第26話:ダビデ、王様に追われながらも手を出さない。〜絶好のチャンスをスルー〜
えー、みなさんこんにちは。春日部つむぎです。
前回、サウル王の猛烈な嫉妬から逃れるため、着の身着のままで宮廷を飛び出したダビデくん。
彼は荒野の洞窟に隠れ住み、行き場をなくした荒くれ者たちをまとめながら、なんとか生き延びていました。
一方のサウル王は、国を守る仕事そっちのけで、3,000人ものエリート部隊を率いてダビデくんを執拗に追い回します。
そんな中、歴史が動く「奇跡のシチュエーション」が発生しました。
それでは、第26話「ダビデ、王様に追われながらも手を出さない。」いってみましょう。
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洞窟の中の「無防備な背中」
ある日のこと。ダビデを追っていたサウル王は、「用を足すために」近くの大きな洞窟に一人で入っていきました。
ところが、その洞窟の奥深くには、なんとダビデくんと部下たちが息を潜めて隠れていたんです!
暗闇に目が慣れていないサウル王は、すぐ近くにダビデたちがいることに全く気づきません。
ダビデくんの部下たちは、色めき立って小声でささやきました。
「ダビデさん、見てください! 神様がくれた最高のチャンスですよ! 今あいつを仕留めれば、逃亡生活は終わり。あなたが今すぐ王様になれます!」
たしかに、これ以上ないチャンスです。サウルは丸腰で、しかも完全に無防備な状態。反撃される心配もありません。ダビデくんは、ゆっくりと剣を抜いてサウルに近づいていきました。
剣で切ったのは「服の端」だけ
生唾を飲み込んで見守る部下たちの前で、ダビデくんが剣を振り下ろしました。
……ところが、彼が切り取ったのはサウル王の命ではなく、彼が着ていた上着の裾だけだったんです。
ダビデくんは、サウルが洞窟を出て行ったあと、胸を痛めてこう言いました。
「私はなんてことをしてしまったんだ。あの方は、神様が選んで立てた王様だ。その方の服を切るなんて、神様に申し訳ないことをした」
部下たちはポカンです。「いやいや、あいつはあなたの命を狙ってるんですよ?」
でも、ダビデくんは譲りませんでした。
「相手がどれほど狂っていても、神様が立てたリーダーを自分の手で裁いてはいけない。それは神様の仕事だ」
ダビデくんは、自分の「正義」や「恨み」よりも、神様の「秩序」を優先したんです。これこそが、サウルが失ってしまった「神様への信頼」の形でした。
崖の上の「証拠物件」
洞窟を出て少し歩いたサウル王の後ろから、ダビデくんが声をかけました。
「王様、見てください!」
サウル王が振り返ると、そこには自分の上着の切れ端を掲げたダビデくんが立っていました。
「私はあなたを殺そうと思えば、今さっき洞窟の中で殺せました。でも、私は手を出しませんでした。あなたが何を信じようと、私に裏切りの心がないことだけは、この布切れが証明しています!」
これを見たサウル王は、衝撃を受けました。
自分は殺意を持って追いかけているのに、相手は自分の命を救ってくれた。王としてのプライドよりも、ダビデの「正しさ」の方がはるかに大きく見えてしまった瞬間でした。サウル王は泣きながら言いました。
「ダビデ、お前の方が正しい……。お前がいつか王になることは分かっている。その時は、私の家族を守ってくれ」
サウル王は一度は兵を引きました。圧倒的な「器」の差を突きつけられた格好です。
補正の結末:届かなかった心の平安
これでハッピーエンド……となれば良かったのですが、サウル王の心の闇はそう簡単には消えませんでした。
しばらくすると、彼はまた不安に負け、再びダビデくんを追い始めます。
どれだけ「信頼」を見せつけられても、自分の中に確信がない人は、結局また疑いのループに戻ってしまうんです。
一方、ダビデくんはこの一件で、部下たちからも、そして神様からも「次なる王」としての確かな信頼を勝ち取っていきました。
さて。
追いかけっこの果てに、サウル王の時代はあまりにも悲劇的な結末を迎えます。
そして、ついにダビデくんが王座に座る日がやってくるのですが……。
次回、第27話。
「サウル王の最期、そしてダビデの即位。〜悲しみのあとに来る夜明け〜」
お楽しみに。……次は、一人の王の終わりと、新しい時代の始まりが交差する、涙の世代交代のお話です。




