支配
タイムディスクはニューヨーク州の上空まで来ていた。
「これから、何をするつもりか知らないが……。これ以上犠牲は出したくない」
クルム先輩はじっとタイムディスクを見つめながら呟いた。俺も同じ気持ちだった。
「ちょっと! 速度が落ちたわよ!」
操縦するミエコには速度の微妙な変化も手に取るように分かる。地上を見れば広大な農場が広かっている。
「こちらに気づいてしまったかも! ここで作戦実行する!」
これだけ広大な大地ならば、一般人の犠牲も少なくて済むし、目撃も避けられると踏んだ俺の判断だ。
上空でピタッと止まったかと思うと、ゆっくり下降していくタイムディスクに動きを合わせ、こちらもゆっくりを下降を始め、地上へと着陸する。
「タイム犯罪者に使用するディスクストップレイを使うけどいい?」
ミエコの親指は既に発射ボタンの上に置かれていた。
ディスクストップレイは、犯罪者を機器に一時的な電流を流すことで、機器の動作を止めることができる、いわゆる電磁波ってやつだ。この電流は俺たちが持つ特別な機械で回収でき、機器は元の動作ができる武器だ。
「よし! 発射を許可する!」
俺の言葉と同時に、ミエコは発射ボタンを強く押した。
音も光もなく発射された電磁波は、見事に命中しタイムディスクから放たれていたライトが消えていく。こうなったら、原始的な方法でタイムディスクを奪還にいくしかない。
俺たち4人は、自分たちのタイムディスクから降り、ゆっくりとヒューマン社のディスクに向かう。
ヒューマン社のタイムディスク近づいて電磁波を回収すると、入口がゆっくり開く。きっと機器が再起動された状態となり開いたのだろう。俺はヒューマン者の人間に警告を発しながら操縦室へと向かう。
「こちらタイムキーパー! 君たちの今回の動きについて質問したいことが幾つかある! おとなしく言うことを聞いて出てきなさい!」
。
しかし、タイムディスク内には人の気配が全く無い。気配というか……人がいたような気すらしないほどに、機内の空気がひんやりとしていた。
再起動中のコンピュータからは
「メインコンピュータ再起動中! メインコンピュータ再起動中」
血の通わない冷たい声が機内に響く。
「この声!」
俺は思わず叫んだ。
「コンピュータが完全に……イヤ、このディスク自体がAI……」
今までの無線の声は人間ではなく、AI同士の会話だったかと分かった途端、顔から血の気が引くような感覚に襲われ、思わず呟いた……
「これは厄介だな」
「このタイムディスクをコチラの思い通りに操縦することは可能か?」
クルム先輩は機内のコンピュータを眺めながらミエコに聞いた。
「再起動中にメインコンピュータに入り込めれば……行けると思うんだけど……」
こんな状況でなぜか楽しそうなミエコが、早速作業に取り掛かった。




