第16話:紅海、真っ二つに割れる。〜自由への一本道〜
えー、みなさんこんにちは。春日部つむぎです。
前回、エジプト中の長男の命が失われるという、あまりにも重い「第10の災い」を経て、イスラエルの民はようやく奴隷生活から解放されました。
430年ぶりの自由。背中には荷物を、腕には子供を抱え、彼らは夜明け前のエジプトを堂々と脱出したわけですが……。
本当の試練は、ここからでした。
目の前には巨大な海、後ろには怒り狂う最強軍団。
海は、過去と未来を分ける境界線だった。
それでは、第16話「紅海、真っ二つに割れる。」いってみましょう。
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絶体絶命の行き止まり
エジプトを出たイスラエルの民でしたが、すぐに絶望的な状況に追い込まれます。
目の前に現れたのは、深く、冷たい「紅海」という海。そして後ろからは、一度は行かせたものの、すぐに後悔した王様が、最強の戦車600台と軍勢を率いて猛スピードで迫ってきました。
民はパニックになります。
「おいモーセ! エジプトには墓がないから、俺たちをここで死なせるために連れてきたのか!? 奴隷のままの方がまだマシだったよ!」
さっきまで自由を喜んでいた人たちが、恐怖で一瞬にして「奴隷の心」に戻ってしまいました。
でも、モーセさんは動じませんでした。
「恐れてはいけません。じっとして、今日、神様があなたがたを救うために行われることを見なさい」
杖を上げろ、海を裂け
その時、神様がモーセさんに言いました。
「なぜ、私に向かって叫ぶのか。人々に『出発せよ』と言いなさい。お前は杖を高く上げ、手を海の上に差し伸べて、海を分けなさい」
モーセさんが、あの羊飼いの杖を海に向かって高く掲げました。
その瞬間。
一晩中、激しい東風が吹き荒れ、なんと海が真っ二つに割れたんです。
右と左に、巨大な「水の壁」ができあがり、その間には乾いた道が現れました。
それは、単なる逃げ道ではありません。戻るための道でもありません。
かつて奴隷だった民が、二度と過去に縛られない自由へと進むために開かれた、たった一人の「一本道」でした。
大勢の民が、息を呑みながら、その海の底にできた道を歩いて渡り始めました。
追撃の終焉と、本当の決別
イスラエルの民が全員渡り切ろうとする頃、後ろから追ってきたエジプト軍も、その「海の道」に突っ込んできました。
「あいつらが渡れるなら、俺たちも渡れるはずだ!」
ところが、民が向こう岸にたどり着いた時、神様がモーセさんに再び言いました。
「手を海の上に差し伸べなさい。水が元に戻るように」
モーセさんが手を伸ばすと、天高くそびえ立っていた水の壁が、一気に崩れ落ちました。最強を誇ったエジプトの軍勢は、逃げる間もなく巨大な渦の中に飲み込まれていきました。
さっきまで自分たちを縛り付けていた「また奴隷に戻されるかもしれない」という過去の恐怖が、物理的にも精神的にも、跡形もなく消え去った瞬間です。
補正の結末:海を渡り、新しい自分たちへ
海を渡りきり、静かになった対岸に立ったとき、民は初めて自分たちが「本当に自由になった」ことを実感しました。モーセさんのお姉さん、ミリアムたちは楽器を手に取り、踊り、神様を讃える歌を歌いました。
この「海を渡る」という出来事は、彼らにとって、古い奴隷としての自分たちを洗い流し、新しい「一つの民」として歩み出すための、大きな境界線になったわけです。
さて。
こうして最強の敵を振り切った彼らですが、自由の先にあるのは、見渡す限りの「荒野」でした。
飲み水はない。食べ物もない。
自由の喜びは、すぐにお腹の空き具合にかき消されてしまいます。
次回、第17話。
「空からパンが降ってくる。〜マナとウズラの奇跡〜」
お楽しみに。……次は、毎朝地面に落ちている謎の食べ物と、文句ばかり言う民をなだめるモーセさんの苦労話です。




