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ウッドゴーレムに転生しました。世界樹と直結して、荒れ地を緑あふれる大地に変えていきます  作者: 椎名 富比路
第四章 クレキシュ大渓谷と、魔王の元配下アルラウネ

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第46話 世界樹とは、世界そのもの

 トレントはますます成長していき、渓谷の大きさをさらに上回った。もはや、山と言っていいくらいに。


「見て、コーキ。渓谷に木が生えてきた」


 ボクの隣にいるパロンが、渓谷を指さした。


「木の上に、木が生えているね」


 その木の上に、さらに木が生えてくる。どこまで成長するんだろう?


 雨水を吸って、木々や緑が再生を始めたようだ。


 ボクが伸ばしたツタも、果実や野菜を実らせていく。

 トレントから育っていった作物が、たわわに実った後に根っこに落ちていく。作物は腐り始め養分となり、また新しい作物が育っていく。

 

 野菜や果物は、実っては腐り落ちを高速のペースで繰り返した。そうやって、トレントはさらに成長していく。


「まだまだ。もっとだ。もっと成長しよう」


 ボクはさらに、ツルを伸ばしていった。


「雨が降り出したよ!」


 砂嵐に覆われていた大地に、強烈な雨が降ってきた。


 作物は実って腐っていき、雨に流される。

 流れた種は自然と地面に定着し、実りをもたらす。


 雨は生態系の活性化を、促進していった。失われた時間を取り戻すかのように。


 枯れていた渓谷に、雨水が流れ込む。


「コーキ、魚まで戻ってきているよ」


「すごい。これが世界樹の力なんだ……」


 世界樹というだけあって、本当に世界を作り上げている気がした。


 木そのものが、世界。それが、世界樹の姿だったとは。

 

 雨雲が竜巻となって、砂嵐を飲み込む。

 砂は泥となって、大地に染み渡っていく。

 

 天の恵みを吸って、トレントはさらに巨大化していった。天を突き破り、この渓谷をすべて覆い尽くすほどに。


 ボクの想像以上である。その光景は、まさに谷底……渓谷を思わせた。


「じょ、冗談でしょ!? ほとんど枯れ木だったモンスターに、どうしてここまでの力が!?」


 トレントのあまりの大きさに、アルラウネが恐怖し後ずさりをする。

 

「わからないのですか? この渓谷の、本当の意味を!」


「本当の、意味ですって?」


「この渓谷の本当の姿は、世界樹の根っこなんです」


 ボクはスライムが見せてくれた、渓谷の姿を思い出す。


 渓谷の実態は、世界樹そのものである。

 

 木が木を産んで、さらにその上から木が育っていった。


 そうしてできたのが、クレキシュ大渓谷なのである。


 大地の裂け目は、世界樹の根っこが作り出した分かれ目なのだ。

 

 宗教団体は、その力を悪用しようとして、世界樹を切った。


 その影響で大地は荒れ果て、大渓谷はただの枯れた谷へと姿を変えたのである。


 ボクは、その大樹の力を復活させたのだ。


「バカな! バカなあっ!? アタシより強い植物型のモンスターがいるなんて! わああああ!」


 半狂乱になって、アルラウネがトレントに攻撃を続ける。


 だが、つま先にしか攻撃は当たっていない。くすぐったいくらいである。


 あれだけ大きかったアルラウネが、もう豆粒くらいにしか見えない。最初は勝てるのかなって心配だったけど、今のアルラウネは正直怖いと思わなかった。


 とはいえ、邪魔な存在なのは変わりない。


「とどめを刺しましょう、トレント。魔王の手先なんて、この世界に必要ない」


 ボクが語りかけると、トレントは足を上げる。


 足元に生えていた根っこが、ズズズと盛り上がった。


 大地が揺れて、アルラウネがバランスを崩す。


「待って! その力を魔王復活に役立てて! その力があれば、魔王様も復活できて、あなたも自由に――」


 聞く耳を持たず、トレントはアルラウネを踏み潰した。アルラウネの栄養分を、一瞬で吸い取っていく。


 アルラウネは、ただの枯れ葉になって粉々に。


 トレントは動きを止めて、大地に根を完全に張った。アプレンテスを象徴する、世界樹となる。


 洞窟の入り口がひとりでに開き、目の前には大瀑布が。


「ほらあ、やっぱり入り口が滝の中にあったじゃーん」


 ボクはドヤ顔で、二人に自慢をする。


 悪者のアジトってのは、たいてい滝の裏側にあるものだ。


「コーキ、川もだいぶ伸びたよねえ」

 

 パロンが差す方角には、ボクたちがゴーレムを使って作った川が。行きはチョロチョロの溝レベルだったのに、今や水が囲いを砕いている。水は無軌道に、血管のごとく広がっていく。どこにつながっているのだろう?

 

 アルラウネと雨乞い宗教団体が滅びたことで、自然が回復していった。

 

「滅んで、よかったんだよね?」


「うん。こんな組織はダムに沈めばいいよ」 


 世界樹が、自分より小さいトレントを、大量に生み出す。


 トレントたちのサイズは、普通の大木くらいのサイズだ。各々の行きたい方角へ、足を進めている。


「彼らは、なにをする気だろう、コーキ?」


「街を襲う気配はないぞよ」


 パロンとクコが、不思議そうにトレントの行く末を見守った。


「このまま、アプレンテスを緑に変えてくれるみたいだね」

 

 トレント型世界樹が、散り散りになって歩き出す。だが、行き先も荒れ地となっているだろう。回復させるには、また何年かかるか。


 この大渓谷のように、一瞬で回復というわけにはいくまい。


 一体のトレントが、立ち往生している。どうしようか、迷っているみたいだ。ボクと会話していたスライムも、いっしょにいる。


 ボクは、そのトレントの肩に乗った。


「そうだ、コーキ。トレントをウチにまねこう。村で回復してから、ふるさとに根を伸ばせばいい」

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