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モノとの正しい付き合い方  作者: 千変万化
四章 奇襲急襲、そして
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4-11 襲われた王都

 それからしばらく、馬車の中でひと時の休息を過ごした。王都のことが気になって、最初の頃は目が冴えてしまっていたものだが、気を張り過ぎて心の方も疲れてくると次第に眠くなった。それでも途中までは抗っていたのだが、激戦の疲労も相まって、いつの間にかケイトは深い眠りに落ちていた。

 そんな日々を三日ほど過ごし、四日目の昼になった頃、ようやく遠目に王都の姿が見えてきた。

 しかし、いつもの王都ではないのは、この距離からでもわかった。

「あれは……」

 王都の上空には黒煙が立ち昇り、地上では異形の化け物が暴れるように動き回っているのが見える。城下町を囲う城壁は崩されてしまったのか、あちこちに瓦礫の山が築かれていた。

 報せよりも事態が悪化していて、嫌でも緊張が高まる。

 先行する騎士団も状況を把握したのか、一気に足を速めた。ケイトたちの乗る馬車も、それに倣う。

 王都が近くに迫り、同時に鉄鬼も傍まで来たが、ケイトたちは構わず城下まで突っ切った。さすがの鉄鬼も、猛然と駆けてくる騎士団と馬車を止め切ることはできなかったようだ。こちらに気づき、雄叫びを上げて迫ろうとしていたが、そこに至るまで二拍以上の間が空いている。追い縋ってきても、振り切るのは難しくなかった。

 一気に、城門を駆け抜ける。

「そんな」

 城門を潜った先の光景を見て、ケイトは絶句した。

 城下町では、鉄鬼が暴れ回っていた。綺麗に立ち並んでいた建物は見るも無残に破壊され、この場に居合わせていただろう大勢の人々が、叫び声を上げながら逃げ惑っていた。

 意外といる人の数から、鉄鬼が城下に踏み込んだのはそれほど時が経っていないと思われた。城の外に鉄鬼がたくさんいることで、人々は多分、城からは逃げられなかったはずだ。それに、王様が守ってくれると思って、城下町から離れなかったと考えてもおかしくはない。その結果、城下町に踏み込んだ鉄鬼に襲われてしまったのだろう。

 ――王様が守っているはずなのに。

 あれほど強い加護を持っているのに、どうしてこうなってしまったのか。

 立ち尽くし、呆然としてしまいそうになるが、それを制すようにキュリオが大きく声を上げた。

「皆、民を救援するのだ! これ以上、鉄鬼の好きにさせるなッ!」

「はっ!」

 キュリオの指示に、騎士団が動き出す。あちこちで暴れ回る鉄鬼へと向かい、あるいは人々を救いに行く。

 ケイトたちもその加勢に行こうとしたが、キュリオがすかさず指示を出してきた。

「この場は、我々が受け持ちます! ケイト殿たちは陛下のもとへ!」

「ぼ、僕たちでいいんですか!?」

「構いません! 本当ならば、私が陛下のもとへと馳せ参じたいところですが、ここで指揮を執らねば。それに、クロウズを退けた皆さんならば、安心して任せられます。どうか、陛下をお助けください!」

 早口で言い切ったキュリオが、小さく頭を下げてくる。

 ケイトたちは一度顔を見合わせたが、断る理由などない。すぐに頷き、城へと駆け出した。

 目指すは、王城である。王様がいるとしたら、多分そこだ。

 目一杯走って、王城に続く門を駆け抜ける。

「なっ……!?」

 門の先にあった光景を前に、ケイトたちは思わず足を止めた。驚きのあまり、次の言葉が出て来ない。

 たくさんの人が傷つき、血を流しながら倒れていた。どこかで、見たことのある顔だ。そう確か、お飾り騎士団の飾らナイトである。誰もが苦悶の表情を浮かべ、それでいてピクリとも動かない。

 その彼らの少し前で、王様が膝をつきながらも剣を構えていた。しかし、手負いなのか、肩で息をするほどに呼吸が乱れている。

 王様の視線の先には、一人の長身の男と四体の鉄鬼がいる。長身の男は腕を組みながら、王様を冷たい目で見下すように見ていた。

 どうやら、とんでもない状況の時に駆けつけたらしい。だが、このまま唖然としているわけにもいかない。

「王様!」

 すぐさま王様の傍に駆け寄り、ケイトとホムラは得物を手にして男に向ける。

 こちらに気づいた男が、何故か少しだけ感心したような顔をした。

「鋏を模した二刀の道具使いに、調理師か……。成程。ここに来たということは、どうやらクロウズは敗れたようだな」

「お前は一体……!」

 ケイトが警戒心を強めながら言うと、男がにやりと嫌な笑みを浮かべながら続けた。

「私の名は、シェルト。解放軍三将星の一人にして、この世界をあるべき姿へと導こうとする者である」

「世界をあるべき姿にだって? ふざけるなッ! だったら、なんでこんなことをするんだ!」

 血に塗れた人たちに目を向けながら、ケイトは感情に身を任せて叫ぶように言った。

 しかし、シェルトが動じた風はない。寧ろ、割り切ったような冷たいものを表情に浮かべた。

「仕方があるまい。欺瞞に満ちたこの王を打ち破るには、束ねた力を砕くしかないのだ。この地の民が、王に力を与えているのはわかっている。ならば、共に倒れてもらうのは必然であろう」

「だからって!」

 言っていることはわかるが、到底納得できるものではない。何よりも、自分たちの身勝手で大勢の人々を傷つけることなど、許せるわけがない。

 ホムラもきっと、同じ気持ちなのだろう。言葉こそ発しないが、額に青筋が立つほどに怒っているのがわかる。剣を構えて姿勢を低くし、いつでも斬り込めるといった感じだ。

 ケイトも同様に、刀を構え直す。しかし、シェルトは武器を抜こうともせず、苦笑を浮かべた。

「お前たちの実力は興味があるが、残念だが相手をしている暇はない。私はこれから、魔法の撚糸を探さねばならぬ。割いてやれる無駄な時間はないのだ」

 それだけ言ったシェルトが、背を向けて王城目指して駆け始める。

「待てッ!」

 すぐに追い縋ろうとしたが、ケイトたちの前に四体の鉄鬼が立ち塞がった。いずれも妖しく光る赤の双眸をこちらに向けてきていて、口からは低い唸り声が絶えず漏れている。こいつらを倒さないことには、シェルトを追いかけられない。

「ケイト君、シェルトを止めてくれ。このままでは、大変なことになりかねない……!」

 荒い息を吐きながら言った王様に、ケイトは大きく頷いた。

 だが、このままではダメだ。鉄鬼が、邪魔をしてくる。

 ――すぐに、片づける!

 足に力を籠め、前へと一気に跳ぼうとする。

 刹那、四枚のカードがどこからともなく飛んできて、鉄鬼に一枚ずつ張り付いた。

 見覚えのあるそのカードに、ケイトはハッとして飛んできた方へと顔を向けた。城門の上に、赤茶けたジャケットを羽織った女の子が、カードを構えながら立っていた。あれは、サラだ。いつ戻ってきたのかはわからないが、見間違えるはずもない。

「グオオオッ!」

 鉄鬼が、低く響くような声を上げる。カードが投げられたのを攻撃と見たのか、殺気を振り撒きながらケイトたちに迫ってきた。

 ケイトとホムラは迎え撃とうとするが、それよりも早くサラの声が飛んでくる。

「ブラックジャック、バースト!」

 言葉に呼応したかのように、鉄鬼に張り付いた四枚のカードがいきなり爆発した。凄まじい威力で、巻き起こった爆風によってケイトたちは動けない。

 まともに爆発を受けた四体の鉄鬼のうち、二体が力なく崩れ落ちた。残る二体は体を軋ませながらも、構わずこちらに突っ込んでくる。

 爆風の影響がなくなり、今度こそ迎え撃とうとした時、ホムラが一歩ケイトの前に出た。

「ケイト、ここは任せろ! お前は先に行け!」

「そうだね。ここは、ボクたちが引き受けるよ」

 ホムラが言い、サラが地上に降り立ってから続ける。

「君は、すぐにあの人を追って。何だか、嫌な予感がするんだ」

「大丈夫なのか?」

「ふふっ、大丈夫だよ。こいつらを片して、傷ついた人たちを何とかしたら、ボクたちもすぐに追いかけるから。だから、行って」

「……わかった。二人とも、気をつけて」

 二人が頷き、鉄鬼に向かって走り出す。

 ケイトはすぐに駆け出そうとしたが、王様が口を開いたために足を止めた。

「ツクノ君、君もケイト君に着いて行ってくれ。シェルトの能力は厄介だ。モノの気配を掴める君がいないと、戦いようがないかもしれない」

「わ、わかりました!」

 ケイトたちから離れていたツクノが、緊張気味に言った。それから、ケイトの傍に寄る。不安そうに見つめてくる双眸と、束の間目が合った。

 彼女を安心させるように一度大きく頷き、それから声をかける。

「行くよ、ツクノ!」

「は、はい!」

 ツクノの返事が聞こえるや否や、ケイトは勢いよく駆け出し、王城の中へと向かった。

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