第4話:高い塔を作ってバズろうとした結果。
えー、みなさんこんにちは。春日部つむぎです。
前回、世界は一回リセットされました。大洪水という名の「世界まるごと初期化」を経て、ノアさん一家という最小構成のバックアップから、人類は再スタートを切ったわけです。神様も「もう全消去はしないからね」と、虹の契約――いわばリセットボタンへのロック――をかけてくれました。
さて、リブートした人類はどうなったか。人間、また増えます。めちゃくちゃ増えます。今度は「洪水怖い」という共通のトラウマを持っているので、みんなで一箇所に固まって、仲良く暮らそうとするんですね。
集まって、イキって、散らされる。
それでは、第4話「高い塔を作ってバズろうとした結果。」いってみましょう。
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「不安」から始まった、中央集権バグ
当時の人類には、現代の私たちからすると羨ましいような特徴がありました。それは、「言葉が一つしかなかった」ことです。全人類が同じプロトコルで通信している状態。意思疎通のコストがゼロですから、開発効率で言ったら最強です。
で、そんな効率爆上がりの人類が、ある日こう言い出しました。
「ねぇ、みんなで力を合わせて、天まで届くような高い塔を作らない? それを作って、自分たちの名前を世界中に売ろうよ(バズろうよ)!」
これ、実はただイキっていただけじゃないのかもしれません。彼らには洪水の記憶、つまり「世界が沈んだ恐怖」がどこかに残っていた。だから、もう二度と散り散りになりたくない、もう沈みたくない。天に近い場所まで積み上げれば、今度こそ安心できるはず……。
そんな切実な「不安」が、いつの間にか「俺たちの力を見せつけてやろうぜ」という巨大な承認欲求へと変質してしまったわけです。
煉瓦という名の「規格化技術」
彼らは最新技術を投入します。
「石の代わりに煉瓦を。漆喰の代わりにアスファルトを使おうぜ!」
これ、実はかなり象徴的です。石は一つ一つ形が違う「自然」のもの。でも煉瓦は、人間が同じ形に焼き固めた「工業製品」です。つまり、世界のばらつきを、人間の都合のいい規格に押し込める技術を開発したわけです。
塔はどんどん高くなっていきます。全人類が同じ言葉を話し、世界を自分たちの規格品で塗り替え、神様の領域にハッキングを仕掛けるような勢い。現場は「俺たち、神様がいなくても何でもできるんじゃね?」という全能感のバグに包まれていました。
神様、わざわざ「下まで」降りてくる
これを見た神様。またしても「……おいおい」となります。
神様、天からわざわざ、人間が作っている塔を「見に降りて」きました。全知全能なのに、あえて下まで降りてくる。これ、神様なりの皮肉ですよね。
「どれどれ、君たちが頑張って作った高い塔とやらを、わざわざ『下の方まで』降りて見てあげようかな」
っていう、圧倒的なスケール差を見せつけるムーブです。
神様はこう分析しました。
「あいつら、言葉が一つで、みんなで固まってるから、あんな無茶を思いついちゃうんだな。このまま放っておいたら、あいつらは本当に何でもやるぞ(制御不能になるぞ)」
ここで、神様の「ツンデレ補正」が発動します。洪水みたいに消去はしない。でも、このままじゃシステムが中央集権的にオーバーヒートする。そこで選んだ解決策が、これでした。
「よし、言葉をバラバラにして、お互いの話が通じないようにしよう」
強制分散と、他者の誕生
現場はパニックです。さっきまで「そっちの煉瓦取ってー!」って言ってた相手が、急に「???」な言葉を話し始めた。プロトコルがバラバラになった瞬間、意思疎通は不可能になり、建設プロジェクトは一瞬で「炎上・放置・解散」のコンボを決めました。
人類は共通の言語を失い、世界中に散らばっていきました。神様による「強制分散処理」ですね。
でもこれ、ただの罰なんでしょうか?
言葉が通じない相手がいる。それは面倒だし怖いです。でも、その瞬間に初めて、本当の意味での「他者」が生まれるんですよね。自分と違う世界の切り取り方をする人。
わかり合えない。だからこそ、わかろうとする。
神様は言葉をバラバラにすることで、人類に「他者を想像する」という宿題を与えたんです。もしあのまま言葉が一つで、人間が自分たちの規格だけで完璧を目指していたら、多様性も新しい発見もなかったかもしれません。
わかり合えないことも、神様の補正だった。そう考えると、少し救われますよね。
……まあ、そのせいで現代の私たちは外国語の勉強に苦労してるわけですが。神様、この通信制限、ちょっと厳しすぎませんか?
さて。
世界中に散らばった人類。バラバラになったからこそ、神様は今度は「全体」ではなく「個人」にフォーカスして、特別なコンサルを始めることにします。
次回、第5話。
「アブラハム、高齢からのスタートアップ。」
お楽しみに。……次は「え、今からですか?」という無茶振りから始まる、伝説の契約のお話です。




