第2話 クラスメイト
「私がこのクラスの担任になった星咲明里だ。よろしく頼む。では早速だが出席を取る。名前を呼ばれたら返事をして、その後に自己紹介をしろ」
先ほど入ってきた髪の毛ボサボサの女性が、どうやら担任らしい。高い位置でポニーテールをしているが、それでも処理しきれないほど長く、ボサついている。目つきは鋭く、せっかくの美人が台無しだ。
星咲先生は、淡々と名簿を読み上げていく。
「牙城鐵星」
名前を呼ばれて立ち上がる。
「えー、牙城鐵星です。久しぶりの学校生活を楽しく過ごせたらなーと思います。よろしくー!」
「久しぶりって、この前まで中学生だったろー」
誰かのツッコミに、クラスの笑いが起きた。
……そうだった。普通はそう思うよな。中身は26歳なんだけどな。仕方ない。
「東郷宝輝」
東郷宝輝? ああ、新入生代表のあの子か。同じクラスだったのか。優秀なんだろうし、行事でも頼りになりそうだ。俺の斜め右が東郷さん、右隣は時末さんだな。
「はい。――私は東郷宝輝。みんな知ってると思うが、東郷グループ社長の娘だ。私は生まれた時から背負うものが違う。はっきり言っておく。私は下々などと群れるつもりはない! 以上」
社長令嬢……! 最初は頼もしいと思ったけど、思った以上にクセが強いな。……まあ、言動だけで判断するのもよくないか。
全員の自己紹介が終わると、先生はプリントを配り始めた。
「今からお前らの実力を測るため、小テストを行う。制限時間は20分。始め!」
一斉にプリントを表に返す。
……おん?
小学生〜中学生レベルじゃないか。小テストだから簡単なのか、この世界のレベルが低めなのか。
100点を取って「頭いい!」とアピールするチャンス――
……いや待て。転生者だとバレたらまずいかも。
最後の問題は俺には簡単でも、この世界の住人には難しい可能性がある。全問正解して目立つのは良くないか……?
――と悩んだものの。
結局、全部解いてしまった。
仕方ない、実力を測るって言われたら手を抜くわけにもいかない。
テストが終わったあと、番号順に並ばされ、学校案内が始まった。
基本構造は普通の学校だが、校舎裏にある“ショップエリア”には圧倒された。そこでは休み時間に買い物ができ、放課後はアルバイトも可能らしい。
さらに学生証を渡された。顔写真・名前・IDが記されており……現実でいうマイナンバーのようなものだ。
施設は充実し、校内設備も豪華。金のかけ方が段違いだ。退屈はしなさそうだ。
案内が終わり、教室へ戻ると先生が口を開く。
「明日は委員会決めと健康診断がある。各自、体操服を持ってくるように」
「ねぇ、牙城君。委員会って何やったっけ?」
時末さんがこっそり聞いてくる。
「図書委員とか体育委員とか、そういうやつですよ」
「あー、あれな。思い出したわ。牙城君はハーレム委員になるん?」
「んなもん、あるかーーっ!! ――あだっ!」
ツッコんだ瞬間、何かが額にヒットした。
「いった……チョーク?」
「おいそこ、静かにしろ」
どうやら星咲先生の投球だった。
「あっははー。すみませんっ!」
周囲から笑いが起こる。
……俺、真面目キャラで行くつもりだったんだが、時末さんがいると無理だな。この人の前だとどうしてもふざけキャラになる。でも、意外と青春っぽくて悪くないかもしれない。
とりあえず、これでいくか。
「今日はこれで終わりだ。13時になったら帰っていい。それまでなら質問を受け付ける」
終わった……。今は12時48分。あと少しだ。
――しかし俺、体操服持ってないし、そもそも帰る家がない。
「はい!」
「何だ」
(馬波ってやつだったな。何を聞くんだ……?)
「先生に彼氏はいますか!」
「お前、後で職員室にこい」
即答だった。
「馬波いいなぁ! 俺ちゃんも行きてぇ!」
今度は島瀬という男が叫ぶ。
「なら、お前も職員室にこい」
「よっしゃー!」
「島瀬良かったやん!」
二人は昔からの知り合いらしい。……変な二人組だ。絡まれないようにしよう。
13時になり、生徒たちは帰っていく。
転生組の俺たちは円を作るように座り、作戦会議を始めた。
真会さんが不安げに口を開く。
「わたしたち、これからどうなるのでしょうか?」
いつも笑顔の真会さんがこんな表情をするのは、胸が痛む。なんとかしないと。
「では、一旦整理しましょう」
俺は現状をまとめて話す。
あの時、俺たちは職場で災害に遭い死亡。
そしてこの世界に転生し、四方総合中央高等学校という謎の学校へ入学したこと。
みんなはまだ受け止めきれていないようだ。
まあ、当然だ。不思議だらけなんだから。
俺はすでに、この状況を受け入れつつある。今までできなかったことを第二の人生を楽しむつもりだ。
……生徒会長がお金を最重要と言っていたのだけは気になるが。
「そういえば、カバンの中身見ました? 私、通帳とか財布とか、そのまま入ってたんですが……この世界で使えるんですかね?」
音梨さんが言い、皆がカバンを調べ始めた。
俺はテスト後に確認済みだ。
中身は――財布、通帳、ケータイ。
だが学校案内のとき店員が使っていた貨幣は、現実とは違っていた。
つまり『円』は使えない可能性が高い。
『円』を換金できれば、通帳の金でしばらく暮らせるんだが……。
ケータイはずっと圏外。日付は4月8日表示のまま。
買い直すしかないか。
俺は、
・現実のお金は換金可能か銀行に確認
・ケータイは圏外なので新しく買う必要がある
と説明した。
連絡手段もないので、俺たちはしばらく行動を共にすることに。
まずは銀行で『円』の換金ができるか確認し、そのあと物件探しだ。




