29話 『マイン』を『私の』じゃなく『機雷』と変換する程度の英語力
やあこんにちは、毎度お馴染みの転生神だ。
最近は幼馴染だった相手が世界を滅ぼす魔王に成ったり、寧ろ主人公が魔王で向こうが勇者になったりして敵対する事が良くある話だよな。
今まで同じ時間を過ごしてきたからこそ、分かる事と分からない事があるんだろう。
まあ、そんな訳で本日の転生業務を始めるとしますか!
「あれ……どこだ此処? 確か俺はゲームのアプデについてのアンケートに答えて……」
「ようこそ神の間へ、君には異世界へ行くチャンスが与えられた。おめでとう!」
「うわ!? 宇祝?」
「よう、丹羽造。君の親友で幼馴染の上野宇祝改め、お前をこれから異世界へと送る転生神だぜ」
「か、かみさま? 宇祝が? え、ドッキリ?」
う~ん、良い具合に混乱してるなぁ。
生まれた時からの幼馴染が実は神さまでしたーとか、俺も相手の正気を疑うな間違いなく。
まあ、嘘でも冗談でもドッキリでもないんだけどな。
「という訳で親友、ちょっと異世界に行ってくんね?」
「そんなコンビニに行くみたいに!?」
「まあ、コンビニよりはちょっと遠いかな」
自転車でひとっ走りって訳には行かないもんな。
というか、自転車で行ける異世界ってどうよ。
「えーっと、これはドッキリとかでからかってるとか……じゃないよな? この部屋、果てしなく広い癖に灯りも無くて真っ白ってどういう原理?」
「神様の不思議パワー」
「……ちゃんと説明する気にはならないのか?」
「物理法則に縛られない魂による五感認識と精神体のみとなった場合の自己認識と確立なんて話を、理解できるまで細々として欲しい?」
「ごめんなさい、勘弁してください。不思議パワー凄いですね」
「それ程でもない。さて、それで本題なんだが……造、お前にはこれから異世界に行って欲しいんだ」
「異世界か……つまり、これって今流行の異世界転移って奴?」
「流石は親友、話が早いな」
まあ、実は俺が小さい頃から教育した結果でもあるんだけどな。
幼稚園の時にはアニメと特撮を勧め、中学ではラノベを勧め、高校ではネット小説を勧め……中学の時にはそれが暴走して、修正するのが大変だったなぁ……
ここまで本当に長かった……
「でもさぁ、幾らなんでも神様が親友の姿ってのは微妙じゃね?」
「は? ……ああ、そうか。違う違う、俺は元々お前を異世界へ送る為に上司に送り込まれてずっとお前の幼馴染をやってた、正真正銘本物の上野宇祝だよ」
「へ? え……は、はぁぁぁ!?」
まあ、驚くよな。
俺だってまさか「幼馴染が本物の神様だったらウケんじゃね?」とか言うとんでもない理由で生み出されて、本当に幼馴染をやらされるとは思ってもみなかったさ。
コレって転生神の仕事じゃねぇよな?
「いや……だってお前、学校の成績は俺と同じでど真ん中だったし、持ってたエロ本は貧乳お姉さん系ばっかだったじゃねぇか!」
「俺の事は暫く置いといてくれ……それより、話を進めていいか?」
「お、おう……色々ショッキングだけど、どうぞ……」
全く俺が持ってたエロ本なんてどこから見つけて来たんだよ。
アレは厳重に隠してあった筈……いやいや、今は仕事に集中だ!!
「説明って言っても、今までお前に散々勧めてきた異世界モノと同じだけどな。滅多に死なない強靭な肉体、容量無限のアイテムボックス、万能鑑定。他にも思い付く能力はほぼ無制限にチート能力をプレゼントするぜ」
「マジで!? スゲー!! じゃあ、無限の魔力と最高の才能は基本だろう。時間操作や瞬間移動みたいな特殊能力も欲しい! そうだ、ナデポとかもできる?」
おお、突然の事なのに色々詰め込んできたな。
昔からマンガやアニメで鍛えてきただけの事はあるな。
「ああ、構わないぜ。他に欲しい能力はあるか?」
「そうだな……いっそ創造魔法とかどうだ? 能力を能力で作ったりとか、無から有を生み出す的な……」
「あー、残念だけど今回に限っては “物を生み出すタイプの異能”はやれないんだ」
「え、そうなの?」
これから行く異世界は、色々な意味でその系統の能力が邪魔になるからなぁ……
先方の異世界神にもくれぐれも渡さない様にって、ぶっとい釘を刺されたし。
「後は……能力コピー? ああ、モンスターテイムなんて言うのも良いよな! それから魔眼系も欲しい」
「おう、思いつくままに言って良いぞ。今回は俺の権限でオプション付け放題だからな!」
「あー、でもこれだけ自由だとなんか裏があるかもって疑っちゃうなぁ~。もしかして俺がこれから行く所ってそんなに危ない所?」
「ハッハッハッ、俺が親友をそんな世界に送る訳ないだろ? 百個のチート能力を持ってても身の危険があるような世界なんかに送る訳ないじゃないか!」
少なくともこれだけチートを詰め込めば身の危険はまずあり得ない。
目の奥で探るような眼差しをしていた造は、俺の言葉に安心して小さく溜息を吐いた。
どうやら、若干緊張してたみたいだな。
「さてと……粗方チートは思い付き終わったかな? それじゃあお前がこれから行く異世界の説明だが……○イン○ラフトってゲームを知ってるよな?」
「あー、うん、ネットでプレイ動画とかは見た事あるよ。実際にはやった事ないけど」
「俺もプレイ動画で初めて内容を知ったんだけど、ああいう自分で一からコツコツ作るのって楽しそうだよな。家とか空中要塞とか地下基地とか作ってみたいよなぁ。間違いなく時間が吸われるからやんねぇけど」
「ああ、うん。それでそれが何?」
「その異世界のイメージはまさにアレだ。地球より広大な土地と、生き物は動物とモンスターと原住民のみ、残りは全てお前自身の手で“作って”くれ!」
「……はぁ!?」
造が素っ頓狂な声を上げて驚く。
大丈夫、お前ならやって来てるはずだ!
「アレって……アレ!?」
「ああ、木や土や鉱石や謎物質を採取して、それらを組み合わせて色々な物を手探りで作って行く。理論上じゃあ巨大ロボットとかも作れるらしいぞ?」
「スゲェ! ……って、ちげぇよ! 山とか海とか砂漠とか、基本的に大自然しかない様な世界に飛ばされるのかよ!」
「大丈夫だって、動物は普通に生息してるし、洞窟とかの暗闇に行けばモンスターが湧いて出るし、数は少ないが原住民のコミュニティも存在してるぞ」
「それのどこが大丈夫なんだ!」
うーむ、結構良い条件だと思ったんだけどなぁ。
何でも作ろうと思えば作れるし、世界を自分の思い通りに作り変えるってロマンじゃね?
「ちなみに原住民は“エルフ”をイメージしてくれ」
「エルフ? なんだ種族的に気難しそうだけど、思ったより良い環境じゃあ……」
「水○しげる版の」
「そっち!?」
「背が低く全身毛むくじゃらで、耳が長く尖っていて木の上で生活し、争いを好まず100年単位で生きるので人間よりも長生きだ。物々交換が主流だから、会話はボディランゲージで通じるぞ?」
「もっと文化をください!」
失礼な、エルフたちにだって立派な文化があるぞ?
獲物を捕る時は道具を使うし、雨避けにテントを作るし、自分の持っている物と相手の持っている物を交換するという知能も持っている。
ただ主食は木の実と生魚で、そのままガブリと食らい付くワイルドスタイルだけどな。
「だがその代り材料さえあれば、欲しい物は簡単に作れる世界だから基本的の物には不自由しない筈さ」
「それって序盤に調子に乗って要らない物を作りまくっちゃう所為で、材料集めに走り回らなきゃいけなくなるフラグじゃない?」
「はっはっはっ」
流石に似たようなゲームで経験があるか。
ゲームの序盤で手当たり次第に作れる物を作った所為で、中盤辺りに部品で使う様なアイテムを作って、肥やしにするってよくあるよな。
「まあ、今から送る世界には倒すべき魔王はいないし、動物を囲って牧場経営でも農場経営もできるし、原住民相手に商人プレイでもいいし、ダンジョンっぽい洞窟はあるから装備を整えれば冒険者モドキも出来るぞ」
「わーい、自由度が高くてやり込み要素が沢山あるぞーって言うと思ったかこの野郎! それ俺、異世界に行く必要あんのかよっ!」
「おう、それはこれから説明するぜ」
というか、それがこの話の肝だからな。
コイツにはしっかり仕事をして貰って、あの世界の問題を解決して貰わねぇといけないからな!
「お前が今から行く世界はな、よく言えば自由度が高くて悪く言えば無法地帯の不安定な世界なんだよ。一応動物や原住民なんてものはいるんだが、魔法とかあるクセにそのリソースを使う奴がいないんだ。その所為で裏面世界とはよく繋がって魔物とかが表面世界に流れて来るから困ってるんだよ」
「待ってくれ、裏面とか表面とかいきなりそんな用語を出されても意味が大体しか分からねぇよ」
「大体で十分だ。まあ簡単に言えば世界には表と裏があって本来は互いに行き交いは出来ないんだが、世界が不安定になってる所為でたまに“隙間”が出来るんだよ。それは本来あっちゃいけないバグなんだが、それの解決方法は世界に飽和しているエネルギーを消費するって方法だけなんだよ」
「あーっと、つまり向こうの世界で俺が色々な物をバンバン作って、エネルギーを消費しろって事?」
「その通り!」
ちなみに余っているエネルギーを他の世界へ分配するという方法もなくはない。
だけど余所の世界へエネルギーを送るには、送るエネルギーに加えて2倍のコストが掛かるから、幾ら飽和状態で消費させたいと言っても無駄遣いしていたら折角のエネルギーが勿体ない。
それにあの世界にある物は壊れると生成した時の7割程度のエネルギーに還元されるから、枯渇の心配はまずない筈だ。
色んな物を作ったり住人や動物が増えて行けば、エネルギーはそれだけ消費されから隙間の発生が防げる。
物が増えれば世界が安定してモンスターや魔物の発生を防げる上に、建物や道具が増えて文明レベルが上がれば原住民のレベルも上がってくれる……かもしれない。
「まあ、とにかくそんな理由でお前には色々と物を作って、結果的に世界を救って貰いたいんだ」
「……いきなり魔王と戦えって言われるよりはマシなんだろうけど、解決方法が迂遠的ないか?」
「迂遠でもこれしか解決方法が無いんだよ。それと向こうでのアドバイスとして、『工房』を作る事を目標にしろ。工房があれば並行して作業が進められるから作業効率は段違いに変わるぜ。特に作業台があればより多くの材料を使って作業できるからな」
「わかった。その辺は探り探りやってみるわ」
「それと、今のお前の身体は前の世界とは比べ物にならないくらい頑丈になってるからな。具体的には高い所から落ちても死にはしないし、満腹状態なら数分でダメージを回復できる。さらに毒がある物や腐ってる物を食っても、一時的に状態異常になるだけで死はしないから食う物に困ったら食っといた方が良いぞ。空腹状態だと一定ダメージを受け続けるからな」
「その辺はゲームっぽいな」
「ついでに言えば死んでもリスポーン出来るから、手詰まりになった時は迷わず自殺しろよ?」
「迷わず自殺しろって凄い言葉だな……」
だって、それ以外に言いようがねぇんだよ。
さて、これで説明は終わったかな。
「んじゃ、そろそろお前を異世界に送るぞ」
「お、おう……本当に魔王とかはいないんだよな?」
「安心しろって、お前は向こうで色々作りながら異世界ライフを満喫してりゃいいんだよ」
さて、期待と不安が入り混じってる親友を異世界へと送るとしますか。
と言っても設定は終わってるから、決定ボタン一つで終わるんだけどな。
起動した瞬間、アイツの足下に魔法陣が展開する。
「おお、魔法陣だ。何かファンタジーっぽい!」
「いや、今の状況自体がまんまファンタジーなんだけどな」
はしゃぎながら転送されて行く親友を見送って、俺の業務は終わった。
ふぅ、随分長かったけど、悪くはなかったかな。
これでアイツとの縁も終わりかと思うと若干寂しい気が……あれ? なんか本体からメールが届いてる。
何々……は? 俺も異世界に行ってアイツを手伝って来い……だと。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。




