第56話 流行り病を治せ
数日後、ボクたちの村に若者が続々と入ってきた。畑や田んぼを手伝ってくれるという。
「おお、このコンバインというの、すごいですね」
村に入ってきた若者が、コンバインの性能に驚いていた。
「機械の操作は、こちらでやるので。みなさんは、精製をお願いします」
「はい。コーキさん。なんでも言ってください」
彼らには、畑や果樹園を任せたらいいかな。
「暮らすなら、ここにお家も建てないと」
ボクが手伝おうとしたけど、若者たちは「自分で作るからいい」と言ってきた。
「木を切らせていただければ、我が家くらいはこちらで作りますので」
「助かります」
家は、村人が総出で作るらしい。自分のことは自分でするが、信条だという。いいことだ。
ボクは、世界樹のある島に続く橋の、アップグレードを行う。一本だけだったので、複数本、わたしておくのだ。四本もあればいいだろう。
「ふう、こんなもんかな」
板を敷いては、自分で飛んで強度を確かめる。また、屋根のある通路も作ることにした。見晴らしがいい屋根なしはそのままにして、床面積を広げてみる。これなら、雨のときも心配がない。
「うむ。橋の上から盃を傾けて世界樹を拝む。これぞ最高の贅沢というものよ」
「まったくだねえ」
クコとギンコさんが橋の上で、ボクがつくった梅酒を酌み交わしていた。
「このまま、何事もなければよいがのう」
橋の欄干で梅酒を飲みながら、クコが腕を組む。
「言ってるそばから、なにか厄介ごとが来たみたいだよ」
ギルドに、中年の男性が息を切らせて入ってきた。
「なにがあった?」
「村が、流行り病に!」
依頼人は、ツリーイェンの近くにある、海沿いの村から来たという。
「行きましょう」
「でもコーキ、村からは相当離れているよ」
パロンが心配をしていると、ピオナが「ご心配には及びません」と告げた。ボクたちを、世界樹の根本まで案内する。
「この世界樹の根から、近隣地帯まで瞬時に移動できます」
「そんなことができるの?」
「世界樹は、それぞれの世界樹とつながっております」
各地のトレントと、根っこで連携しているそうだ。
「ふむ。さて、どうやって移動したらよいのか?」
クコがピオナに、疑問を投げかける。
トレントは、世界各地に散らばっている。村と反対方向にいるトレントに、移動してしまったら。
「ご心配には及びません。任意のトレントに移動が可能ですよ」
「わかった。ガルバたちギンコさんは、村をお願いします」
ボク、パロン、クコだけでいく。ピオナは小型のアイアンゴーレムに乗り込んで、ボクをサポートしてくれるという。
世界樹の根に手を添えると、ボクたちの体は木の根にシュッと吸い込まれた。
「うわっ!」
あっという間に、目的地の村らしき場所にたどり着く。
一瞬の出来事だったので、なにも覚えていない。
「ほんとに、到着しちゃったね、コーキ」
「すごいな、トレントは」
とはいえピオナによると、このトレントはまだ子供サイズなんだそう。
それでも、村の窮地を救ってくれたことには変わりない。
「ありがとう、トレント。気を付けて」
トレントに別れを告げて、村に入る。
村には活気がない。みんな衰弱していた。
騎士らしき人たちが、村人を治療している。
「王都からいらしたヴェリシモ王女様が、治療班を結成してくださいました。おかげで、なんとかなっているのですが」
王都からも、応援が来ているのか。
「それでも、疫病が解消されたわけではありません」
もう村人の三割は、病の被害に遭っているそうだ。
「どうして、こんなことに?」
「離れ小島を拠点に、漁をしていたときです。島に、イソギンチャクのような気持ちの悪いモンスターが棲み着いて。ソイツが放った毒の霧を浴びて」
ヴェリシモ様は治療班に村を任せて、原因となったモンスターを退治しに行ったという。
「ありったけの毒消しを持ってきたけど、効くのかな? 数も心配だよ」
村は、想像していた以上の危険度だった。「治療ならお任せあれ」と意気込んでいたパロンが、弱音を吐くほどに。
「とにかく、診せてもらおう」
みんな、顔に斑点があった。
「船員を、診ていただけませんか」
村の奥にある小屋に、重症者がいるという。
ボクたちは、船員さんたちを見せてもらうことに。
「く……」
パロンが、苦い顔をする。
「この人たちは、長くないかも」
「ええ!?」
村に広まった病は、パロンの薬でも延命処置しかできないそうだ。
「そんな。ここに来た意味が、ないなんて」
なにもできずに、帰ることになるとは。
苦しんでいる少女が、ノドの渇きを訴える。
しかし、水が汚染されているために、飲料水を取ることができない。
ポーションでごまかすが、子どもは余計に咳き込んだ。苦いためだ。
せめて、甘いものを。でもグミだと、飲み込みづらいかも。ノドに炎症を起こしているから。
「待ってて」
自分の身体からツタを伸ばし、ボクはブドウを生成する。
「ボクから伸びてきたブドウを、お食べ」
子どもに、ブドウを食べさせてみた。
抵抗するかなと思ったが、子どもは喜んで口にする。
「お、おおおおお!」
「コーキ見て!」
少女の顔から、斑点がなくなっていく!




