再起動
メインモニターにはこんな文字が出ている
(35%完了)
おそらく再起動の作業状況のことだろう。機械に詳しくない俺でも直感的に分かっていた。再起動まで残り65%とはいっても、充分な時間なのかはミエコにしか分からない。
そのミエコはといえば、モニターを睨みつけるかと思えば、時々楽しそうな表情の時もある……。きっと状況は悪くないだろうと想像できるが、今はミエコの作業の邪魔にならないように黙っていることにする。
とはいっても、何もせずにミエコの作業を見ているわけにはいかない。
俺はこのタイムディスクに人間が本当にいないのか確認しにいくことにした。
ディスク内は、俺たちが乗ってきたものと変わりがないように思えるのだが、どこを見渡しても乗組員がいたであろう備品や私物的な物が見当たらない。
そして決定的な違いは、乗っていた人間が座るであろうシートが見当たらないのだ
「やっぱり、完全にAI化したタイムディスクなのか? 人間は乗らないのか?」
この俺の独り言に、ミエコが反応する。
「そんな感じね。メインコンピュータに入り込んだけど、私たちのタイムディスクのシステムとは大きく違うの……。」
ミエコは続けた。
「まず、このコンピュータには外部からの操縦履歴が全く残っていないの。つまり、人間はこのコンピュータを操作していないってことなる。少なくとも私たちが目撃していた事件の間はね」
(67%完了)
モニターの数字はゆっくりではあるが100%に近づいている。ミエコにも少しづつ焦りの気配が見えてきた。もちろん、一番焦っているのは、ミエコに作業を任せっきりにしてしまっている俺たちだった。
「ミエコ、どんな様子か教えてもらってもいいか?」
ついに、クルム先輩が口を開いた。俺もハヤトも今まで何度も飲み込んだ言葉だ。
「心配しないで、システムは完全に理解したから、今から操縦を手動に切り替えるところ。再起動まで残り28%でしょ! 多分大丈夫! 任せて」
ミエコの頼もしいく、自信満々の言葉に俺たちは顔を見合わせて、小さく笑った。
このタイムディスクを、手動で操縦できるようになってからの作戦はこうだ。
乗ってきたタイムディスクは、自動追跡照準が起動してあるから、無人でも自動的にこのタイムディスクについてくる。ここは農園だから、長時間ここでの滞在は危険だ。この時代の人間に目撃されないよう、どこか人気のないポイント……そう、さっきマザーが向かったジャマイカのブルー山脈の麓へ行き、現場確認をしてから、2チームに分かれて2118年に戻る。
2118年に戻ってからはこれから考える……。詰が甘いが、今日見てきた2つの輸送機行方不明事件でみたマザーの存在や、今AIに支配されたタイムディスクを目の当たりにした俺たちは、深い迷路に迷い込んだ状態だ。とにかく今やれることをやろう!これが4人を答えだった。
(97%完了)
残り3%になって、少しづつモニター周辺の機器のランプが点灯しはじめる。ミエコの作業も慌ただしくなってきた。
(99%完了)
もし、再起動してAIがまだ意思を持ってフライングディスクを操縦するとしたらと考えると、生きた心地がしなかった。
「よし! 完璧!」
ミエコは額の汗を拭いながら、親指を立てて俺たち3人に微笑んだ。
「よくやった! ありがとう!」
声を合わせて、ミエコをねぎらった。
(100%完了)
タイムディスクの全ての機器は正常に動き出し、ミエコの操作に素直に反応している。どうやら無事にAIとの切り離しに成功し、手動での操作が可能になったのだろう。
「よし、ブルー山脈へ向けて出発!」
さっきまでの緊張の表情が嘘のようなハヤトが言う。
機体はミエコの操縦を素直に受け入れ、ゆっくりと静かに離陸を始めた。




