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Gleam  作者: M.O.I.F.
2/7

遭遇

『レオン、簡単な任務だ、なんて思ってないでしょうね?』

「……ああ」

 レオンは図星を突かれ、ばつが悪そうに答える。通信機の向こうで頭を抱えている幼馴染の姿が容易に想像できた。

『まぁいいわ。とにかく、逐次報告はすること。いいわね?』

「了解。報告することがあれば、な」

『もう! そんなこと言わないの!!』

「はいはい。シャーリー、出撃許可をくれ」

『もう……。シャッター閉鎖、ハッチ開放、各部異常なし。発進、どうぞ!』

「レオン・ハワード、発進する!!」

 ロックを解除し、機体にすこし推力を与える。ゆっくりと動き出した機体が安定したところで、レオンは思い切り加速させた。

 機体はどんどんスピードを上げ、戦艦から発進する。数秒後には小さく見えた。

 レオンは大気圏突入角の調整と冷却シールドの展開準備を終えると、ゆっくりと惑星・ユートピアに向けて突入していく。

「くっ……!」

 突然、レオンの体が機体ごとなにかに引っ張られる。

(毎度毎度、この重力がかかる瞬間はなれないな!)

 機体がぐらつかないように操縦桿をしっかりと握り、安定させる。一度でも角度がずれれば着陸ポイントが大幅にずれるだけじゃなく、最悪の場合には機体そのものがなくなってしまう。

 大気圏を突破したのはそれから、1分後のことだった。

(面倒だが、通信をしなくちゃな)

 レオンはいやいやといった手つきで、通信機を操作する。

「こちら、レオン。大気圏突入に成功。これより基地に向かう」

『了解。とりあえず、一段階は突破ってところね』

(毎度思うが、戦艦で大気圏突入してから発進した方が楽なんじゃないか?)

 そんな愚痴をこぼしたくなったが、そんなことを言ったら細かい説教が幼馴染からされることがわかっているレオンは黙って基地へと進路をとった。

(自然は豊かだし、どこも不思議なところは見当たらないが……)

 戦闘機を操縦しながらあたりを見回しても、救難信号が発信されているような状況には見えない。それどころか静かでのどかな、そんな星だった。

 そのまましばらく飛んでいると、建物が見えた。

「こちらレオン、この星の移住民の住居らしき建築物を発見した。これより、調査に向かう」

『ちょっとまって! 先に……』

 シャーリーの通信の途中でレオンは通信機をオフにした。

(これ以上、小言は聞きたくないからな。悪く思うなよ)

 こんな状況で救難信号が発信された理由を知るためにも住居を調べる必要がある。レオンがそう考えるのも仕方がなかった。

機体のスピードを落とし、住宅街の方へ。

(移住者用簡易住居だな。まだ、本格的な移住には至ってないのか)

 プレハブのような建物が立ち並ぶそこは、住宅街というには倉庫街という呼び方の方が正しいような気がした。

(それにしても……)

 レオンが住宅街の上を飛び始めてからすでに数分が経過しているが、住民が誰一人として見当たらない。それどころか、住居に人が住んでいる様子さえも見当たらない。

 戦闘機の音は通常の航空機にくらべてはるかに大きい。それくらい大きな音がすれば一人や二人、窓から外の様子を確認しそうなものだが、それすらも見つけることができていない。

(降りるか? だが、このスペースじゃ降りても離陸ができないな)

 レオンは少し考えると、基地に向かうことにした。これ以上、ここを調べても無駄だと思ったからだ。仮にも救難信号が出ている状況だ。基地の方に避難している可能性の方が高かった。

 そう考え、住宅街から離れる。すぐに戦闘機のアラームが鳴り響いた。

「なにっ!?」

 レオンは後ろを振り向き、警告音の正体を確認する。そこにいたのは……

「虫……だと!?」

 レオンは通信機のスイッチをオンにすると、スピードを上げた。

『やっとつながった! いきなり通信機を切らないでよ!!』

「そんなことを言ってる場合じゃない! 昆虫らしき生物に襲われている!!」

『えっ!?』

「クソッ! 早いっ!!」

 昆虫たちは戦闘機のスピードについてきていた。それどころか、距離をどんどん詰めていく。

「くそしりつき!!」

(泣き声……!? 虫が、か!?)

 そんなことを思ったが、冷静に考えている時間などレオンにはなかった。

「攻撃はされていないが、距離がどんどん詰められてる! このままじゃ、本当に攻撃されるぞ!!」

『レオン君? 聞こえる?』

「ヘレナ大佐か!?」

『ええ。その追ってきている生物の特徴を教えてちょうだい』

「くっ!!」

 レオンは急いで、旋回して昆虫たちの下を潜り抜けていく。また旋回して、昆虫たちの後ろにつけた。

「も羽で飛んでいる! あとは甲殻があって……鎌みたいなものが前足部分に二つ! 姿は……セミとカマキリを足したような外見だ! それが2匹いる! これぐらいしか言えない!!」

『報告にない生物ね。これが救難信号の正体だわ……』

「なっ!?」

 突然、昆虫たちが振り返り、こちらに向かってきた。まるで、レオンが乗る戦闘機を襲おうと言わんばかりの勢いで。

「やばいっ!!」

 レオンは機体を急上昇させる。虫たちはそのレオンの機体のスピードに反応してくる。

「どんな動体視力してるんだ!!」

『振り切れそうにない?』

「無理だ! っ!?」

 操縦桿をひねり、機体を地面に対して垂直にさせる。右翼があった部分に鎌が振り下ろされた。

『レオン君、攻撃を許可します。ただし、規定に従い攻撃を受けた場合のみに限定します』

「了解!」

 レオンはスピードを上げて距離をとる。

「ギギィ……ギギィッ!!」

(泣き声が変わった!?)

 レオンはそのことに驚愕しながらも、冷静に機体を操縦する。こんな状況でも落ち着いて対処できるのはレオンの腕だろう。

 Soar Wingの機首を昆虫に向けて、気銃を放つ。ダダダッという音がと共に弾丸は昆虫の元へ一直線に飛んでいった。

「ギィィイィィ!!」

 緑色の血を吹き出しながら、蝶番がさびたドアを開けたような、セミが地面で暴れているような、そんな声を上げて落ちていく昆虫。

 レオンは一匹にとらわれず、もう一匹に集中した。

「攻撃してこないのか……?」

 もう一匹は仲間が撃ち落とされたのが衝撃的だったのか、ただその場から動かず飛んでいるだけだった。

(今のうちに……!)

 レオンは機体を旋回させると、もうスピードでその場から離れる。そのとき、昆虫が「づとをぞいちを」と鳴いているような声が聞こえた。


 * * * * * 


 レオンは一旦、地上に降りて休息をとっていた。あの昆虫がいないとも限らないが、そんなことを考えて入れないほどレオンは疲弊している。

 大気圏突入に、突然の襲撃。それを一機で退けるのは並大抵のパイロットができるわけがない。

(そもそもあいつらは何なんだ?)

 レオンはぼうっとする頭で必死に考える。答えがわかるはずもなかったが、考えずにはいられなかった。

 だんだんと到来した睡魔に、レオンは体を任せた。


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