第64話 路面鉄道作り
ティンバーさんが、王都に到着した。
さすが、飛空艇だと早いな。一週間もせずにやってきた。
「早いですね」
「キミのくれた素材の、おかげだよ。飛空艇のアイデアが、どういうわけか、わんさと出てきてな。素材が教えてくれるのだ」
ボクの記憶とかを、素材が読み取っちゃったのかな。
「して、コーキ。相談とな?」
ボクは、アプレンテスと王都をトラムで繋げないかと提案してみた」
「トラムで、か。ならば村同士の交流も、それで可能になりそうだな」
「はい。馬車では遅すぎて、飛空艇では高すぎます」
アプレンテスに、港を作ることも考えた。が、ネイス・クロトン村は海から遠い。
「で、陸路のほうがよかろうと」
「世界樹の横を抜けていく形にしたら、観光地としても重宝されるかなって」
「ふむ。よいな、実によい。コーキらしい、優しいアイデアだ」
馬車で往復しても支障のない村々も、トラムが走っている。王都には病院もあるため、トラムのほうが通いやすいのだろう。
「素材はもうできあがってるぜ、ティンバーのダンナ!」
大量の鉱山資源を、ナップルが担ぎ上げた。ティンバーさんに見せる。
「倉庫にはまだまだ、大量の鉱石があらあ。これだけあれば、アプレンテスどころかコラシェルまで繋げられるぜ」
「うむ。アプレンテスはまだまだ危険なエリアとはいえ、安全な道も確保できているからな」
馬車で行ける街道は、あらかじめ残す。街道沿いにトラムを走らせてみてはどうかと、提案してみた。
「実にいい。ところで、王都からツリーイェンまで延伸したい。そこからアプレンテスを経由できれば、と考えている。可能か?」
「できます。ツリーイェンまでの安全なルートなら、作れるかもです」
ツリーイェンまでのルートは、割と魔物が少ない。
可能だったらアプレンテスまで、直通させたかったけど。
とはいえ。そっちだと村がまったくない。故障したとしても、誰もいない場所で置き去りにされてしまう。
「では、コーキたちには王都~ツリーイェン間と、ツリーイェン~ネイス・クロトンの間、ネイス・クルトン~コラシェルまでの露払いをお願いしたい」
「わかりました」
ボクとパロン、クコは、トラム設置の安全圏を確保する依頼を受ける。
「アタシも、そっちに合流するぜ」
ナップルが、立候補してくれた。
「私も、協力しよう。アプレンテスにできた村にも、興味がある」
ヴェリシモ姫様まで。
「姫様、あなたには公務がありましょうや」
「これも、公務だ。アプレンテスの調査には変わりない」
「ですが、危険ですぜ」
「だからこそだ。危険な仕事を、民間人たる冒険者にすべて委ねるのか? それが王家のやり方なのか?」
「たしかに……恐れ入った。お姫様にゃあ、勝てねえや」
ヴェリシモ姫から諭されて、スプルスさんも言い返せない。
「じゃあ、オレっちたちも」
「構わぬ。スプルスは、母の警護をしておれ。コーキやナップルもおるのだ。ナップルは、最強のドワーフなのだろう?」
「そうは、参りませんぜ。王都への報告役も必要でさあ」
その代わり、各所に駅を作る際、姫の警護班を置いていくことに。
「それでいい。後は、勝手にせよ」
「はっ!」
ツリーイェンまでトラムを繋げる通路は、割とあっさり完成した。
「おおりゃあ!」
魔物は出てきたけど、ナップルがほとんど倒してしまう。
「素手で倒すんだね?」
「おう。【モンク】だからな」
手足に魔力を込めて固めて、相手を殴って蹴るスタイルだ。
「でも、コーキのほうがやばくねえか?」
ボクはというと、トラム用に道を広げているだけである。パロンやクコに至っては、ほぼ何もすることがない。通路の浄化をする程度であるが、正直その必要性すらないそうだ。
「ボクは元気だよ。ほらこのとお……あれ?」
シュートボクシングをしようとして、ボクはヒザをついてへたり込む。
「ウソついてんじゃねえよ。バテてんのは、わかってんだからな」
なんとかボクも立とうとしたけど、ヒザがいうことを聞いてくれない。
「コーキの場合は、しょうがない。あの硬い岩盤を砕いて、休むヒマもなく街道作りだ。ヘバって当然だ。ここは我々騎士団と仲間に任せて、キミは安心して街道を担当してくれ」
「ありがとうございます、姫様。がんばりますから」
「威勢がいいのはいいが、あんまり気合を入れすぎないほうがいいな」
「あはは」
姫様のお言葉に甘えて、ホドホドの力で街道を作っていく。
「コーキ。ツリーイェンにヤバい冒険者がいるってウワサだったけど、お前だったんだな? たいしたもんだよ」
「それほどでもないよ。ほらナップル、見えてきたよ」
ツリーイェンの街に入る。
「こんにちは」
「あらあ、いらっしゃい」
ギンコさんそっくりの女性が、冒険者ギルドの受付に現れた。眼帯をしているギンコさんと違って、前髪で顔が半分隠れている。いわゆるメカクレの女性だ。双子って聞いていたけど、顔も声もかなり似ている。
「カナンよ。よろしくね」
男勝りなギンコさんと違って、カナンさんは物腰が妖艶な女性だ。




