第63話 最強のドワーフを介入
スプルスさんが言っている最強のドワーフは、鉱山にいるという。
「オレっちが仲間になってもいいんだけどな。さすがに、姫様の護衛をやめるわけにはいかねえ。だから、村に行っても支障のねえ、けどとっておきのヤツを紹介してやるさ」
「楽しみだね、コーキ」
どんなドワーフさんに会えるのか、今から楽しみだ。
道中、王都の商品などを見て回る。
どれもこれも、ボクが作るような素人品ではない。複雑な装飾が施されつつも、それが魔力を帯びたものだと見ただけでわかった。こんな加工技術は、ボクの力では引き出せない。教わったって、ムリだろう。
これが、ドワーフの加工技術なのか。
だとしたら、「アレ」の開発も可能だろう。
王都所有の、鉱山に到着した。
ドワーフの鉱夫たちが、ツルハシを持って金属を掘り出している。
「野郎ども、シケてんじゃねえやい! キン○マついてんだろうが! オトコ見せろや!」
小さい女の子が、腕毛のすごいドワーフの鉱夫たちを鼓舞している。この子が一番、率先して動いているね。
「ナップル、調子はどうだ?」
少女のドワーフに、スプルスさんが語りかけた。
「相っ変わらずだぜ、オヤジ。岩盤が硬くて、攻略できやしねえ」
ナップルという女の子が、ほっぺたに着いた砂を吹く。
周りのドワーフたちは、みんな工具を持って掘り進んでいた。
だが、ナップルは違う。彼女だけが、素手だ。
「すりゃあああああ!」
手に麻製の手袋だけをして、岩に殴りかかっている。それだけで、分厚い岩盤が砕けた。
「ダメだ。もうちょっと行けると思ったんだがな」
十分にすごいのに、本人は納得していない。どれだけストイックなのさ?
「この岩盤が、行く手を遮っていてな」
金ピカでツルンツルンの岩盤が、鉱山に鎮座していた。なるほど、たしかに難敵のようである。
「彼女が、最強のドワーフ?」
「ああ。紹介しよう。コイツはナップル・ブレナディア。三四歳で、オレっちの末娘だ」
こんなに小さいのに、ボクより二つも歳上なのか。
「よろしくな!」
スプルスさんに紹介されて、ナップルが親指を立てる。見た目は一四歳くらいなのに、ボクより五つも歳上だなんて。
「キミにもう一人、娘がいたなんてね」
「三姉妹の末っ子さ。こいつは姉妹の中で一番、頭のできが悪い。それで、鉱夫のマネごとをさせているんだよ。一応これでもモンク、つまり聖職者だぜ」
「ついでにいうと、ちゃんと処女だぜ! パロンの姉御!」
ナップルがまた親指を立てた。
「えっと、おめえだろ? アタシがほしいってのは」
「コーキです。よろしく」
「おう、よろ……おっと」
ナップルは手を差し伸べようとして、自分の手が砂で汚れていると気づく。
「よろしくね、ナップル」
ボクは構わず、ナップルの手を取った。
「よせやい。意識しちまうだろうが。ドワーフの男で、そこまで気が回るヤツはいなかったぜ」
「あはは。それでね、ナップル。相談なんだけど」
「この岩をぶっ叩いてからで、いいか? こいつさえブチのめせば、他のヤツらも作業しやすいからよ」
ナップルがいう岩盤は、確かに硬そうだ。キンキラキンで、尖ったツルハシを叩き込んでも表面がツルツルのままである。ドワーフが手も足も出ないというから、相当なものだろう。
「ボクに任せて」
岩盤の前に立ち、ボクは岩盤に指を添える。
「シャーマンのおめえじゃムリだって、コーキよぉ。ナップルでさえ、ヒビを入れるのがやっとで」
スプルスさんが、心配げに声をかけてきた。
「おおおおおお!」
構わず、ボクは魔力を指から流し込んだ。
「大地よ、ボクに力を貸してくれ!」
願いを聞き届けたのか、ボクの指先から根が生えてきた。
根っこは岩盤に、スルスルと入り込む。岩盤を覆い尽くし、さらに力を込めた。
ツルツルだった岩に、わずかな亀裂が。
「すげえ! 木が、岩を砕いてやがる!」
ナップルも、信じられないものを見るような目になった。
根が内側から、硬い岩をミチミチと破壊する。
「ほええええええ」
「どうだろう? これで、作業はやりやすくなったかな?」
「すげええ! コーキっていうのか。コーキ、おめえつええな! こんな強さを持つドワーフは、他にいねえぞ!」
「岩を砕けても、加工するとなると難しくてさ」
王都のショップなどを見て回ったが、あんな技術はボクには覚えられない。
「あんなの、適当にこねくり回せばチャッチャだぜ! 岩盤を割るほうが、価値があらあ!」
そういうものなの?
「ヴェリシモだ。よろしく頼む」
姫様も、ナップルの手の汚れを気にせず握手を交わす。
「よせやい姫様、ユリの花が咲いちまうじゃねえか」
ナップルが頭をかく。
「それでね、ナップル。相談があるんだけど」
「なんだ?」
「ティンバーさんは、こっちと村を飛空艇で繋ごうって考えているんだよ。だけど、民間人を乗せるには、まだまだお金が掛かりそうなんだ」
「だろうな。運搬か、貴族様を乗せる程度で手一杯だろうよ。安全面においても」
「そうなんだ。だからね、トラムを作ろうと思うんだ」
「トラム……鉄道か」
王都の様子とドワーフさんとの出会いを通じて、真っ先に思いついたのがこれである。




