第77話 クトーニアン穏健派
「曲者ですか。成敗してさしあげます!」
相手がクトーニアンと知って、ドムさんがいち早く反応する。
「気をお沈めください。彼女は、悪いクトーニアンではありません。むしろ、我々と同じドリアード族に近いですね」
ピオナが、少女をかばう。
「どきなさい、ドリアードのお嬢さん。クトーニアンは切り捨てねばなりません」
「待ってください。クトーニアンでも、ちょっとこの人は違う気がします。話し合ってもいいですか?」
ボクは、殺気立っているドムさんに相談をした。
「我々としては、クトーニアン死すべしという考えなのですが、仕方ありませんね。コーキさんの顔に免じて、引き下がりましょう」
ドムさんが、剣をしまう。
「ありがとうございます。ドムさん」
「ただし、少しでも変なマネをしたら処します。よろしいですね?」
「構わないですよ。パロン、クコ。ちょっといい?」
パロンとクコが、「?」と首をかしげる。
「悪いんだけど、二人もついてきてくれる?」
ボクは、監視役にパロンを選んだ。
「私もついていていいか? 仮にも王都の人間だ。クトーニアンの思考は把握しておきたいのだ」
「アタシが護衛してやっから、任せてくれよ」
ヴェリシモさんとナップルが、話を聞いてくれるという。これは、心強い。
「ただ、ダリエンツォ王国も、クトーニアンに攻撃を受けた側だ。あまり歓迎はしていないことは、把握しておいてくれ」
「わかりました。じゃあみんな、こっちに」
ボクは、自分の小屋へみんなを入れた。
「ウ、ウチはハィラ。クク、クトーニアンの穏健派代表です」
アワアワしながら、ハィラさんは頭を下げる。変わった発音だね。クトーニアン独特の言語みたいだ。
「穏健派とはいえ、お一人ではるばるこんなところにまで」
「そ、外に出られたのも、み、みなさんのおかげなのですっ」
「どういうこと?」
「過激派のト、トップを、や、やっつけてくれたので」
ああ。あのミイラか。
「あれが、すべての元凶のようなものでして」
リーダー格が消滅したので、過激派は求心力を失って弱体化したそうだ。
「あのモンスターって、ミイラ状態でもヤバかったの?」
「は、はい。ウチらはヤツの思念波に、ずっと怯えていました」
例のミイラは、死んでもなお力を増していて、思念波を送ってモンスターを凶暴化させていたらしい。海や陸を汚して、自分たちの勢力圏として支配しようとしていた。
魔物たちも、ミイラを復活させようと動いていたようだ。
が、マグマに阻まれて動けないでいたという。
「こちらにピオナという味方がいて、助かった」
彼女がいなければ、ミイラの正確な位置を把握できなかっただろう。
「お役に立ててよかったです」
ピオナが、ボクの肩の上で跳ねる。
ボクとしても、クトーニアンとコトを起こすのは大変だと思っていた。全面戦争にでもなったら、我が村にも犠牲者が出るかもしれないから。
「それで、我が村に?」
「はい。和平を申し出ようと」
クトーニアン穏健派であるハィラさんは、和平交渉に来たのだった。
「も、もう、クトーニアンに争う意志は、あ、ありません。アプレンテスの浄化にも、きょ、協力する所存でして」
「コーキ、受けるの?」
心配げに、パロンがボクに声をかけてくる。
「うん。ボクはそのつもり。だけど、みんなの意見も聞きたい」
この村は、ボク一人のモノじゃないからね。
「ワタシは別にいいかな。クトーニアンはともかく、あの子は信用できるよ。討伐されちゃうリスクがあるのに、一人できたっていう度胸もある」
「……ワシは、なんとも言えぬ。信用はしてやりたいが、彼女のバックに良からぬものがおる可能性も捨てきれん。森に攻め込まれては、我々では止められんじゃろうし」
全面肯定なパロンとは対照的に、クコは慎重だ。
「ナップルと、ヴェリシモさんは?」
ボクが聞くと、「アタイはいいかな?」とナップルは賛成してくれた。
「私は考えたい。民を危険に晒すわけにはいかないからな」
やはり、立場的にヴェリシモさんの賛同は得づらいのかも。
「そうですね。今のところ、意見は割れています。とにかく、じっくり話し合いましょう」
「ありがとうございます」
みんなのところに戻って事情を話すと、ドムさんが難しい顔をする。
「和平ですか。月日とは面白いもんですね。そういう時代が来るとは。しかし、ただでさえ頭の硬い天使共をやり込むのは、骨が折れそうですね」
セラフ王の説得は、少々困難を極めるだろうとのこと。「クトーニアン絶対殺す天使」と
して、恐れられているそうだからね。
「ドムさん。どうすれば、和平に望めると思います?」
「向こうの世界樹を倒せば」
クトーニアンの世界樹は、邪神の象徴として崇められているという。
「ねえハィラさん。世界樹って、壊して大丈夫な感じ?」
闇の世界樹について、ハィラさんに尋ねてみた。
「はい。我々穏健派は、そちらから魔力をもらっていないので」
ハィラさんによると、世界樹をやっつけるのはOKらしい。
「お、穏健派にも、世界樹があります」
よかった。大使が死んじゃったら、和平ってレベルじゃないからね。
「穏健派にも世界樹が枝葉として存在しまして、その木を糧としています」
「クトーニアンの世界樹って、どんな感じなの?」
「サンゴです。触手がワキワキってうねっていて、かわいいのです」
「ほ、ほう」
あんまり想像したくないね。穏健派は助けたいけど、センスなどは理解できそうにないみたい。
「ですが、クトーニアン側の世界樹は、我々穏健派の世界樹をも支配しようとしてきています。いつ乗っ取られてもおかしくありません。そうなれば、我々の思考もクトーニアンに染まってしまいます」
「依存度が高そうだね?」
「はい。魔力は世界樹に任せっきりでして」
ひとまず、相手側と話し合うことで決着が着いた。
その間に、人間側もそれぞれ地元と話し合うという。




