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233話【姉貴】


「信じて、くれないの?」


「いや、そう言うわけじゃ……」


霰は服を直しながら、眉を下げ悲しそうな表情をする。

リセ警が、傷だけ付けて殺さず放って置くわけがない………。

そんな事したら、……いや、とにかくまぁ、怪しい!


「あ、でも!この話はまた、今度にしようよ」


ストンッと床に霰は降りて、スニーカーに足を入れる。

スニーカーは長年履かれていたのか、底は擦り減り紐も汚れてしまっている。

それに対してローブの方は異様に新しく、違和感を覚える。

霰の長い影がベットに移りユラユラ、揺れる。


「もうすぐ、面白いことが起きるよ。だからね、お兄ちゃんも一緒に行こうよ」


「……」


仮面みたいにピクリとも動かない笑顔。

無理矢理三日月型にされた乾いた唇には、血が滲み口の端は切れていた。

目も唇とは逆の三日月型に変形し、仮面そのもの。

嫌な、予感がする。


「大丈夫だよ、怖がらなくてもいいよ。

こんな家、はやく出ちゃおうよ」


「こんな、家?」


「ここは紬の家。どうせ、紬の奴暫く家開けてるんだ。

その間使ったって、構わないだろ?

手入れに、修理……いろいろ、しないと家も傷む。

まぁ、そんな話はどうでもいい。

早く、外へ行こう?」


手首を霰が掴み、ゾワッと背筋に寒気が走る。

な、んなんだ。

まるで氷水に手を入れたような、少し痛みもある感覚。

霰の、仕業なのか?

立ち上がり、見下ろしてくる霰の顔は引き攣り、獲物を狙うような目をしている。

ハッ、として再び覗き込むと、霰も目を見開きすぐさま、笑顔に戻った。

怪しい……どう考えても、怪しい。


「……お前さ、本当に檜垣霰?」


へ?、と反応する霰の真っ赤な口の中にキラリと光る白い牙が見える。

牙……??

占い師に牙があるなんて、聞いてない。

ハッと霰は口を閉じて、再び笑顔になり口を開いたときには牙は見えなくなっていた。


雪はキッ、と霰を睨み背中に当たっていた黒を基調とし、赤いバラに刺繍が入った羽毛枕を掴み振り上げ、霰に向かって投げつける。

ドッ、と音が鳴り霰の顔面に枕はぶつかったが、床にすぐに叩きつけられる。


「……酷いなぁ。投げつけるなんて。霰、だけど?」


枕からは白い羽が飛び出し、端の方に引っ掻かれたような跡が付いている。

どこに武器を隠し持っていたんだ?

爪では引き裂けないような布が切られ、羽が出ている。


「お前さ、誰なんだよ。霰じゃないなら、誰なんだよ」


霰は笑顔のまま、「寝てなきゃ、ダメだよ」というセリフを繰り返す。

それしか話せないかのように、延々と同じ言葉を繰り返す。

雪はベットから降り、布団を直し裸足のまま壁伝いにドアノブを捻る。

ビュー、と吹雪が開けられた窓から入り込み、カーテンが霰を包み込む。


「……霰、だよ。私は、霰_________」


白いレースのカーテンの向こうに人影が映るが、もう、すでに霰ではないことが分かる。

身長が伸び、繰り返されるセリフのまま声だけが変化していく。

カーテンの下から覗く足は筋肉が付いて小麦色に焼けた脚に変わっていまっていた。

そのままの服装の為、短いローブも更に短くなり、涎掛けのようになってしまう。


「霰だよ。私は霰だよ………」


カーテンは窓から出て行く風に押され、窓から飛び出し隠していた怪物の姿を露わにする。

霰の面影はなく、短く切られた黒い髪に、健康的な小麦色に焼け、丸い瞳は鋭くなり小さな口も大きく広がる。

服も下に着込んでいたのか、白いストライプのシャツに黒いサスペンダーがついた黒いショートパンツを履いている。

身長は……170……180あるだろうか。高い。


「え、誰」


「あーあ。バレちゃったかぁ。変装上手かったでしょ?」


黒いベレー帽を目深に被り、にっ、と笑いかけてくる。

巨乳………じゃなくて、こいつもしかして、占い師狩りなのか?

勿論変装時と変わらずスタイル抜群で長い足は………長いです。

背中にはライフルを背負い、本当危なそうな人!


「ねぇ……目的は……なんで、僕だけ連れて逃げたんだよ……」


「まぁ、その話は後でしてあげるから!お姉様と呼んでね」


いやいや……。




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