第70話 溶岩樹型風穴
ピオナとナップルの活躍により、さらに別の入口を発見した。
しかし、今度は寒さにやられることに。
ボク以外のメンバーが、寒さに耐えられない。
ボクたちはコートを着て、ダンジョンの中へ。
まさか溶岩ダンジョンの攻略に、冬の格好で挑むことになるとは。
「コーキ。キミさ、ウッドゴーレムなんだから。寒さは感じないのでは?」
「雰囲気だよ。こういうのは、雰囲気が大事なんだ」
みんなが寒がっていると、ボクも寒気が起きる。
お腹をすかせた表情をみんながしていると、ボクもお腹が鳴るのと同じだ。
「共感力が高すぎないかい、コーキは?」
「そうかもね……むっ!」
寒さに強いボクでも、関節が凍った。パロンに直してもらうハメになるとはねぇ。
「まさか、コーキでも突破できないなんて」
とにかく、油断は禁物だ。どんな環境にも、適応できないとね。
どうも、この岩山はかつて火山だったらしい。
火山が冷え固まって、このような岩だらけの山へと発展したようだ。
内部は天然洞窟であり、整備されている感じはない。
「このタイプの風穴は、【溶岩樹型】の風穴といいます」
ボクの肩に乗っているピオナが、説明をしてくれた。
飲み込まれた樹木が溶岩の中で集まって、空洞化した場所があるという。富士山にある、鳴沢氷穴が有名かな。とにかく、洞窟化した場所が存在していたのである。
「つまり、ここには昔、木があったってこと?」
パロンの息が白い。
「そのようですね」
噴火で樹木がなくなったために、ハゲ山になっちゃったわけか。
狭い空気穴から終始風が抜けていくため、内部は摂氏三度しかない。
また氷穴とは、空気が風穴の中で膨らんで冷えてできた、天然冷蔵庫だ。
茨の棘を足に絡みつかせて、アイゼン代わりに。ザックザックと、氷の張った洞窟の床を踏みしめる。
だんだんと、冷気が強くなってきた。
「ナップル、無理しないで」
「これくらい、どうってことねえよ。モンクは真冬だろうが、素っ裸で滝行するんだからよ。魔力で体温調整をするってもんさ」
ナップルは体を鍛えている上に、鉱山でも仕事をしているため、多少の暑い寒いはガマンできるらしい。
それでも、この寒さは堪えるだろう。身体が小刻みに、震えている。
「魔物の瘴気による、冷気かもしれん。あまり深追いはするなよ」
「ヴェリシモの姉御だって、無茶すんなって」
そういえば、ナップルって、年下のヴェリシモさんを「姉御」呼びしているんだよなあ。
「どうしてナップルは、ヴェリシモさんを姫じゃなくて姉御って呼んでるの?」
寒さをごまかすために、話題を振ってみた。
「姉御は、強いんだよ。王家直伝の戦闘術を、学んでいるからな。アタシは姉御に勝ったことはないよ」
意外である。
「ナップルって、ケンカ十段のような気がしていたんだけど」
「そりゃあ、若い頃はな。けど大の大人が、当時六歳のちびっこ姫に、こてんぱんにされてみ? 世界が変わるぜ」
それ以降、ヤンチャだったナップルもおとなしくなったという。
「しかし、寒いねー」
「熱を維持するためのコメ酒も、尽きてしまいそうじゃ」
クコが、ひょうたんをひっくり返す。
「まだまだ作れるから、どうぞ」
「かたじけない」
おかわりのひょうたんを、クコに渡す。
「みんなもさ、一旦帰らないか? 豚汁でも作ろう」
「豚汁! いや。でも、もうちょっとっぽいから、がんばってみる」
ナップルは、やる気を出している。
「見てコーキ。氷の柱が、ズラーっと並んでいるよ」
「地下水がここで冷やされて、凍ったんだ」
天井から溢れ出す地下水が、地面に滴って凍ったのだろう。
「壁は、壊して回らないほうがいいかな?」
溶岩が溢れてきたら、大変だ。
「そうだね。気をつけていこう。ピオナ、モンスターの気配は?」
「氷穴を開けたわけですから、長年の眠りから覚めることでしょう」
ピオナに言われて、パロンは身構える。
「……来ました!」
先へ進むと、ピオナに肩を掴まれた。
ゴースト系モンスターが、ワラワラと姿を表す。
「この街の先住民でしょうか? すごい数です」
「ゾンビやスケルトン系は、出てこないね?」
「すべて、火葬されてしまったのでしょう」
なんか、納得できたよ。
「コーキの【セイントファイア】とまではいかないが、これでもくらえ!」
大剣に火炎のエンチャントを施して、ヴェリシモさんが剣を振るう。
「この数はなんだ? 一体一体は弱いが、倒しても次々と!」
うんざりしながら、ヴェリシモさんはゴーストを処理していった。
卒塔婆が欲しくなるくらいの数だ。
「作っちゃおう。バチが当たりそうだけど」
即席で卒塔婆を開発して、ゴーストに喝を入れていく。座禅を見るお坊さんのように。
「喝! 喝!」
なんだかダルマトーテムになった気分だよ! 彼らも鳴き声が「喝!」だからね。
どうにか、敵の数を減らすことができた。
「でも、邪教系のゴーストなんだよね? 地下に本拠地でもあるのかな?」
「おそらくは……コーキ様、こちらへ」
ピオナが、急に反応する。
「見つけたぞーっ! コーキ、こっちこっち!」
ピオナとナップルに引っ張られて、奥へ。
ゴーストをかいくぐった先に、地下遺跡の入り口らしき場所を発見した。
「遺跡が、沈んでいたのか」




