番外8‐1 全裸黙示録前編 『小田巻大和の場合』
(´・ω・`)これを書いている時、ふと途中で「一体、俺は何を書いているんだろう……」という狂気に襲われました。
危うく正気に戻る所でした。
拝啓、お袋様。
俺がそちらで死んでから何かお変わりはご在ますでしょうか?
俺が死んだ時はまだ肌寒い風が吹いていたので、お体に障ってはいませんか?
そんな親不孝な俺が今、何をしているかというと……
「わーわー! こっちくんなー! チクショー、こんな状況で出すもんなんか出るかよ!」
「「「ウー……アー……」」」
一糸纏わぬ姿で少々腐った方たちと命がけの追いかけっこをしております。(湾曲表現)
色々と飛び出したり、欠けている部分がある所為か走ってか来られないのですが、ゆっくりと歩く速さでゾロゾロと追い掛けられるのは、ハッキリ言って背筋を伝う寒さと血と腐臭に因る気持ち悪さ以外湧いてきません。(オブラート)
「ファ○キューゾンビ!」
「「「ウーアー!!」」」
「ぎゃー!? ごめんなさーい!」
あんまりにイラついて中指立てたら動きが早くなった!?
ねぇ、アレ死んでるんだよね!?
実は特殊メイクで、ドッキリ撮影中とかじゃないよね!?
「というかスタートが公園のド真ん中とか、どんだけハード設定だよ!? せめて仲間とか生存者は近くにいねぇのか!?」
というか住宅街を全裸で走ってる俺を生存者が見たらどう思うんだろうね、これ!?
好意的に見ても、恐怖のあまり錯乱して自殺行為に及んだバカで、普通に考えるとしたら外で裸になって露出行為の最中に追い掛けられた変態だよなぁ!?
「いや、何とか言い訳して服を犠牲にしながら逃げたという事には……ダメだ、チートの所為で汚れすら付かないから、必死に逃げてきました感が全くねぇ……というか、靴はOKで靴下NGの基準って何なんだよ!?」
チクショー!
全裸で走るなんて慣れてないから、さっきからぶらんぶらん落ち着かねぇ!
「生存者を見つけたいのに、このチートの所為で出会いたくねぇ……一体、俺はどうしたら……」
そんな時、遠くから悲鳴が聞こえた。
ああ、神は祝福ではなく試練を与えるモノだって昔誰かが言ってたけど、ちょっとこれは厳しすぎませんかね!?
とは言え、折角見つけた生存者を無視する訳にもいかないので、悲鳴の聞えた方向へ足を向けた。
声のした方へ全力疾走していると、遠くの方にゾンビが集まっている場所を見つけた。
悲鳴がしたのはあそこか!
「くっ……油断した。まさかこんな所にコイツらが集まっているとは……」
ワーオ、悲鳴が聞こえたからてっきり襲われ系ヒロインかと思いきや、そこにいたのは真剣持った美少女学生剣士でした。
というか、今もバッサバッサとゾンビを斬り倒してるよね。
確か真剣で人を斬るって結構難しくて、昔は死体で試し切りする職人がいたとかいう話を聞いた覚えが……
とか何とか目の前の光景に思考を停止していた間に、目の前の状況は悪化していた。
そうだよね、鍛えてるとはいえ女子校生が重たい真剣を振り回して、人間を斬り続けるなんて重労働をやり続ける体力が持つわけないもんね。
「とか何とか惚けている場合じゃなねぇよパーンチ!」
「……は?」
とりあえず、後ろから襲おうとしていたゾンビに思いっきりドロップキックをかます。
え、パンチじゃない? 知らんなぁ。
「てか一瞬、刀が掠った気がしたけどチートのお陰で助かったサンキュー神様! でも、貴女の所為でこんな格好で駆け回る破目になってるんだぜ○ァッキュー神様!」
「え……は、え?」
おおっと、ゾンビに囲まれて絶体絶命だと思っていた所に、全裸の男が乱入して来れば混乱もするわな。
よし、ここは上手く立ち回って不審者じゃないって事をアピールしないと!
「こんにちはお嬢さん。俺は風に呼ばれたチンケな風来坊さ!」
「え? ……はぁ、はい?」
「お嬢さん、怪我はないかな? 悲鳴を聞き思わず駆け付けたが奴らに噛まれたり引っ掻かれたりはしていないかね? アレはうつる病だからね。ちょっとした接触で傷口から感染して一日も経てばアイツらの仲間入りをしてしまうから、怪我は特に厳禁なのだよ! 俺かい? 俺は大丈夫、こう見えても丈夫だからね。ちょっとやそっとじゃ傷ついたりはしないから心配無用さ。さぁ、突破口は俺が開くから君は後に続きたまえ! 良し、行くぞ!」
「え? え?」
よし、相手は混乱している!
今の内に畳み掛けて済し崩しで有耶無耶のままに仲間に引き入れよう!
「いくぞ! 人間賛歌は『勇気』の賛歌! 勇気を知らねぇ死人なんかに負けて堪るか!迸れ、黄金のビート!」
ここの来るまでに為に溜めた物を、今ここで思いっきり解放してやるよ!
俺は徐に噴射口に手を添えた。
「え、何? コイツらに囲まれたと思ったら股間にモザイクが掛かった全裸の男が……え? コレは一体どういう状況なんだ?」
「ペットボトルのお茶3L、お前らをキッチリ浄化してやらぁ!」
そして放たれる黄金の輝き。
それはゾンビどもに降り注いで浴びた者から次々と糸が切れたように倒れて行く。
スゲェ、このチートは圧倒的じゃないか……とはいえ、1回には200~400mlしかでないから早く逃げなければならない。
「ほら行くぞ!」
俺は彼女の手を取って倒れたゾンビ共を踏みつけながら出来た隙間を走り抜けた。
クソッ、走りながらじゃ照準が点け辛いな!
「よし、ここまでくれば大丈夫だろ……」
俺たちは逃げている最中で見つけた広い家に駆けこんだ。
この家を選んだ理由は門が頑丈そうだったのと、屋根からチラッと見えたソーラー発電パネルである。
インフラ何それ美味しいの?的な今の状況でも、これなら電気が使える筈だ。
「どうやら家主は既に居ないみたいだな。しめた、水道も電気も生きてる!」
「……」
「冷蔵庫の中は……臭っ!? ああ、中の物は腐ってるなぁ。お、インスタントがあるじゃん!」
「…………」
「醤油に味噌に豚骨に……お、カップ焼きそばにうどんもある。結構種類あるな……」
「………………」
服を着ていない所為だろうか?
さっきから女子校生剣士さんからの視線が突き刺さる様に痛いです。
「ほら、お腹空いてないか? ジュースはないけど水道水か温いお茶はあるぞ? 熱いお茶が良いなら今から沸かすけど……」
「……私をこんな所へ連れて来て、一体どうするつもりですか。言って置きますが、変な事をしようとすればこの剣で切り落としますよ」
「何を!?」
ヤダ、この子の目ってば持ってる刀と同じ輝きを放ってる!?
だ、大丈夫……俺には神様からの加護があるから斬られても大丈夫な筈!
「アイツらの中をそんな恰好で出歩くなんて正気の沙汰じゃない……絶対、狂人の類だ。どうしよう、先輩とは逸れるし変態には絡まれるし……最悪はこの人を」
ギャー!
神様の加護の所為でどんどん敵対に陥っている!?
というか、この加護って友好値に対してマイナス補正高すぎじゃありゃしませんかね!?
「ま、待ってくれ! これには深い事情があってだな。好きでこんな格好をしている訳じゃないんだ!」
「……じゃあ、なんでそんな恰好を?」
「ふ、服が俺を嫌ってるんだよ」
「斬ります」
怖い!?
傷つかないと分っていてもかなりおっかねぇ!
彼女の剣気にガタガタ震えていると、彼女は物凄い目つきをしながら俺のある一点を指差した。
「そもそもそこ、どうなってるんですか。視界に入った瞬間、腰の辺りに光というか靄というか……とにかく白い何かが物凄く気になるんですが」
「お、これスゲーだろ? 神が見せざる映像処理って言うんだぜ。ほら、こんなに動いても大丈夫!」
「こ、腰を振らないでください!」
俺が見せつける様に腰を振って見せると、彼女は顔を赤くして顔を背けた。
ちなみに、この神が見せざる映像処理は俺の肉眼には見えない。
だからショーウィンドウに映った俺の姿を見た時にはびっくりした。
何せ、鏡に映った自分の腰には白い靄が掛かっていて、どんな事をしても剥がせないのだ。
ビックリして思わず腰を振りまくって払おうとした俺は悪くない。
「いいから何か着てください! いい加減にしないと本当に斬りますよ!」
「良いだろう。俺の言葉が嘘じゃない事を証明してやる!」
俺はそう言って、タンスを漁って新品のパンツを見つけるとそれを彼女に見せつけるように掲げた。
「いいか? いまからこれを履くから見てろよ?」
「見ません! いいから早く来てください!」
見ててくれないと困るんだけどな~
仕方なく俺はパンツに足を通して、履いた事の彼女に告げた。
「ほれ、履いたぞ~」
「ふぅ、そうです。それでいいんですよ……」
――ぱんっ!
「……へ?」
「ほらな。人目があるとこうなっちまうんだよ」
彼女が俺を見た瞬間、履いていたパンツが風船のように弾けた。
これこそ俺が服を着られない理由である。
神様から貰った加護の所為で俺は一枚の布すら羽織る事が出来ず、持っていた服を全て弾けさせてしまった。
というか、ゾンビも人目判定に入るって厳しすぎませんかね!?
こっちに来て早々に人目が無いと思って服来たら、折角探した服が全部弾け飛んでビックリしたわ!
「まあ、いろいろ信じられないだろうけど我慢してくれや。腰布すら誰かが見てる前じゃ破裂しちまうんでな」
「あわわわ」
おー、あまりの非常識な出来事に混乱してるわ。
よし、ここは俺が一肌脱ごうじゃないか!
「食らえ、チート能力の一つ! 【鎮めの舞】!」
なんて如何にも必殺技のように叫んだはいいが、実際には俺の踊りに勝手にチート能力で効果が付加されるので踊りは適当でいいのだ。
高い効果を望むのなら完成度が高い方が良いらしいが、混乱した相手を落ち着かせるなら盆踊りのテキトーな踊りでも十分だ。
「ホホイのホイ! ホホイのホイ! ホイホイホイホイ、ホホホイ、ホイ!」
「……何やってるんですか?」
ただこれの弱点は、落ち着いた相手に冷たい眼差しを向けられる事だ……
俺の心の柔らかい部分に冷たい視線が槍のようにグサグサと突き刺さるぜ。
だが、我に秘策アリ!
「ふぅ、どうやら落ち着いたようだな。大丈夫か?」
名付けて、“何事も無かったようにやり過ごす”作戦!
これを使う際は、「ちょっと自分、仕事してました」感を出すのかコツだぜ!
「……貴方の方が大丈夫ですか?」
「はっはっはっ、君が混乱していたようだったから心配だったが、もう大丈夫な様だね!」
「今は貴方の頭が心配です」
「……」
どうやらこの作戦は失敗のようだ……
少女の冷たい眼差しに、俺は膝を屈したのだった。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。




