第38話:エステル、命がけの直訴。〜絶体絶命の逆転劇〜
えー、みなさんこんにちは。春日部つむぎです。
前回、エルサレムに帰った人たちが泥臭く国を建て直す姿を見ました。
でも、すべてのユダヤ人が帰ったわけではありません。巨大なペルシア帝国のあちこちに、まだたくさんの人々が暮らしていました。
そんな中、帝国の中心であるスサの王宮で、とんでもない「絶滅計画」が持ち上がります。
今回の主人公は、ひょんなことからペルシアの王妃に選ばれた美しい女性、エステルさんです。
それでは、第38話「エステル、命がけの直訴。」いってみましょう。
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最悪の悪役ハマンと、嫌がらせの法律
当時のペルシア王の側近に、ハマンというめちゃくちゃプライドの高い男がいました。
彼はみんなが自分にひれ伏さないと気が済まない性格でしたが、エステルさんの育ての親であるモルデカイくんだけは、神様以外には跪かないという信念を持っていました。
これにブチギレたハマンは、こう考えました。
「モルデカイ一人を殺しても気が済まない。あいつの民族(ユダヤ人)を、帝国全土から一人残らず消してやる!」
ハマンは王様を口車に乗せ、「ある日突然、ユダヤ人を全員攻撃して、その財産を奪っていい」という恐ろしい法律を作らせてしまったんです。決行の日は「くじ(プル)」で決められました。
「私が死ぬことになっても、行きます」
この危機を知ったモルデカイくんは、王宮にいるエステルさんにメッセージを送ります。
「今、君が王妃の座にいるのは、まさにこの時のためかもしれないよ。君が黙っていたら、助けは別のところから来るだろうけど、君と君の家族は滅びるだろう」
当時のペルシアには、厳しいルールがありました。「王様に呼ばれていないのに勝手に会いに行ったら、即死刑」というものです。もし王様が金の杖を差し出さなければ、たとえ王妃でも命はありません。
エステルさんは覚悟を決めました。
「三日間、みんなで断食して祈ってください。……死ぬ必要があるのなら、私は死にます」
宴会と、ブーメランのような結末
三日後、エステルさんは命がけで王様の前に立ちました。
幸い、王様は彼女を見て杖を差し出し、「何が望みだ? 国の半分でもあげよう!」とデレデレ。エステルさんはそこで願いを言わず、「王様とハマンさんを、私の宴会に招待したいんです」と誘いました。
宴会の席で、ついにエステルさんは真実を告げます。
「王様、私と私の民族が殺されようとしています。犯人は、そこにいる悪者ハマンです!」
驚いた王様は大激怒。ハマンは、自分がモルデカイを処刑するために用意していた高い柱に、自分自身が吊るされることになりました。まさに「人を呪わば穴二つ」、完璧なブーメランです。
補正の結末:悲しみが喜びに変わる日
法律は一度決まると変えられないのがペルシアのルールでしたが、王様は新しく「ユダヤ人は自分たちを守るために戦っていい」という法律を追加しました。
こうして、民族全滅の日は、逆にユダヤ人が勝利する日へと変わったんです。
この大逆転を記念して始まったのが「プル(くじ)」にちなんだ「プリムの祭」です。
この物語の面白いところは、実は聖書の中で唯一「神様」という言葉が一度も出てこないこと。
でも、読み進めていくと、絶妙なタイミングで王様が眠れなくなったり、偶然が重なったり……。まるで神様が指先でチェスを動かしているような、不思議な「必然性」に満ちているんです。
さて。
民族の危機を救ったエステルさんの華やかなドラマの裏で、旧約聖書はもう一つの「問い」を私たちに投げかけてきます。
「もし、何も悪いことをしていないのに、すべてを失ったらどうする?」
次回、第39話。
「ヨブの忍耐。〜なぜ正しい人が苦しむのか?〜」
お楽しみに。……次は、ある日突然、財産も子供も健康も失った一人の男が、神様に対して「なんでだよ!」と叫び、答えを探し求めるディープなお話です。




