第71話 地下遺跡のバジリスク
禍々しい扉を抜けて、遺跡の中へ。
「ねえコーキ、こっちは、マグマも冷気も影響受けていないね?」
「ホントだねパロン。ちゃんとマントルが、固まってるよ」
マグマは、マントルが溶けた状態のことをいう。こちらのマントルは安定していた。しかし、ヘタに攻撃
しないほうがいいだろう。うかつに触れてマグマにダイブに、なりかねない。
「高度な文明があったようだが、滅びたようだな」
「クレキシュ峡谷からこちらまで、ハイレベルな文化があったんだよ」
「あんな遠い場所にまでだと?」
ヴェリシモさんとパロンが、意見を交わす。
「たしかに土の材質が似ておる。本当に峡谷までつながっておるわい」
地層を確認しながら、クコも同じ説にたどり着いたようだ。
「手を伸ばしすぎてしまい、神の怒りを買ったわけか」
「それが今になって、染み出してきたと?」
「うむ」
泥に流されて、そのまま凍りついたかマグマに溶かされたか。あるいは両方だろう。
「うわ、すごいねこれは」
祭壇らしき場所についた。壁に、赤黒い文字がびっしりと並んでいる。中央の紋章も赤かった。
「内容が、さっぱりだ。この世界の言語じゃないよ」
何語かは、パロンですら解読できない。
「コーキのいた世界の文字とも、違う?」
「うん。読めないよ」
ラテン語に似ているけど、文字の意味もおそらく違うだろう。何が起きるかわからない以上、変に読み上げるわけにもいかない。
「ヴェリシモさん、ダリエンツォの王族に伝わる勇者伝説とかは、ないんですか?」
「そうだな……ダリエンツォ王国は、魔王討伐で栄えた国だ。他国との戦争で領地を広げた国じゃ、ないからな。氷に覆われた領土だから、他国との交流もさして頻繁ではないのだ」
ダリエンツォの発展は、ここかららしい。
「では、ダリエンツォが邪教と戦った歴史もないと?」
「そうなるな」
この岩山も含めて、アプレンテス荒野はかなり広い。それなりの規模を持つ集落があっても、おかしくない。それが軒並み、消滅している。
となると……。
「悪いやつらだった可能性が、非常に高いというわけですね?」
「自滅するくらいだからな。内乱があったか、自然の力に負けたか」
「アプレンテスには、先住民もいないみたいですし」
「良識者は、天空城を作って地上を見捨てたというウワサまである」
まるでおとぎ話だ。ノアの箱舟じゃないんだから。
「とはいえ、毒持ちのイソギンチャクなど、凶悪な生物がこの地下に生息しているのは確かだ。駆除はせねば」
みんなで話し合っていると、ピオナの意識が入り込んだゴーレムが、ひとりでに動き出す。遺跡の石板にかいてある文字を読み上げているようだ。
「……これは、はるか古代のクトーニアン文字です」
「クトーニアン?」
「はるか昔に、この地を荒らしていた宗教が崇めていた神です。我々ドリアード族は、はるか昔から彼らと戦ってきたのです」
そのクトーニアンの力を手に入れて世界を支配しようとしていたのが、魔王だったという。
だが、魔王も勇者ダリエンツォによって倒された。
「この遺跡は、力を失った邪神が眠っている墓地のようですね」
「じゃあ、ガーディアン的な存在もいるかも?」
「はい……来ましたね!」
ピオナのゴーレムの目が、赤い警戒色に光る。
言っているそばから、魔物が素早い動きで襲ってきた。濃い紫の大型トカゲで、見た目が毒々しい。
「バジリスク! それにしても巨大な!」
『わが神殿を荒らす不届き者よ。蠱毒に飲まれて朽ちよ!』
天井から壁から、物々しい声が。
「なんのトカゲ共が! くらえ【爆炎拳】!」
全身に炎をまとわせて、ナップルがバジリスクに打撃を繰り出した。
「おりゃおりゃおりゃー」
左にいるバジリスクの目を蹴り上げて倒し、右にいるバジリスクのアゴにヒジを叩き込む。
バジリスクは倒れた際に、毒の体液を撒き散らす。
しかしナップルを覆う炎は、毒液も通さない。
他のメンバーも、武器に炎を張り巡らせて毒に対抗していた。
「やべえぜコーキ。数が多い!」
ナップルが攻撃するが、倒してもドンドンと集まってくる。無限湧きというやつかな?
「ぜえぜえ、パワー切れも激しいな」
スプルスさんの影に隠れて、ナップルがじっとりと汗をにじませる。魔力が切れたみたい。
「これを食べて。ナップル!」
ブドウの房を掴み、ナップルに投げつけた。でも慌てていたから、数粒がバジリスクの足元へ。
不思議そうな顔をしながら、バジリスクはブドウを食べちゃった。
「いけない、回復されてしまうんじゃ」
ボクは注意を払ったが、バジリスクは満足気にゲップをする。
あれ、バジリスクの毒々しいトサカが、普通のニワトリみたいになっちゃった。シッポのヘビも、うなぎみたいな感じに。身体もすっかり、ただの大きなニワトリになってるぞ。
まさか、ボクの体から出てくる果物って、相手の毒性を消す効果があるのか?
「コーキ、いい作戦を思いついた!」
パロンに耳打ちされて、作戦を立てた。
『なにをやっても、同じこと! この地に災いをもたらす者どもよ。バジリスクの毒に呪われ……よぉ!?』
「エサどうぞ~」
ツタを身体からはやして、ボクは果物をつくりだす。




