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一流企業を辞めた俺は、新しいアルバイト先の年下先輩に恋をする。 〜第二の人生…今度は君が好きだと伝えるよ〜  作者: 夢達磨
第1章 新しい人生編

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第3話 中央総合都市


 地図を見て、この世界のことが少しだけ分かった。

 ここは中央に位置する巨大な大陸――『中央総合都市』。

 この大陸を中心に、四方へ伸びる列島があり、それぞれを“グループ”が国家のように統治している。


 東には東郷グループ。

 西には西虎グループ。

 南には南武グループ。

 北には北浜グループ。


 それぞれが島を領土として持ち、そこに都市を築き、事業を展開しているらしい。


 そんな中、俺たちは今、その中央総合都市にある大手銀行に来ている。

 目的はただ一つ――この世界で“円”が換金できるかどうか。


 できなかったら……うん、詰む。


「さて、あまり大人数で向かうのは他のお客様の迷惑になりますので、少人数で行きましょうか」


「お金に汚い牙城君は確定として、あと誰行く?」


「そんなことありませんけど!?」


 時末さんが、いつものように根拠のないことを言い始めた。

 俺、お金に汚いなんて一度も言われたことねぇぞ?


 適当に流していると、希羅が元気よく手を挙げる。


「はーい! 私も行くー!」


「なら、二人で行くか?」


「うん!」


「「行ってらっしゃーい」」


 こうして、俺と希羅は銀行の中へ入った。


 “都市”と呼ばれるだけあって、内装もめちゃくちゃ綺麗だ。

 数が多い窓口がテキパキ回転し、気がつけば俺たちの番が来ていた。


「すみません、少しお聞きしたいことがあるのですが」


「はい。なんでしょう?」


「こちらで、『円』は下ろせますか?」


 窓口のお姉さんは営業スマイルを崩さず答えた。


「現在、『円』の取引はありませんので、お引き出しはできません」


 ふむ……“現在”の取引はない?

 つまり 昔は使えた可能性があるわけだ。


 そして、“下ろせない”という言い方。

 取り扱い履歴はある=換金ワンチャンってことだろ。


「では、円をGゴルドに換金することはできますか?」


「はい、可能ですよ。ただし換金レートは円の10分の1になります」


 ──勝った。


 今は価値がどうであれ、使える金が手に入るなら十分だ。


「希羅。換金できることを、みんなに伝えてきてくれないか?」


「うん! 分かった! 呼んでくるね!」


「頼んだ」


 希羅は笑顔で銀行を飛び出していった。


(……悪いな。俺にも事情がある)


 俺はお姉さんに、100万Gの換金を依頼した。

 とりあえずこれくらいあればしばらく生きていけるだろう。物価は知らんけど。


「ありがとうございました」


「お客様。恐れ入りますが……大量の円は、どうやって?」


 まあ、聞かれるよな。

 今は使われていない通貨を持ち込んだんだから。


「あー。昔、円だった頃に友人と株をやってまして。運よく儲かったんですよ」


「なるほど。懐かしいですねぇ。ゴルドになる前は良かったのに。総合の社長が交代して、時代が変わってしまいました」


「社長が交代してからなんですね。知りませんでした」


 貼り紙で“株”が存在しているのは確認済みだったので、それっぽく答える。

 お姉さんの言うことが真実か分からない以上、適度に“知らない”スタンスを取るのが無難だ。


 財布にGをしまい終えたころ、みんなが戻ってきた。

 ギリギリ見られずに済んだ……。


「牙城さんはもう換金されたんですか?」


「はい。終わりましたので後ろで待ってます」


 音梨さんに返し、ロビーの椅子へ座る。


 10分ほどで全員の換金が終わった。

 次は、いよいよ“住む場所探し”だ。


「お部屋探しですねぇ〜。楽しみですぅ〜」


「ですねー! 一人暮らし憧れてたからワクワクします!」


 柊さんは今日もマイペース。

 真会さんは一人暮らし経験なかったのか。やけにしっかりしてるから意外だ。


「牙城君は野宿やろ?」


「はいはい、そうですねー。行きますよー」


 軽口を流しつつ歩き始めた、そのとき。


「お腹が空いたのぉ」


「今の牙城さんの言い方、おじいちゃんみたーい」


「え? 僕じゃないですよ?」


 声のした方を見ると、見知らぬ男性と時末さんが一緒に歩いていた。


「時末さん、その方は?」


「えー。分からんのー? 私はすぐに分かったよー」


「俺が分からんのかぁ。悲しいのぉ」


 爽やかイケメンなのに喋り方だけおじさん。完全に情報がバグってる。


 時末さんが小声で告げた。


「三島リーダーよ」


「「「えぇぇーーっ!?!」」」


「あらー」


 驚きすぎて声が裏返った。

 三島リーダーといえば、六十歳越えの大ベテラン。

 ワガママ支配人に唯一対抗できる男。


 なのに……爽やかイケメンになってる。

 しかも、喋り方はおじさんのままという地獄のギャップ。


(……腹、減ったな)


「では、先に食事に行きますか! お金も手に入りましたし!」


「「「賛成ーー!!!」」」


 すぐ近くのレストランでこの世界の初のご飯をいただいた。


 俺はハンバーグを注文。

 肉汁とデミグラスが絶妙で、普通にうまい。

 産地は知らないけど、今後調べる必要があるな。


 腹も満たされた。

 いよいよ、お待ちかねの物件探しだ。


(どんな部屋に住むことになるんだろうな)


 胸の奥が、ほんの少しワクワクした。

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