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おれ達のLUCK TiME  作者: 風快李吏


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7/10

[第五幕.わたくしはダレ……?]

「それにしても何もねぇよな」

 おれがボヤく。かれこれ10分近く探しても何一つ手掛かりらしきモノは出て来なかった。その代りに珍しいモノが土中から発掘してしまった。

「でも、何でなんだ? ……エロ本が出て来たのって」

 発掘した張本人が疑問を浮かべた。

「武野にはツッコミたい事がたくさんあるのだが……」

 そもそも小学校にエロ本って誰が隠したんだろう。まあ、廃校となってしまった今、誰だか分からないけど。

「いくらなんでも寒過ぎだよ。大体ヒントなんてあるのかな?」

「ホントそうだよな」

 のんびりと寒空の中に平凡な会話をしている途中に後ろに黒い影があった。

「ヘンな気配感じるのはおれだけか?」

「いや、ボクもどんよりとしたのを感じる……」

「幻?」

「もしかしたら……?」

おれ等は背後を振り向いた。

《!?》

心臓が止まるかと思った!

「うわあ! どうしたんですか!? 先生!」

 森口は凄まじい顔でおれ等を見ていた。

「郷美さんが…………」

 先生はそれ以上何も言わずおれ達を引っ張り無理やり3-4の教室に向かわせた。

 「いいから来て下さい!!」

 廊下を足早く進めている時先生は必死にそれしか言わなかった。


              *

「だからどうしたんです?」

 おれと武野は分からないまま教室へと入った。

「さ、郷美さんが―――」

 その言葉におれ等は彼女を見た。でも、声を掛けるに戸惑った。

 内田の様子はヘンだった。

 彼女は教室の片隅で体育座りをして俯いていた。おれ等に背を向けていたからよく分からなかったが、顔が蒼白まるで死人でもあるかの様だった。

そして何よりも以上と思ったのが、普段の彼女ならすすり泣くことも嘆き泣くこともしないのに、今の彼女はそれをしているのだった。

 おれと武野は躊躇ったが勇気を出して声を掛けた。

「内田?」

「オイ、大丈夫か?」

 反応がない。

 森口は先ほど以上に乱れ、震えは声でおれ等にこう告げた。

「や、やっぱり、そうですよ。関元クン、武野クン……た、たぶん、さ、郷美さん……幽霊に憑かれた……と…―――」

 《ええっ~》

 おれ等は耳と目を疑った。

「ウソだろ…、先生。先生はそんなこと言うような人では―――」

「見たんです!突如、女性の泣き声が聴こえてきたその直後に、突然、女性の姿がいきなり僕らの目の前に―――!」

「本当、ですか?」

 森口は首を縦に振った。そして、少しだけ落ち着いてこう言った。

「そしたら、郷美さんが倒れて……」

「その瞬間にこうなったと・・・?」

 武野が訊く。先生はしっかりとした口調で「えぇ」と言い肯定した。

《ありえんのかよ》

 武野とおれは愕然とした。

 で、もう一つ。疑問が浮上した。

「それで、先生はその時どうしたんですか」

  答えはさらりと返って来た。

 「一時撤退をしました」

  ……ということはつまり

   《逃げたんかい!!》

 おれ等は無責任な教師を白い目で見詰めた。

「でも、さぁ……信じられないことだよな」

 冷たい目で森口〝先生(?)″を見詰めながら、武野は半信半疑に呟いた。この前まで否定していたオカルト現象の一つが目の前で起きているのだ。誰だって疑うのに違いはないだろう。

 だが、森口先生はやや落ち着いた声で、「これを見て信じられないほうがどうかしてますッ!」と恐怖心を交えて否定を否定した。そして、先生は恐る恐る数分前までは内田という名前“だった”女の子へ再び震えた声合図する。

「現に今、彼女は―――」

と、おれ等に向けて言った。それが聴こえてしまったのだろうか……?

 内田の姿をした得体の知れない何かは重暗い教室の片隅で更に嘆き始めた。

「……ううっ―― 分からない、悲しい。哀しい…――」

 その嘆きの怖さ故におれ等は知らず知らずと後退りをした。武野は恐怖のあまり半ベソをかきそうにしながら先生を楯にしてしがみ付いていた。その先生はおれの背後をガッチリとガードして下さっていた……って、ちょっと待った!いやいやいや逆だろ普通!!先生なら生徒の前に出て守るべきだろうが!?

「せ、関元クン、ムリ!!無理無理無理!!! です!! 頼みました!!!!」

「ちょっ、せ、先生!おかしいでしょうが。い、痛いですって。教師的にマズイでしょうが!男3人は流石にむさいですって。ヤバイですよ。色んな意味で……!」

 その嘆きは更におれ等に恐怖を与えた。

「カナシイ…苦しい……誰だ、誰なんだ?……思い出せない……自分は誰だったのか……(わたくし)は何故こうなったのだ??」

「えっ!?」

 一瞬にして三人の動きが固まった。

「い、今、『わたくし』って……言った!?」

 おれの言葉に背後から「言った!」「確かに聞こえました」と声が上がる。そして、本来の人格に言えば確実に雷が落ちるだろうな、という非難を立て続けに口走った。

「内田はあんなに女々しくねえええぇぇ!!!」

「そうです!! 僕のプライドを平気で傷つけようとする彼女があんなこと例え死んでも言うはずは断じてありません!!」

「悪魔のスマイルで騙し討ちをするあいつがいうわけない!」

「そうだ!たとえ演技でも絶ッ対に言わん!!!」

――― ということは、結論は一つ。

 正真正銘こいつは…………

  《 幽 霊!?》

 その言葉に反応したのだろうか。彼女はゆっくりと顔をおれ等の方へギイッと向け、その冷たい眼でおれ達を睨みつけた。

 かつて内田だったそれはゆーっくりと立ち上がって、いつしか見たあのTVから出てくる女のホラー映画のようにその姿はおれ達に向けられた。

 そしてニヤッと薄気味悪く笑って、ゆっくりとその口を開いた。

 その言葉一つ一つがおれ等をあっちの世界へ誘う様な喋り方だった。

「この()はタダではでは返してあげないわ…」

 気味が悪過ぎる…!

「―― この娘を返して欲しければ、私の言う事を聞く、か…力尽くで、取り返してみなさい……。但し、この娘に危害を加えられる、ならの話だけど…ね―――」

 ―――危害を加えても…いい……?

 《クックックックックックックック…――》

 おれ達は目つきを変え、二ィっと幽霊に笑った。

「今までのお返しができる…」

「理不尽に付き合わされた今までのお礼が…」

「僕の人権損害の埋め合わせに…」

 猫がネズミを狙うな鋭い眼でおれらは先程までこちらを怯え震えさせていた獲物にジリジリと歩み寄った。

 《フフフッ》

あれだけビビっていた幽霊に対して今や立場が逆転していた。いやはやこっち側が化け物扱いだ。

「なッ、な、に……よ――――ギャッ!」

彼女が声を上げた時には膝カックンをされて身体が床に倒されていた。やったのは武野だけどね。相手が抵抗する間も与えずおれ等は攻撃した。勿論、ある程~度 手加減で。

「うらみ晴らすぜ!」

「ギャ―アア、バ、ア…ボ、蹴るなッ踏むなッ…痛てッ―――」

「悪を祓うのです!!」

立場上、教師なので彼だけはお経を唱えていた。―――っていうか何処から数珠とお経の紙出したんだ?

「なんみょォ~ほーれんっげっきょオオオー――!!

「ちょっ! お経を唱えるな!止めイ!! って、こら――!」

調子ついたおれ等に続いて武野は叫んだ。

「正義のためだ許せ!!」

「痛てッ、蹴るな! って、それ『走れメロス』のセリフ…苦しいッ、コラっ……ちょ、ちょっと…――」

「最終奥義!必殺!!コチョコチョ!」

これは相当キツイ。

「あっハハハ、ちょッ、止めンしゃい! チ、違うって、あっ、ァハハハ、あのッ、は、話を…話を聞いて下さい!!!!」

今までと違った物言いにおれ達は反応した。

《えッ……?》

 おれ等はハッとして気付き、足の位置とか微妙な状態で止まった。まぁ、お経を唱えていた先生だけは普通だったけど。

 このままの体勢でいるのもなんだから元に戻し、何かを言おうとしている女の子の顔を見る。彼女はエッホ、エホ…と咳き込んだ。そして話を続けた。

「ち、違うんです。ちょっと、お巫山戯が過ぎました。怖がらして本当に申し訳ありません。……こんな事をしてしまった私が言うのも可笑しな話なのですが……、単刀直入にいいます。 お願いがあるんです」

 《え?》

 そんな流れになるとはだれも思ってなかったからつい驚いた。どんなコトだろう……。

「私。死ぬ直前の記憶を失くしてしまって。それが気掛かりで今も尚、成仏が出来ないのです。そして、何か大切な想いの失くしてしまった…。お願いです。思い出すのを手伝って下さい!」

 《え、でも…》

 ……どうすればいいんだ?

「もちろん、タダとは言いません・今の私に出来ることなら何だってします。何でしたら暗号解きの方を手伝いましょう。その代り、私の方もお手伝いをお願いします!取り戻せたら、この郷美という娘はちゃんと返しますからッ」

 彼女の必死な訴えにおれ達は悩んだ。……でも、どっちにしたって、森口先生が気づく。

 「要するにコッチに決定権は無いってことですね」

 そういえばそうだ。

「う~ん、内田をこのままにも出来ないし、仕方がない。やるっか?」

「そうですね」

「だな」

 意見が一致した。

「判った。手伝おう。でも、内田と謎解き、言ったからにはちゃんと守ってよな」

「ええ、勿論」

 先刻の恐ろしさはなく、穏やかな優しい笑いだった。



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