第1話:環境構築、コマンド一発。
えー、みなさんこんにちは。春日部つむぎです。
今日から始まるこのお話なんですけど、一言で言うと「神様と人類の、数千年にわたる距離感バグり散らかしドキュメンタリー」です。
もうね、最初に言っておきます。旧約聖書って、だいたい人類が「あ、やべ。やらかした」って頭を抱えるか、神様が「おい、いい加減にしろよ?」ってガチギレするかのループで構成されています。でも、そのドロドロした愛憎劇の裏には、実は壮大な「契約」と「補正」の物語があるんですよね。
完璧な世界に、自由意志というバグが入った。
というわけで、まずは記念すべき第1回。「環境構築、コマンド一発。」――天地創造のお話から始めていきましょう。
---
最初、世界は「虚無」でした
さて、一番最初です。
世界、まだ何もありません。
どれくらい何もないかっていうと、真っ暗で、ぐちゃっとしてて、形もなくて、ただただ「無」です。PCで言えば、まだOSすら入ってない、それどころか電源すら入ってない黒い画面の状態ですね。
そこに、神様が登場します。
神様、まずは手始めにこう言いました。
「光あれ」
……はい、強い。
これ、今の感覚で言うと、ターミナルにコマンドを一発打ち込んだだけで、一瞬にして完璧なライティング設定が完了したようなもんです。すると、パッとお部屋……じゃなくて世界が明るくなりました。
神様、それを見て「お、いいじゃん」って満足します。これが第一日目。
ここから神様の怒涛の環境構築が始まります。
二日目は空を作って、三日目は海と陸を分けて植物を生やして。四日目は太陽と月と星を配置します。これ、宇宙規模のライブラリ実装ですからね。五日目には魚とか鳥を作って。六日目には……はい、動物たちを作ります。
ここまでは、めちゃくちゃ順調なんですよ。エラーも吐かないし、神様も「よしよし、今日もいい仕事したなー」って、自分のクリエイティビティに酔いしれてる感じがあります。まさに完璧な「理想郷」の構築です。
究極の「推し」を作ってしまう
で、六日目の最後。
神様、ここで「メインコンテンツ」を投入することに決めました。
そう、人間です。
神様は、自分に似せて人間を作りました。アダムさんですね。
「君、この世界を管理していいよ」っていう特権まで与えちゃいます。さらに「一人じゃ寂しいよね」ってことで、アダムの肋骨からエバ(イブ)さんを作って、二人で仲良く暮らせるように「エデンの園」という超高級・セキュリティ万全・食事無料のタワマンみたいな場所を用意してあげました。
神様、この時はまだニコニコです。
「いやー、人間かわいいな。自分に似てるし。最高傑作だな」
って思ってたはずです。完全に「推し」を愛でるファンの心理に近いかもしれません。
でも、これが「距離感バグり」の第一歩だったんですよね。
あまりにも可愛がりすぎて、神様、ここで一つだけ「絶対に守ってね」っていうフラグを立てちゃうんです。
禁断の果実、という名のデバッグミス
神様は二人に言いました。
「この園にあるものは、全部好きにしていいよ。何を食べてもいい。……あ、でもね、あそこにある『善悪の知識の木』の実だけは食べちゃダメだよ。食べたら死ぬからね。これ、マジだからね」
これ。これが全ての始まりです。
普通、これだけ完璧な環境を与えられたら「あ、はい。了解です。食べません」ってなるじゃないですか。でも、そうはいかないのが人間なんですよね。
そこに、一匹のヘビがやってきます。
このヘビがまた、口がうまいんですよ。エバさんにこう囁きます。
「ねぇ、本当に食べちゃダメって言われた? 神様、意地悪言ってるだけだよ。あれ食べたら、君たちも神様みたいに賢くなっちゃうから、それが怖いんだよ」
……はい、来ました。
「限定」とか「秘密」とか、そういう言葉に弱い人間の本質。
エバさん、「え、そうなの? 賢くなれるの?」って思っちゃいます。よく見ると、その実はツヤツヤしてて、いかにも美味しそう。完全に「あ、これ食べちゃお」っていう連想ゲームが暴走しちゃったわけです。
で、食べちゃいました。
ついでにアダムさんにも「これ、美味しいよ」って渡して、アダムさんもパクり。
はい、規約違反。アカウント停止レベルの重大なやらかしです。
「自分」を観測してしまった瞬間
実を食べた瞬間、どうなったか。
二人は「賢く」なりました。でも、その賢さが最初に向けられたのは、なんと「自分たちが裸であることへの恥ずかしさ」だったんです。
「うわ、うちら全裸じゃん! 恥ずかしっ!」
ってなって、慌ててイチジクの葉っぱで腰を隠します。
これ、ただの「恥ずかしい」じゃないんですよね。
今まで世界というシステムと完全に一体化して、何の違和感もなく「ただ存在していた」人間が、急に「自分」というものを外側から見てしまったんです。
つまり、人類が初めて自分を「客観的に観測」してしまった瞬間なんです。
で、自分を観測した瞬間、人間はまず何を思ったか。
「やばい、隠さなきゃ」だったんですよ。
……人類、初手から自己肯定感が低い。
「ありのままの自分」を認識した結果、最初に出た感情が「拒絶」と「隠蔽」だったっていうのが、このドキュメンタリーの切ないところです。
神様の問いかけ、人類のレスバ
そこに、神様が園を散歩しにやってきます。
「アダムー、どこにいるのー?」
二人はビビり散らかして、茂みに隠れます。
神様は全知全能なので、当然わかってるんですけど、あえて聞くわけです。
「どこにいるの?」って。
これ、単なる位置確認じゃないんですよ。
神様、いきなり削除コマンドを叩き込むんじゃなくて、まず対話を試みてるんですよね。人間に自分の口で現状を説明させようとする、神様なりの「最後のチャンス」というか、歩み寄りなんです。
なのに、返ってきたのはこれです。
アダム「いや、あの、あなたが隣に置いてくれたこの女が、私に実をくれたんです!」
エバ「いや、ヘビが私を騙したんです!」
責任転嫁のダブルコンボ。しかもアダムさん、さりげなく「あなたが隣に置いたから」って神様のせいにもしてますからね。
神様、たぶんこの時点でだいぶ遠い目をしてたと思います。「あー、対話フェーズ終了だなこれ……」って。
楽園追放――それは「隔離」という名の保護
神様はここで、冷徹に「補正処理」を実行します。
ヘビには「一生お腹で這いつくばってろ」っていうデバフを。エバさんには「産みの苦しみ」を。アダムさんには「一生汗水垂らして働かないと食べていけない」というハードモード設定を付与しました。
そして二人は、エデンの園を追い出されます。いわゆる「楽園追放」です。
入り口には、二度と戻ってこれないように、炎を振り回す剣を持った天使が配置されました。セキュリティ強固すぎ。
ただ、これって単純な追放処分だけでもないんですよ。
エデンの園には「命の木」っていうのもありました。このまま人間がそれを食べたらどうなるか。
「善悪を知ってしまった(バグを抱えた)状態」のまま、永遠に固定される可能性があるんです。
それはそれで地獄です。セーブデータが壊れたまま、一生上書きできないようなものです。
だから神様は、楽園から人類を切り離した。
これ以上のシステム崩壊を防ぐための「隔離処理」でもあったわけです。……旧約聖書、初回から補正が重い。
こうして、人類は「神様と直接おしゃべりできるヌルゲー設定」から、
「過酷な現実の中で、神様の顔色を窺いながら、意味と契約を更新していく無理ゲー」へと放り出されたわけです。
でもね、突き放したはずなのに、神様、ずっと人類のこと見てるんです。
「あいつら、また変なことしてるな……」「あ、そんなことしたら死ぬぞ!」「しょうがないな、ちょっと助けてやるか」
この、突き放したいけど放っておけない、神様の歪んだ愛の形が、これから延々と続いていきます。
さて、楽園を追い出された人類。
次に待っているのは、人類史上初の「兄弟喧嘩」です。
それも、ただの喧嘩じゃ済みません。
次回、第2話。
「カインとアベル、人類初の身内揉め。」
お楽しみに。……いやー、いきなり前途多難ですね、人類。




