第45話 アルラウネ
バラの魔物の巨大モンスターは、自らをアルラウネと名乗った。
「魔王様復活のために、トレントの命を吸っていたのよ! 邪魔をしないでくれる?」
アルラウネは魔王のために、自分の肉体を捧げていたらしい。トレントを食って、自分に取り込もうとしていたという。
こいつが、トレントを弱らせていたのか。
アイアンゴーレムが、アルラウネに照準を合わせる。
「忌々しいスライム共ね。もう一度、支配してやるわ!」
アルラウネが目を光らせた。
しかし、ゴーレムたちになんの変化もない。雷撃を放出する。
「痛い痛いいぃ! 支配権が、ソイツに変わったのね?」
どうやら、アルラウネがこのスライムたちを操っていたようだ。
トレントの近くにいた個体だけが、支配を逃れていたのだろう。
そういえば、スライムはどこだろう?
「あのスライムは……ここにいたのか」
スライムは、トレントの上に乗っていた。ピョンとはねて、ボクの頭に乗っかる。なにか、伝えたいことでもあるのかな?
「……ああーっ。なるほどねえ」
スライムの思考が、ボクにわかるように映像化された。
なるほど。そういうことがあったのか。
「どうしたの、コーキ?」
「この施設は、潰されて当然だったんだ」
「言っている意味が、よくわからないんだけど」
「世界樹やスライムは、ここで育ったんじゃない。この施設に連れてこられたんだ」
ここは、悪い奴らの基地だったのだ。
「コーキ、話の筋が見えないよ?」
「本人に直接、聞いたほうがいいかな。スライムに触ってあげて。テレパシーで伝わるから」
パロンやクコが、スライムに触れた。
この施設は、大昔の宗教組織が、天候を世界樹にコントロールさせるために建てたものだった。幽閉されて、天気をコントロールさせられ続けていたのだ。スライムと一緒に。
団体は天気を操ることによって、人々を導いていたらしい。作物だけではなく、魔法に変わるエネルギーも作り出していたとか。
スライムは反乱を起こして、天気を狂わせて教団を全滅させた。
だが、共倒れに終わる。宗教団体は全滅したが、管理する人たちもいなくなってしまった。地下水でどうにか生命を保っていたが、それも何万年とは続かなかったのである。とうとう、世界樹は干上がってしまう。
「うわあ、ひどい組織だったんだね」
パロンが、憤った。
「まあ、壊滅したのも自業自得だよね」
この雨も、今まで支配し続けていた天候が荒れに荒れた結果だという。
ボクたちを襲ったのも、「水分を狙っている」と思ったからなんだって。
世界樹はその後、わずかな水分を頼りに生きていた。
しかし、今度は魔王に狙われることに。
魔王は滅びたけど、魔王の配下であるアルラウネと、ずっと戦ってきたらしい。
いよいよ水も枯れそうになったときに、ボクが水を大量に溜め込んでやってきたと。
「そこのアンタ! スライムがいうことを聞かなくなったのは、アンタのせいね?」
アルラウネが。ボクを指さした。
「見たところシャーマンのようだけど、アタシの目はごまかせない。これは僥倖だわ。世界樹がもう一本、現れてくれるなんて! 魔王様もきっとお喜びになるわよ!」
どうもアルラウネの興味が、ボクに向けられている。
「魔王のエサになるつもりは、ありませんっ」
「でも、アタシのエサにはなってくれたわ。アンタのおかげで、アタシは全盛期……いや、それ以上の力を得たのよ! これでもう、ダムに残っていたわずかな水をトレントと奪い合わなくて済むわ!」
それまでアルラウネは、ほとんど小さい花同然で、ずっと生きてきたらしい。
小さいながらもあれだけの嵐を起こして、王都を孤立させていたわけか。
「それは、トレントだって同じでしょう」
ボクはトレントを助けるために、水を提供したんだ。
魔王の手先なんかを、助けるためじゃない。
「アンタの意見なんて、聞いてない! これからはアタシが、魔王様の遺志をついで世界を征服してくれる!」
トゲだらけのツタを伸ばし、アルラウネがボクを縛り上げようとした。
トレントが身代わりになって、バラのツタを引き受ける。
うわ、まさに怪獣大戦争だ。
「威勢がいいわね。だけど、アンタの命もこれまでよ!」
アルラウネが、トレントをダムの壁に叩きつける。
バラのツタを引きちぎって、トレントがアルラウネの横っ面を殴り飛ばす。
「ごはあ!」
アルラウネが、ダムの壁を破壊しながら吹っ飛んだ。
「この美しい顔に、傷を! 許さなぁい!」
今度はアルラウネが、大量のトゲを放つ。
トレントのガードした腕にも、トゲが突き刺さった。
「コーキよ、このままではトレント殿が負けてしまうぞい」
「よし。ボクがパワーを送るよ」
ボクは、トレントの肩に乗った。ツタを伸ばして、神経や血管のようにトレントの体内へ隅々まで行き渡らせる。
「ボクが水を送り込むから、吸っていいよ」
ツタや根を介して、ボクはため池の水をトレントに送り込み続けた。
世界樹はどんどんと大きくなり、ダムより大きくなっていく。
ドームはすっかり、水の中に沈んだ。
ダムに水を溜めるどころではなく、鉄の壁を壊して外へ溢れ出した。それこそ滝のように。
「ま、待ちなさいよ」
あまりに巨大化していくトレントに対して、アルラウネが恐れおののいている。




