事情聴取
俺たちの乗ったタイムディスクが着陸許可を求めた時には、タイムキープ社は設立以来のパニック状態だったそうだ。
ヒューマン社とタイムキープ社は、この地下世界で全く異なった役目を持ちながら成長していったのだが、2055年以降のタイムパトロール禁止という奇妙なルールが作られてから、どこかギクシャクした間柄だったのだ。
そんな、ヒューマン社が……、しかもタイムディスクでタイムキープ社に乗り込んできたのだから。しかも乗っていたのはタイムキーパー……。ある意味伝説を作ったかもしれない。
俺たちは、着陸後すぐに事情聴取といった形で、別々の取り調べ室にて数時間拘束され、詳しく話を聞かれた。これは、俺たちが考えていたシナリオにはない事だったが、正式に上部へ報告ができる機会が与えられたラッキーな状況だった。
俺は、一人取調室に入れられ、上司であるオズワルドに色々と事情を聞かれた。
「あのタイムディスクはどうしたんだ?」
オズワルドは、まだ状況が理解できない様子で聞いてきた。
「あれはヒューマン社のタイムディスクなんですが、1947年で発見したんです。そこ多くの人々を誘拐していたんです。だから、逮捕しようとしたら、誰も乗ってなくて……」
興奮して、どの順番で話していいのか分からなくなっていた。
「確かに、あのタイムディスクは時空を超えて戻ってきたことは、こっちの調べでも分かったが、何か証拠になるようなものはないのか?」
オズワルドにそう聞かれて思い出した
「輸送機をアルという大型機が飲み込む瞬間はレコーダーで撮ってあります!しかも、その犯行は2回……」
こう言いかけて、自分の乗っていたタイムディスクは、爆破され1947年に残されているという重大な事実を思い出した。
「俺たちのタイムディスクは19474年で爆破されてしまって、過去に残ったままなんです。」
正直にいうと、過去にタイムディスクを残してきたことより、誘拐の犯行現場を記録したレコーダーを残してきたことの方が、俺には重要だった。
「なに? タイムディスクが過去に残ってるだって?」
オズワルトはそう言うと、すぐに電話で回収の為の作戦を練るよう指示をして、事情聴取に戻った。
俺は、アルと呼ばれる大きなマシンで輸送機を誘拐し、海底や山脈に廃棄している事実や、AIによって完全に自動化されたヒューマン社のタイムディスクが過去で大勢の人類を誘拐していること。その体が寿命を迎えた人間の脳移植に使われている可能性があり、実際に父の頭髪の放射線炭素計測結果の話もした。
俺は、こんな奇想天外な話をしてしまえば、オズワルトに頭がおかしくなってしまったのではないかと疑われると思っていた。
「……」
オズワルトは無言で俺の顔を凝視している。
「やっぱり…… こんな話を突然しても……」
信じてもらえないのは最初から分かっていたのに、悔しくてオズワルドを見ることができなかった。
沈黙の時間がどれぐらい続いただろうか、廊下から行き来する足音や、何を言っているのか聞き取れない会話を声、そしてオズワルトの深い溜息が何度も部屋に響いていた。
「はぁー ユウマ。お前たちもヒューマン社の行動を怪しいと思っていたのか……」
何度目かの溜息の後の、オズワルトの言葉に一瞬耳を疑った。
「え? どういうことですか?」
俺の反応に、深い溜息をついて続けた。
「実は、我々役員の間でも時々ヒューマン社の動きが話題になることが多かったんだよ。」
オズワルトは机に手をつき、顔を近づけて小声で囁いた。
「さっき、君はヒューマン社の行動をレコーダーに記録してあるといったね」
俺はゆっくりと、そして力強く頷いた。
「では、今からレコーダーの回収作戦に同行してくれないか!」
オズワルトは微笑んだ。




