第57話 魔物を倒しに、船作り
「治った! ウソみたい! 長寿のハイエルフさえ恐れる、大災害級の病なのに!?」
これ、治ったんだ。ボクにも役に立つことができた。
この調子で、ボクはどんどん自分の身体からブドウを育てる。
「はやく、ブドウをみんなに」
ブドウを食べた人々は、次々に体調がよくなっていく。
「ありがとうございました! なんとお礼を言っていいやら!」
「礼には及びません。もしよければ、我々と交流を」
「はい! ぜひ! うちは海が近いので、海産物などをご提供できます!」
海か! 海の幸なんて、最高だ! それだけで、十分だよ。大収穫だ。
「し、信じられん」
船員さんたちを看病していた騎士さんたちが、ボクの能力に驚いている。
「王都の魔術師が作った秘薬でさえ、症状を抑えるのがやっとだったのに」
完治させちゃったのは、ボクのブドウだけだったみたい。
自分でも、よくわかっていない。漢方効果かな? 違うか。
「勇者殿。あなたの名前を、お聞かせ願いたい」
ボクが、勇者だって?
「違います。ボクはただの冒険者ですよ。コーキといいます」
「彼はアプレンテスを開拓した、勇者だよ」
「ちょっとパロン!?」
パロンが、ボクのことを誇張して騎士さんたちに紹介した。
「おお。あなたが。実は我々王立調査団は、アプレンテスを開拓している人物を探していたのです。あなたがそうなので?」
「はい。ネイス・クロトンという村を設立しました」
「そうだったのか。滅びたクロトン村を、蘇らせるとは」
しかし、調査団のリーダーであるヴェリシモ王女の姿は、見当たらない。
「ところで、お姫様は? 調査隊を結成なさったと聞いたけど」
パロンが聞くと、騎士団たちは沈んだ顔になった。
「王女は、ヴェリシモ様は単身で、病原体である化け物を退治しに向かったのだ」
たしかにイソギンチャクの魔物を倒さないと、被害はドンドン拡大してしまう。
とはいえ、一人でなんてムチャだよ。
『コーキ様、この海岸沿いにある岩だらけの島に、毒を持ったイソギンチャクが生息しています。その魔物を倒さなければ、大繁殖してしまうでしょう』
よし、ではイソギンチャク退治だ。
「船は、どうするのさ。コーキ?」
「作るよ」
港町コラシェルに行った際に、壊れた船も取り込んでいたのだ。
海岸沿いに移動して、船を作成する。
「コーキ。キミって、なんでも作れるんだね?」
『素敵です、コーキ様』
パロンとピオナが、ボクの造船に見とれていた。
「木でできているものは、あらかた作りたいと思っていたからね」
ボクは黙々と、作業を進める。
「こんな感じかな?」
ボクが作っているのは小さい船だが、ある程度は強度をつけておいた。船から魔物と相対する可能性があるからだ。
岩山の規模がどれだけか、わからない。足場がない可能性もある。
「よし、みんな乗って!」
ピオナやパロンを乗せて、船を進ませた。
『コーキ様、ワタクシがナビゲートをいたします。そのまま船を進めてくださいませ』
「わかった。頼むよ。ピオナ」
ピオナのナビに従って、小島を目指す。
『見えてきました。コーキ様、あそこです』
毒々しい紫色のイソギンチャクが、岩場でウジャウジャと巣を作っていた。
魔物は、小島に棲み着いて繁殖していたようである。
『霧状の物体は、どうやらあのイソギンチャクの卵だったようです』
「うえええ。これが人に寄生していたのか」
パロンが、吐き気を催した。
本来なら、動物に取り憑いて数を増やすという。この世界では火葬文化があるから、そう大量発生は防げていた。おまけに、接触感染までするという。
空気感染しないことが、せめてもの救いか。そうでなければ、我がネイス・クロトン村も危なかった。
「仕留めるよ! 【サンダーソード】!」
パロンが、雷撃を剣にまとわせる。イソギンチャクの魔物を、一刀のもとに斬り伏せた。パロンに剣術の心得はないけど、雷撃の力で身体速度を上げているのだ。
「【アタック・トーテム】!」
ボクは船の先にトーテムを設置して、ファイアボールを放った。
パロンとの連携で、ボクたちはイソギンチャクの魔物の数を減らす。
他に残っている毒素や、残存している魔物はいないか確認した。どうやら、大丈夫らしい。
「どこから、沸いてきたんだろう?」
「わからない。でもまだ世界には、こんな怖い魔物がいるのかも」
「なんか、物騒だね」
「いや。アプレンテス地方周辺くらいだよ。ヤバイ魔物が出るのは。それよりも、ワタシたちだけで対処は難しいかも」
ボクたちに足りないのは、戦闘力だもんね。
「冒険者ギルドができたのは、ちょうどよかったかも?」
「そのようだ。まずはギンコに頼んで戦力をよこしてもら……」
パロンが言いかけて、ボクたちは悲鳴を聞いた。
「女性の声だね」
「なんか男らしい声だけど!」
「村の向こう側だ!」
「よし」
急いで、声のする方角へ、船を進める。
「うわあああ!」
赤と黒の軍服を着た女性が、モンスターに襲われていた。
「おのれ化け物め! このヴェリシモを傷つけられると思うな!」
王女様だと思しき女性が、ひときわ大きなイソギンチャクの魔物の触手に絡め取られている。




