第19話:黄金の子牛事件。〜せっかくの石板が粉々に〜
えー、みなさんこんにちは。春日部つむぎです。
前回、モーセさんは雲に包まれたシナイ山の頂上で、神様から直接「十戒」を授かりました。それは、力による支配ではなく「言葉による約束」で生きるという、新しい民へのパスポートでした。
ところが、山の上で神様とモーセさんが熱い契約を交わしているその裏で、麓のキャンプ地では、人類史上最速レベルの「裏切り」が進行していました。
神様はブチギレ、モーセさんは絶望。
それでは、第19話「黄金の子牛事件。」いってみましょう。
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不安が招いた「きらびやかな偶像」
モーセさんが山に登ってから、すでに1ヶ月以上。
麓に残された民たちは、次第にソワソワし始めます。
「モーセ、遅くない?」「あの雷の中だぜ、もう黒焦げになってるよ」「導いてくれるリーダーがいないと、この先どうすりゃいいんだよ!」
不安に耐えきれなくなった彼らは、モーセさんの留守を預かっていたアロンさんに詰め寄りました。「俺たちの先頭に立ってくれる『神様』を作ってくれ!」
アロンさんも、民の勢いに負けてしまいます。「……わかった。じゃあ、みんなが持ってる金の耳輪を全部持ってきなさい」
集まった金を溶かして型に流し込み、出来上がったのは一頭の「黄金の子牛」でした。
民は大喜びです。「これだ! これこそが、俺たちをエジプトから救い出した神様だ!」
……つい数ヶ月前、海が割れるのを見たはずなのに。数日前、「偶像を作るな」という神様の声を聞いたはずなのに。彼らは目に見える「金ピカの牛」に、あっさりと心を預けてしまったんです。
山の上の「緊急事態宣言」
その頃、山頂では神様がモーセさんに告げました。
「すぐに山を下りなさい。お前がエジプトから連れ出した民が、とんでもないやらかしをしている。私が命じた道を、もう踏み外してしまった」
神様はあまりの怒りに、「あいつら全員、ここで滅ぼしてしまおう。その代わり、モーセ、お前から新しい大きな国民を作ってやろう」とまで言いました。
これ、モーセさんからすれば「選ばれし者」になれるチャンスです。でも、モーセさんは必死に神様をなだめました。
「神様、そんなことをしたらエジプト人が『あの神は殺すために連れ出したんだ』と笑いますよ! どうか、昔の約束を思い出して、怒りを収めてください!」
モーセさんの必死の説得で、神様は、民をすべて滅ぼすことだけは思いとどまりました。
粉々の石板と、アロンさんの「雑な言い訳」
モーセさんが二枚の石板を抱えて山を下りると、聞こえてきたのは歌と踊りの狂乱。黄金の牛を囲んで、お祭り騒ぎをしている民の姿でした。
これを見た瞬間、あれだけ神様をなだめていたモーセさんの理性が、ついに弾け飛びました。
「お前ら、何やってんだーー!!!」
あまりの怒りに、神様が指で刻んでくれたはずの「十戒」の石板を、地面に叩きつけて粉々に砕いてしまいました。せっかくの契約書が、一瞬でガラクタです。
さらにモーセさんは、責任者のアロンさんを問い詰めます。
するとアロンさん、「いやぁ、みんなから集めた金を火に投げ入れたら、この子牛が『出てきた』んですよ」……なんて、かなり無理のある言い訳をしました。
そんな自然発生するわけないだろ! ってツッコミたくなりますが、人間、追い詰められると言い訳まで雑になるものなんですね。
補正の結末:まずすぎる反省の味
モーセさんは黄金の牛を火で焼き、粉々にすり潰して水に混ぜ、それを民たちに「飲め!」と強制しました。
自分たちが神様だと思って拝んだ金ピカの偶像が、ただの「まずい粉」になって自分の体を通っていく。あまりにも苦い、反省の味です。
この事件で、イスラエルの民は深い傷を負いました。神様も「もう、お前たちとは一緒に行かない」と、距離を置こうとします。
でもモーセさんは、ここでも粘りました。
「神様が一緒に行ってくれないなら、どこへも行きません! 私たちを、あなたの特別な民として認めてください!」
モーセさんの、民を見捨てない執念。それを見て、神様はもう一度だけチャンスをくれることにしました。
さて。
ボロボロになりながらも、契約の「書き直し」が始まります。
でも、一度裏切った彼らが、広大な荒野を最後まで歩き抜くのは、並大抵のことではありませんでした。
次回、第20話。
「荒野で40年、文句と奇跡の長期旅。〜なぜ最短ルートで行けないのか〜」
お楽しみに。……次は、反省したはずなのにまた文句が出る、出口の見えない砂漠の「やり直し」の40年のお話です。




