表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モノとの正しい付き合い方  作者: 千変万化
二章 激突!三将星クロウズ
11/155

2-2 異世界の王都

 城門を潜った先では、西洋風の街並みが待っていた。

 石造りの家が、一定の間隔を保ちながら厳かに並んでいる。足元はきれいに整った石畳で、一番奥に佇む城も西洋チックなものだ。ここまで見た二つの村が和風で古風だったために、王都も和風の城と城下町だろうと想像していたケイトは、あまりの違いに面食らってしまった。

 すっかりお上りさんのように辺りを見渡していたら、あることに気づいた。

「王都という割には、あまり人がいないね」

 家の数も開いているお店もそれなりにあるのに、人通りはあまりなかった。何人かがまばらに通り過ぎるばかりだ。

「仕方がありませんよ。みんな、城下町には興味ありませんもん」

「どういうこと?」

「それは、行ってからのお楽しみでーす」

 ツクノが笑みを浮かべながら言ったのに対し、ケイトはホムラと顔を見合わせた。ホムラもよくわからなかったらしく、怪訝そうなものを顔に浮かべている。

 そんなことをしている間に、ツクノが「早く早くー。こっちですよー」と言ってどんどん前へと進んで行く。宙を浮いているものだから、普通に走るよりも段違いに速い。

 何が何だかわからないが、ここは彼女を追いかけるしかない。ケイトもホムラも、この王都の地理に暗いのだ。

 すいすいと宙を飛んでいくツクノを、ケイトはホムラと共に必死に走って追いかけた。身体能力が上がっているから息こそ切れないが、思えば昼食はまだだ。空腹で一生懸命走るのは、結構辛い。

 必死に着いて行く自分たちへと一度視線を送ったツクノが、いたずらっぽく笑んでから、さらに速度を上げた。

「……あいつ、絶対わざとだろ」

「……かもね」

 二人で溜息を吐き、見失わないように走り続ける。

 やがて、ツクノが小さな門がある所で止まり、ケイトとホムラは足を緩めた。

 門の左右には、甲冑を纏った騎士が槍を片手に佇んでいた。

 こちらに気づいた騎士が、槍で門を塞ぐようにしてくる。

「この先は王城へと繋がっている。入城券かそれに準ずるものを持っていない者は、ここを通すわけにはいかぬ」

「推薦状がありまーす」

 ツクノが、ケイトを見ながら言った。

 頷き、懐から推薦状を出す。ホムラもどこかでもらっていたらしく、同様に差し出している。

 推薦状に気づいた騎士たちが、すぐに槍を引っ込めた。

「これは失礼を。陛下をお呼びするので、彼らを見ながら待っていてくれ」

 騎士の一人が、駆け足でこの場を離れた。

 残ったもう一人が門を通るように促してくるが、ケイトとホムラは騎士の言葉に首を傾げていた。

「彼らを見ながらって?」

「おや、ここに来るのは初めてなのか。まあ、この先に行って実際に見ればわかるぞ」

 騎士が、再度通るように促してくる。

 言っていることの意味がわからず、やはりホムラと顔を見合わせていたが、いつまでも立ち往生しているわけにもいかない。先を急ぐことにした。

 門を潜り抜けると、途端に騒がしいほどの人の声が出迎えた。

 さっきまでの城下町が嘘のように、この場所は人で溢れ返っている。別段お店があるようでもないのに、人々は何かを見て回りながら談笑している。

 ケイトは、彼らの視線の先を追った。きっと、珍しいものでも飾られているのだろうと思いながら。

 しかし、この目に映ったものは、想像とはまったく違っていた。

「……何、あれ」

 一瞬、言葉が出なかった。

 人々の視線の先にあるもの。それは、自身を見せびらかすようにしているたくさんの人だった。ある人は煌びやかなドレスを纏っては一回転して見せたり、またある人は刀を抜き払って構えを取って見せている。もっと凄い人では、ブーメランパンツ一丁でポーズを決め、自慢の筋肉を見せびらかしている。その彼らの場所は一定の区画で区切られ、まるで展示物でも並べているかのようだ。

 そんな光景が、そこかしこで繰り広げられていた。

「あはは、どうですかー? 王都ミュゼムの名物、お飾り騎士団・飾らナイトの雄姿はー?」

 くすくす笑いながら言ったツクノに、ケイトとホムラは思わず聞き返していた。

「お、お飾り騎士団……?」

「飾ら、ナイト?」

 冗談みたいな名前に、首を傾げながらツクノを見た。つぶらな瞳を向けたツクノが、笑みを浮かべたまま首を傾げる。この反応は、冗談じゃない。

 もう一度、飾らナイトと呼ばれた彼らを見る。大体がポージングを決めているだけで、どう見ても騎士には見えないし、戦えそうもない。

 その一人と、ケイトはばっちり目が合ってしまった。筋肉隆々とした濃い顔の大男が、ポーズを決めながらウインクを飛ばしてくる。悪寒が走り、思わず一歩たじろいだ。

「おい、こんな戦えそうもない奴らを騎士団にするなんて、ここの王様は大丈夫なのか?」

 ホムラが遠慮なく疑問を口にする。

「むー、大丈夫に決まってるじゃないですかぁ。鉄鬼や解放軍が暴れているのに、この王都がこんなに賑わっているのも、今の王様のおかげなんですよ?」

「そうは言うけどな、解放軍も鉄鬼も何とかできてないじゃないか。こんな奴らを見世物みたいにするより、もっと強い道具使いを雇い入れた方が良いと思うが」

「うむ。確かに、君の言うことは尤もだ」

 不意に、やや低めの男の声が割って入ってきた。

 ケイトたちが反応するよりも早く、その声の主はさらに言葉を続ける。

「だが、直接戦う力だけが全てではない。彼らのように、後ろで支えてくれる力も必要なのだ」

 声が聞こえてから一拍遅れて振り返り、ケイトは声の主を見た。

 灰色の外套を身に纏った長身の男が、ゆっくりとこちらに向かって来ていた。

 男が歩む度に、背までもある白銀の髪が微かに揺れる。まるで本物の銀のようで、照り付ける陽光によってその髪が眩く煌めいて見えた。

「王様だ……!」

 誰かの呟くような声が漏れ、この場の喧騒が一気に静まる。

 ひしめき合うようにしていた人たちは我先に左右へと寄り、道の真ん中を開ける。

 開いた道を悠然と歩き、やがて王様が、ケイトたちの目の前で立ち止まった。

「ようこそ、王都ミュゼムへ。私がこの国の王、アートだ」

 向けられた静かな声音に、思わず体が強張る。

 口元で微かに笑んでいるだけなのに、この国王からはとんでもない威厳を感じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ