第18話:モーセ、山にこもって石板をもらってくる。〜十戒〜
えー、みなさんこんにちは。春日部つむぎです。
前回、荒野で空から降ってくるパン「マナ」をもらって、なんとかその日暮らしの空腹を満たしたイスラエルの民。彼らはエジプトを出てから三ヶ月目、ついに「シナイ山」という巨大な岩山の麓にたどり着きました。
今まで、海を割ったり、空から食べ物を降らせたりして、圧倒的な「力」で自分たちを守ってくれた神様。
その神様が、いよいよ民に対して「これから私とどう付き合っていくか」という、人類史上最大と言ってもいい「ガチの契約」を提示します。
自由には、責任とルールがセットでついてくる。
それでは、第18話「モーセ、山にこもって石板をもらってくる。」いってみましょう。
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地響きとカミナリに包まれた「面会室」
神様がシナイ山の頂上に降りてきたとき、そこはもう、この世のものとは思えない光景になりました。
山全体が激しく揺れ動き、濃い雲が山頂を覆い隠し、煙が火のように立ち上ります。さらには聞いたこともないような大きな角笛の音が鳴り響き、雷鳴と稲妻が絶え間なく空を切り裂きました。
麓でその様子を見ていた民たちは、あまりの恐怖にガタガタと震え上がります。
「神様が直接話しかけてきたら、私たちの心臓が止まってしまう! モーセさん、お願いだからあなたが間に入って聞いてきてください!」
こうして、リーダーであるモーセさんは一人、雲の中に消えていきました。
彼はそこで、なんと40日間、飲まず食わずで神様と向き合い続けます。ただの山登りじゃありません。これは、人間が神様の「意思」を受け取るための、命がけの孤独な時間でした。
神様と民を結ぶ「十の言葉」
神様がモーセさんに授けたもの、それが有名な「十戒」です。
これは、ただ「あれをするな」「これをするな」と縛るための命令ではありません。
430年もの間、誰かの「所有物」として、自分の命も権利もなかった元奴隷たちが、自由な人間としてお互いを尊重し、幸せに暮らしていくためのガイドラインなんです。
前半のルールは、神様との付き合い方。
「私のほかに、別の神がいてはならない」「偶像(身勝手な神の形)を作ってはならない」「神の名をみだりに唱えてはならない」。
これは、「自分を救ってくれた相手を、ちゃんと特別に扱い、誠実に向き合いなさい」という、愛と信頼の約束です。
そして後半のルールは、人間同士の付き合い方。
「父と母を敬え」「殺してはならない」「盗んではならない」「偽りの証言をしてはならない」。
どれも当たり前のことに聞こえるかもしれません。でも、弱肉強食が当たり前だった古代の世界で、他人の命や尊厳、そして真実を「絶対に守るべきもの」として、神様の名において定義した。これは、人類の文明にとって革命的な瞬間だったんです。
石に刻まれた「消えない言葉」
神様はこれらの言葉を、ご自身の指で、二枚の石の板に刻み込んでモーセさんに手渡しました。
紙に書くのでも、誰かの記憶に頼るのでもなく、あえて「石」に刻む。
それは、「この約束は時代が変わっても絶対に変わらないし、消えることもない」という、神様の断固たる意志の表れです。
この石板が手渡された瞬間、彼らはただの「逃亡者の集団」から、神様と契約を交わした「一つの国、一つの民」へと格上げされました。
「力で支配される奴隷」を卒業し、自分の意志でこのルールを守り、神様と共に歩む「パートナー」へと進化したわけです。
補正の結末:山の麓では、まさかの大炎上
ところが。モーセさんが山の上で神様とそんな熱い時間を過ごしている間、麓では大変なことが起きていました。
40日という時間は、民たちにとっては長すぎたんです。
「モーセが帰ってこない! 雲の中で死んだんじゃないか?」
「俺たちを導いてくれる『目に見える何か』がなきゃ、怖くて一歩も動けないよ!」
不安に耐えきれなくなった民たちは、あろうことか、自分たちの持っていた金の耳輪をかき集め、それを溶かして「黄金の牛の子」の像を作り、「これこそが、俺たちを救った神様だ!」と拝んで、バカ騒ぎを始めてしまったんです。
せっかく神様が「目に見えない言葉による信頼」を教えようとしていたのに、彼らはまた「目に見える偶像」にすがる古い習慣に逃げ込んでしまいました。
二枚の石板を大切に抱えて山を下りてきたモーセさんは、この光景を見てブチギレます。
「お前ら、たった40日で神様を裏切るのかーー!!」
さて。
あまりの怒りに、モーセさんはせっかくの石板を地面に叩きつけて、粉々に砕いてしまいます。
神様との契約、いきなり破棄の危機!?
次回、第19話。
「黄金の子牛事件。〜せっかくの石板が粉々に〜」
お楽しみに。……次は、リーダー不在の不安が招いた、旧約聖書最大の「裏切り」と「大喧嘩」のお話です。




