35話 黒き逆十字の禁術使い
(´・ω・`) 新しく買ったキーボードが打ち辛い……
ちくしょう、投稿が遅くなったのもキーボードの所為だ!(現実逃避)
人間とは『禁忌』と呼ばれる物に惹かれ、手を出してはいけないとは知りつつも手を出してしまう。
永遠の命、最強の力、人外の叡智……時に人は様々な『力』を求め、その行き過ぎた行いで自滅して行きました。
さて、巷ではズルなどと呼ばれている異能、降って湧いた強力な『力』に果たして人は正気を保っていられるのでしょうか。
「というワケでおはようございます。ようこそ神の間へ、私は転生神。貴方は本日23時20分に亡くなりました」
「お、おう……あれ? 俺は家で寝てた筈じゃあ……」
「貴方はこちらの不手際で寝ている間に心臓麻痺になり、遺体は既に焼かれてしまっていて蘇らせる事も不可能です」
「は!?」
まあ、嘘なんですけどね。
昼夜逆転の生活、脂と糖にまみれた偏った食生活、睡眠不足に運動不足も祟れば心臓麻痺にもなりますよ。
……死体が焼かれているのは本当ですが。
「お詫びに貴方には2つの選択肢を用意しました。一つは真っ新になって新たな転生を待つか、今の記憶を保持したまま異世界でやり直すか。もちろん後者には異世界でも不自由なく生活できるように異能力を差し上げます」
「いやいやいや、だったら死んだ直後に戻してくれよ。神様だったらそれくらいできるだろ!?」
「確かにそういう能力を持っている神は居ますが……残念ながら彼らは管轄が違うので協力は仰げません。それに本来であれば問答無用で転生させる所を、特別に私の都合でチャンスを作っているだけなのでそれは出来ないのです」
「マジかよ……じゃあ、その代わり能力の方はそれなりの物が貰えるんだろうな?」
「そこはお任せ下さい。自重しない神が限界ラインギリギリアウトの物を色々用意してくれているので、思う存分選んでください」
「おう、まかせとけ! ……うん? ギリギリアウト?」
正直、持ってくる物が処分に困るような物でこっちも辟易してるんですよ。
距離を無視して切り裂く剣とか、惑星大のロボットとか、『使うと相手は死ぬ』武器とかアホじゃないでしょうか?
とりあえず、色々取り出してみましょう。
「おお、剣とか槍とか色々な道具が出て来た」
「どうぞ、この中から一つだけ差し上げます。神話級の魔剣でも神槍でも自由にお持ちください」
「じゃあ……アレ? この黒い本は?」
「ああ、それは『禁術』を封印している魔導書ですね。使えば禁忌の力が手に入りますよ」
「おお! それはスゲェ!」
何か思いっきり食いついてますね。
まあ、見た目も革張りで如何にも魔導書って感じの見た目ですからアレな人には堪らない物ですよね。
「これにしようかな……」
「ああ、但し気を付けてくださいね。禁術は確かに強力ですが、それにはリスクが伴います」
「まあ、それはお約束だよね。それでそのリスクって命を削ったり、内なる怪物に身体を乗っ取られる系?」
「いえ、徐々に厨二病が悪化します」
「それだけ!?」
それだけとは認識が甘すぎますね……
これは物凄く恐ろしい物だというのに。
「それだけと言いますが、悪化するごとに指ぬきグローブを愛用したり、サングラスに片目だけカラコンを着けたり、冬でもないのに長めの黒いコートを着込んだり、無駄にシルバーな鎖をジャラジャラ垂らしたり、眼帯を付けて左手を包帯でグルグル巻きにしてみたり、最後には難解な言い回しを多用して一般人と会話が不可能になります」
「お、恐ろしい……!」
どうやら私の言いたい事を漸く理解できたのか、寒くも無いのにガタガタと震えだしました。
ですが、恐ろしいのはこれだけじゃないんですよ。
「さらに悪化が進めば、『ブラッディ』とか『罪業』とか『暗黒』とか悪っぽいニュアンスの言葉を好み、漢字にカタカナのルビを振る様になり鎮魂歌とか禁忌と読ませる為にネーミング辞典などを読むようになります。更に神話などから引用するようになって、聖剣とか魔剣とか日本刀とかに憧れるようになりますね」
「止めろ……その攻撃は俺に効く!」
「さらに夜な夜な、訳の分からないタイトルを付けたノートに二つ名や呪文や武器のデザインなんかを書いて……」
「いっそ殺して!?」
おやおや、まるで陸に揚げられた魚のようにビクビクと痙攣しながら倒れてしまいました。
フッ、勝利とはいつも虚しい物ですね……
ちなみにああいうノートはキチンと保管しておかないと、忘れた頃に部屋に入ってきた他人に読まれる可能性がががが
「そ、それでは持って行く物はそれでいいですね。大丈夫、意識さえしっかり持っていれば禁術に呑まれる事は……時間を延ばすぐらいは出来るでしょう」
「それでもその程度なんですね!?」
神が造った魔導書の精神侵食を気合で止められる訳がないでしょうに。
正直、正気を保っているつもりでも気が付かない間に染まるレベルなので、使わなければ正気で居られますよ!
使わないとまず死にますけど。
「それでは貴方にはこれより、幻想と魔法に満ちたファンタジー世界へ転生して貰います」
「ですよね。これでコテコテの未来都市なんかに送られたら、ここにある道具の殆どが意味ないもんな」
「いえいえ、そこは押し入る機械兵どもを薙ぎ払う無双系を始めればいいんじゃないでしょうか?」
「サイバー系なのにやってる事は蛮族!?」
いや~、魔法という相手のルールに無いものを使用するのでもっと性質が悪いかと。
火とか雷での攻撃魔法ならまだしも、闇とか光なんて科学的にどう扱えばいいんでしょうね?
呪いや精神魔法なんて強化プラスチック素材の鎧なんかじゃ防げませんよ。
まあそうなったら新たな物語が産まれそうで面白そうではありますが、今回はそんなつもりは毛頭ありませんけどね。
「親切心までに言うと、最初の目標は奴隷を買って仲間にして置く事をお勧めします。精神がアレになって会話が不便になると通訳が必要になって来るでしょうから」
「介護が必要なレベルになるの!?」
「伊達に不治の病なんて比喩されませんね~。兎に角、正気度が高い内に普通に会話できる仲間を見つけておかないと、場合によっては1ヶ月程度で日常生活に不自由する事でしょう」
「別のに変えちゃダメですかね!?」
良いですけど……
他のも真面な物は少ないですよ?
「じゃあ、この剣は!?」
「それは振ればどんな物も一撃で灰燼に帰す神剣です。チートというかデリートレベルのアイテムですね」
「強いとかいうレベルじゃない! じゃあこっちの槍は!?」
「神鉄製の神槍ですね。数十tもの重さですが持ち主は玩具のように軽く扱えます……ただし、重さは据え置きなので足元には注意が必要ですね」
「落ちる未来しか見えない! もっとそこそこな物はないの!?」
ハッハッハッ、実はちょっと張り切っちゃいまして強力な物を優先的に持って来てしまったので、そこそこのは無いんですよねぇ……
「あ、でもこっちはどうですか。何のリスクも無い対魔王兵器ですよ!」
「……それって魔王以外には効果が薄いってオチだろ?」
オチだなんて失礼な!
これは魔王にしか使えない立派なアイテムですよ!
え、魔王以外には? ヒノキの棒で叩いた方がまだいいかもしれませんね。
「おかしい……こう見るとこの魔導書が一番真面に見えてくる」
「順調に正気度チェックに失敗しているようでなによりです」
「これチートを選んでるんだよな!? 何で正気度が削られるんだ!?」
チートを覗く時、こちらもチートに覗かれているのだ……なんて事はありませんが、これだけの神具に囲まれると精神が侵食されるんですね~。
流石は神が造った道具の数々ですね! 真面な物が一つもない!
「いいよ、もうわかったよ! この魔導書を選べばいいんだろ!?」
「いえいえ、別に私の方は何かを無理強いするつもりはありませんよ。寧ろ私は貴方に快適な異世界生活を送って頂きたいだけなんですから。あ、ならこちらの家なんてどうでしょう? ライフラインは使い放題、家主が許可しなければ誰も侵入できない結界付きですよ?」
「引き篭もって出て来れずに、そのまま生涯を終える未来しか見えねぇよ!」
ですよね~。
何せ戦う力も無いんですから、誰だってそうなりますよ。
しかもこれ、ボタン一つでリフォームできますから一歩も外に出なくても全く困らない仕様ですしね! 私が欲しい!
「ハッ! こう見ても中学時代は学校にまで左手に包帯を巻いて、右目に眼帯を付けて通ってたんだ! 閃光のドラグマスターは伊達じゃないぜ! こんな魔導書だって使い熟して見せるぜ!」
「あ、積極的に迎合していくスタイルにするんですか? ノーガード戦法は打たれるだけですよ?」
「こうでもしなきゃやってらんないんだよ!」
狂気を狂気で誤魔化そうというワケですね!
なるほど、深い……くはないですね全く、寧ろ指先が付きそうなくらい浅いです。
「あ、ちなみに禁術には禁術専用の八小節からなる呪文があって、詠唱を省く事で威力が落ちる代わりに発動時間を短縮できるので活用してみてくださいね。フル詠唱すればドラゴンも一撃でノックアウトできちゃいますよ」
「……そのフル詠唱を使い過ぎると?」
「まあ、小節の量に応じて正気度は削られるので、正確な回数は分かりませんが途中からノリノリで詠唱し出せば危険信号ですね」
「それもう手遅れな奴だよね!?」
「そうとも言います」
「いや、そうとしか言わないよ……」
もう~、細かいですねぇ。
まあ、でもこれで説明はほぼ済んだのでそろそろ異世界へ飛んでもらいましょう!
「それではそろそろ転生に入りたいと思いますが、これより貴方が行く世界には何の危機も迫っていません。多少国同士のいざこざはあっても、魔王がなんや世界崩壊がなんやというような問題は抱えていないので、そこで自由に生きてくださって構いません。ただあんまり早く死んでしまわれますと、送った私が何とも言えない気分になるので長生きしてくださいね」
「間違って殺した方に言われたくないな!?」
ですよね~。
まあ、実際には本当に事故死なので、あんまり早くに死なれるとこっちが微妙な気分になるので注意して欲しいです。
この前に送った方なんて5分もしないとモンスターと遭遇して死んじゃって、ここへ戻されて来た時には苦笑いしか出ませんでしたよ。
あの時は珍しくスムーズに作業が進んで晴れやかで送りだしたというのに……ホント台無しでした。
「では、そこの魔法陣に乗ってください。次の人生は悔いの無い事を祈ってます」
「ああ、禁術なんかに負けてやるかよ。寧ろ使い熟して見せるぜ!」
その思考が既に……いえ、やめておきましょう。
私の無用な発言で彼を混乱させたくはありません。
魔導書を片手に張り切りながら消えゆく彼を、温かい眼差しで彼を見送った私は改めて部屋に広げたチートアイテムの数々を回収して……アレ?
持っているだけで剣豪になれる代わりに、喧しくしゃべり倒す意思を持った神剣がありませんね……まあでも、アレはこの中でもランクも危険度も低い方なのでその内出て来るのを待っていれば良いでしょう。
さて、仕事も終わったし休憩~休憩~っと。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。




