第2話:カインとアベル、人類初の身内揉め。
えー、みなさんこんにちは。春日部つむぎです。
前回、人類は「禁断の実を食べる」という規約違反をかまして、無事に(?)エデンの園を追い出されました。「これからは自分たちで汗水垂らして働けよ!」という、神様からの超ハードな「自立支援プログラム」が始まったわけです。
さて、追い出されたアダムとエバですが、そこはそれ、人間ですから頑張ります。二人の間には、子供が生まれました。お兄ちゃんの「カイン」と、弟の「アベル」です。
「これからみんなで力を合わせて、この厳しい世界を生き抜いていくぞ!」……という心温まるファミリードラマになるかと思いきや。旧約聖書、そんなに甘くありません。今回は、人類史上初めての「嫉妬」と「兄弟喧嘩」のお話です。
嫉妬は、ドアの前で待っていた。
それでは、第2話「カインとアベル、人類初の身内揉め。」いってみましょう。
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職業選択の自由と、初めての「納品」
月日は流れ、兄弟は立派に成長しました。
お兄ちゃんのカインは、土を耕して作物を作る「農家」に。弟のアベルは、羊を育てる「牧畜業者」になりました。適材適所。ここまでは、非常に健全なスタートアップ企業のようです。
ある日のこと、二人は神様への日頃の感謝を込めて、自分の収穫物をプレゼント(献げ物)することにしました。いわば、神様への「定期報告」兼「成果物の納品」ですね。
カインは、自分が育てた立派な野菜や穀物を持ってきました。アベルは、自分が育てた羊の群れの中から、一番コンディションの良い初子を持ってきました。
さあ、神様の検収タイムです。どちらの納品物が通るのか。……結果はこうでした。
神様、アベルの羊には「いいね!」したけど、カインの野菜は「保留」しました。
もちろん、野菜そのものが悪いという話ではありませんよ? 問題はたぶん、何を出したかより、どう向き合って出したか。アベルは「一番良いもの」を選んで、神様に意識を向けていた。対してカインは、「とりあえずこれでいいだろ」的な、形式的な納品だったのかもしれません。
承認欲求という名のバグ
これ、カインからしたら「はぁ!?」って話ですよ。
たぶんカインも、最初から弟を憎んでいたわけじゃないんです。ただ、自分の努力が神様の視線に入らなかった。それがきつかった。
人間って、報酬が欲しいだけじゃなくて、「見てほしい」んですよね。頑張ったことを、誰かに認めてほしい。まして相手が全知全能の神様なら、なおさらです。でもその視線が、自分を通り越して弟にだけ向いたように見えた。
そこからカインの中で、何かがぐにゃっと歪んでしまったんです。「なんでアイツだけ?」という名のバグ。そう、「嫉妬」の発生です。
カインの顔色は一気に悪くなります。それを見た神様、カインにアドバイスをします。
「カイン、なんでそんなに怒ってるの? 正しいことをしてるなら、顔を上げられるはずでしょ? でも、もし君が正しくない道を選ぼうとしてるなら……『罪』という名のバグが、ドアの前で君を狙ってるよ。君はそれを制御しなきゃダメだよ」
ここ、実はめちゃくちゃ大事です。まだアベルは生きています。何も起きていません。
神様は、結果が出てから怒ったんじゃない。結果が出る前に、ちゃんと止めに来ている。つまりこの瞬間のカインには、まだ「戻れる地点」があったんです。
ログに残る「最悪の選択」
ところがカインさん。この神様の警告を無視して、とんでもない「暴走」を始めます。
ある日、カインはアベルを野原に誘い出しました。そして、誰もいない場所で……カインは、弟のアベルを手にかけました。聖書の物語として描かれる、人類最初の殺人です。
前回のやらかしは、神様との約束を破ることでした。でも今回は違います。人間が、人間を壊したんです。神様との距離感バグりが、ついに人間同士の距離感バグりに広がってしまったわけです。自由意志というバグが、ついに「他者の消去」という攻撃性として発火してしまった瞬間でした。
「僕は弟の管理人なんですか?」
事件の後、神様が登場します。神様、もちろん全部知ってます。でも、あえてカインに問いかけます。
「カイン、弟のアベルはどこにいるの?」
これに対するカインの返答が、もう開き直りすぎてて震えます。
カイン「知りませんよ。僕は弟の番人(管理人)なんですか?」
……うわぁ、最悪のレスバです。
でも神様は、静かに言いました。
「何をしたんだ。アベルの血の声が、地面の中から私に向かって叫んでいるぞ」
この「地面」っていうのがまた、怖いんですよ。
さっきまでカインが耕していた場所、自分の仕事場。作物を育てるはずの土が、弟の血を吸って、証人になってしまった。「見ていましたよ」「隠せませんよ」と、土が黙っていないんです。旧約聖書、こういうところ急にホラー。
呪いと、意外な「プロテクション」
神様はカインに「補正」を下します。
「お前はもう、土地を耕しても作物が実らなくなる。これからは安住の地を失って、各地を彷徨う放浪者になるんだ」
カインはこれにビビります。
「そんな! 追放されたら、誰かに見つかって殺されちゃうよ!」
……いや、お前がアベルにしたこと、棚に上げてそれ言う? って感じですけど。
でも、ここで神様の「バグってる距離感」がまた発動します。
神様、なんとカインを殺そうとする者には七倍の復讐があるという「刻印」をカインに付けて、彼を保護したんです。
「お前は悪いことをした。だから罰は与える。でも、お前が誰かに勝手に消されるのは許さない」
……神様、やっぱりツンデレが過ぎませんか? 悪いことをした「推しの子」を、突き放しながらも、致命的なエラーからは守ろうとする。この「罰」と「保護」がセットになった補正、旧約聖書あるあるです。
こうしてカインは、神様の前を去り、東の方へ彷徨っていきました。
人類は、この「傷」を抱えたまま、さらに増え、さらに広がっていくことになります。
さて。
人間、増えます。増えるということは、それだけ「やらかし」のバリエーションも増えるということです。神様が「これ、もう無理じゃない? 一回リセットしない?」ってガチで検討し始めるレベルまで、事態は悪化していきます。
次回、第3話。
「神様、ついにリセットボタンを押す。」
お楽しみに。……次、世界が水没します。




