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235話【恐怖】

「お姉様って……」


文句ある?、と睨まれ泣きたい気持ちを無理矢理抑えながら千切れそうなくらい首を横に振る。

フローリングの床に裸足のまま、立つ。

姉様(アイツ)とはベット一つ挟んだ距離しかない。

冷たい冷気が白いワイシャツの下から流れ込んできて、ブルリと震える。


「何?やっぱり、文句あるんでしょう。でも、文句なんて聞こえなーい。

あ、連れてきた理由、話してなかったっけ?」


もう、ライフル見ちゃったら答えなんて分かってるに決まってるじゃないか。

背中に当たるクローゼットの扉を叩くようにして、扉を開けようとするが鍵がかかっているのか開かない。

視線は彼奴に向けたまま、爪を立て鍵穴を探すが見当たらない……?


「えっとぉ……もちろん、占い師の首を持ち帰る事なんだけど。

でも、殺すのも惜しいのよねー」


チラリ、とクローゼットを見ると大量のお札が扉に隙間なく貼られており、趣味が悪い……じゃなくて、どうやら魔術で閉じられている模様。

結構強い魔術がかけられているようで、簡単な解除魔術では開かない………。


「開け、よっ」


ドスッと音がしたかと思うと、目の前に“お姉様”が足を組んで座り、ニタニタと笑っている。

しまっ……た。

距離を取ったのに、こんな短時間で移動されるなら……意味が無い。

そのまま、力なく床に座り込み見上げるようにしてお姉様を見る。

短い髪を揺らして見下げてくる。


「えっと、どうされたい?一応、意見も聞きたいしね。

其の一、今すぐ殺されたい。つまり、頭をくれるんですね〜。

其の二、下僕になります。其の三……は無い」


無いのかよ!!え、でも下僕なんて真っ平御免だし。

誰かの召使いなんて嫌に決まってる。

死ぬなんてもっと、ごめんだ。

どうするの♪、と鼻歌交じりに頭を揺らしながら聞いてくる。

どうすりゃ……………。

足を動かし、後退したいが残念な事に自分が選んだ道、クローゼットだ。


「はぁい!時間切れぇ!待たせてんじゃねぇよ」


「ころ、されるのか?」


ん?、とお姉様は顔を顰め、雪はゴクリ、と唾を飲む。

手にブワァッと汗が滲み出てきてゾォー、と顔が青ざめて行く。


「いや、殺さないって。ここではね」


「ここでは………??」


雪は眉を下げて、ボサボサになったブラウンの髪を直しながら服のボタンをキッチリ止めてクローゼットからジーンズを取り出し、足を入れる。

ヒヤッ、と声を出して震えながらキッチリ服を着ると鏡の前に立ち大きく溜息をつく。

久し振りに制服以外の服を着た気がする。


「ここでは、ってことは何処で殺すんだ?人目につかない場所を選ぶだろうし、少々遠くてもどうにかなるよな?」


「海の近くがいい?川の近くがいい?山がいい?」


お姉様はスマートフォンの地図を見ながら、ニタニタ笑う。

チラリ、と画面を覗けば上野、京成上野、御徒町、と見える。

東京で殺すつもりですか………?


「秋葉原で殺されたい?講武稲荷神社がいいですか??

あ、ちょっと遠いですが花房神社もありますよ。

都営大江戸線………」


「ちょっ……地図上と地上では距離とかもバラバラだから適当にするな!

んで、殺されるつもりは無い!」


ハ?とお姉様は笑って背中に背負っていたライフルを雪に向けてくる。

銃口が目の前にある。

黒い穴が、目の前で闇を作り出し頭が痛くなってくる。

あ……あ……。


「……なんなの?なんで、そんな表情しかしないの。

面白くないじゃない」


このセリフ、聞いた事がある。

デジャブ、か。

ハハ、と笑って口を開く。


「恐怖に歪む、だっけ?」


「あ、知ってたの。でも、今の雪は恐怖に歪まない。

自信に満ち溢れたような嬉しくない、面白くない表情ね」


ハァ、と悲しそうな表情を見せて睨みつけてくる。

雪は銃を掴み、目の前から逸らすと立ち上がりお姉様の隣に座る。

ギシッ、とベットが鳴ってお姉様はハッ、と隣を見る。


「悪かったな……面白くなくて」


気がつけば、目の前から雪は消えて隣で先程まで自分が所持していたライフルを担いでいる。

な、なんで!?

その銃口が私に向いている。そんな、馬鹿な。


「チェックメイト」




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