表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
つむぎ訳・旧約聖書 神様と人類のやらかし記録  作者: 五平


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/10

第3話:神様、ついにリセットボタンを押す。

えー、みなさんこんにちは。春日部つむぎです。


前回、人類初の「他者消去」という最悪のバグが発生しました。それから時間はさらに流れ、人間はどんどん増えていきます。普通、人数が増えれば技術が発展したり、文化が豊かになったりして「いい感じ」になるはずですよね?


でも、自由意志という名のバグを抱えた人類、増えれば増えるほど「やらかし」の密度も上がっちゃったんです。今回は、神様がついに「このプロジェクト、一旦白紙に戻そうかな……」と遠い目をする、歴史的大惨事のお話です。


神様、世界をもう一度やり直す。

それでは、第3話「神様、ついにリセットボタンを押す。」いってみましょう。


---


世界、炎上中


さて、当時の世界の状態ですが、一言で言うと「世紀末」です。

みんな好き勝手やって、奪い合い、傷つけ合い、もはや神様が最初に設定した「善」のプロトコルなんて、影も形もありません。システムログを見れば、エラーコードと不正アクセス通知が画面を埋め尽くしているような地獄絵図。


それを見た神様の独白が、これまた切ないんです。

「あーあ、人間なんて作るんじゃなかったな……」


全知全能の神様に「後悔」という概念があるのかよ! ってツッコミたくなりますが、それくらい当時の人類の暴走は、神様の想定(期待)を遥かに超えてひどかったわけです。神様は決断します。

「よし。地上にいるもの、全部消去デリートしよう。……でも、全部消すのはちょっと忍びないな」


ここで、神様の視線が一人の中年……いえ、真面目なおじさんに止まります。それが、今回の主人公「ノア」さんです。


究極の「無理ゲー」発注


ノアさんは、そんな荒れ果てた世界の中で、唯一「ちゃんとしてた」人でした。神様との接続をしっかり維持して、周囲のバグに染まらずに生きていた。神様はノアにだけ、極秘のバックアップ計画を伝えます。


「ノア、これから大洪水で世界をリセットするから、巨大な箱舟を作って。サイズはこれくらいで、階層は三階建てで……あ、あと、世界中の動物たちを種類ごとに乗せてね」


……いや、神様。発注が雑かつ重すぎません?

今みたいに重機があるわけじゃないんですよ。ノアさん、ここから何十年もかけて、たった一人(と家族)で山の上に巨大な船を作り始めます。


たぶんノアさん、何度も不安になったと思うんですよ。

本当に雨なんて降るのか。自分は神様の声を聞き間違えたんじゃないか。家族まで巻き込んで、山の上で船なんて作って、もし何も起きなかったら……。周りからは「ノアのやつ、ついに頭いかれたな」って指差される日々。それでもノアは、木を切り、板を組み、釘を打ち続けました。

信仰って、たぶん「疑わないこと」じゃなくて、疑いながらも「神様の仕様書」通りに手を止めない、狂気的なまでの実装力のことなんですよね。


デバッグ開始:40日間の水没


ついに、箱舟が完成しました。ノアの家族と、世界中の動物たちがゾロゾロと船に乗り込みます。そして、神様が自ら箱舟のドアを外側から閉めました。これ、完全に「ロックがかかった」状態です。もう中からも外からも開けられません。


その直後、来ました。大洪水です。

天の窓が開き、地下の泉が湧き出し、世界は一瞬で水没しました。


この時の箱舟の中、想像してみてください。

決して快適なクルーズ船じゃありません。木の匂い、濡れた獣の匂い、湿った空気。足元は絶え間なく揺れ、壁の向こうでは激しい雨音が叩きつけ、暗闇の中で動物たちが怯えて鳴いている。

外に出ることはできないし、窓から見えるのはただの「水」。

昨日まで自分を馬鹿にしていた世界が、冷たい水に飲み込まれて消えていく音を、ノアたちは箱舟の内側から聞いていたわけです。


これ、神様からすれば「洗浄」なんですよね。あまりに汚れすぎたシステムを、水という強力なクリーナーで洗い流している。でも、そのクリーナーの中に、ノアという「最小構成のバックアップデータ」だけを浮かべて守っている。神様のツンデレ補正、ついに地球規模にまで拡大しました。


鳩とオリーブ、そして「ロック」の契約


水が引くまで、かなりの時間がかかりました。

ノアさんは、外の様子を伺うために鳥を放ちます。最初はカラス。次は鳩。三回目に放った鳩が、オリーブの葉をくわえて戻ってきた時、ノアは確信しました。「あ、陸地が出てきた。再起動リブート完了だ!」


船を降りたノアが最初にしたことは、神様への感謝の献げ物でした。神様、その香りを嗅いで、こう思います。「うん、やっぱり人間って、放っておくとまたやらかす生き物なんだよな。でも、もう二度と、洪水で全部消すようなことはしないよ」


ここで、神様は人類と「新しい契約」を結びます。その証として空にかけたのが、「虹」です。


虹はただの演出じゃありません。神様が自分自身にかけた「制限」なんです。「虹が出ている間は、私がこの約束を覚えている印だよ」……つまり虹は、神様が「リセットボタン」にかけた物理的なロックなんです。二度と全消去はしない。神様、自分自身の運用ルールをここで定義したわけです。


補正の結末:初期化は解決策か?


こうして世界は、ノアの家族からリスタートすることになりました。でもね、これでお話が終わらないのが、このドキュメンタリーの恐ろしいところです。


世界を綺麗に洗い流して、一番マシな人間だけを残した。完璧な再起動のはず。なのに、リセットしても、人類のバグは消えなかった。

結局、システムを初期化しても、人間の中に組み込まれた「自由意志という名のバグ」はそのままだったんです。


神様は、この「バグを抱えたままの人類」と、どう付き合っていくのか。

人類は、この広くなった世界で、今度は「一人」ではなく「集団」としてどんなやらかしを披露するのか。


次回、第4話。

「高い塔を作ってバズろうとした結果。」


お楽しみに。……次は「言語の壁」という名の、神様による通信制限のお話です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ