ、と見せた画面はスマホのメモ機能が開かれ活字が並べられる。

黒い活字……あぁ、苦手だ。


《占い師のついての研究をしている。名前は忘れてしまった。

名刺が頼りだったが、汚してしまった》


「はぁ?忘れたぁ?んで、言葉は」


また、カタカタと文字が打たれ。


《声が出ない。実験中、事故を起こしてしまった。

その時発生した謎のガスで声を失った》


何のガスだ?そんなガス、聴いたことがない。

新種の、ガス?

そして、何の実験だったんだ?


「何の実験だ?」


《人工的に占い師を作る・占い師を倒す能力を持った占い師狩りを生み出す実験。

理論上では成功するはずだった。だが、失敗した》


こんなこと、ペラペラ話していいのだろうか。

だが、とんでもないことを知ってしまったことは確かだ。

占い師はこれからも、増え続けるってわけか。それが成功したらだが。

理論上っても紙の上での実験だ。

考える事くらい小学生だって可能だ。


「その実験は今でも続けているのか?」


ん?、と驚いた様子を見せるが、うん、と首を縦に振った。



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