27話 モンスターを自力でハントする程度の職業
(´・ω・`)「俺の車がボーナスステージで壊されていた」というスレタイは秀逸だと思う。(小並感)
どうも初めての方は初めまして、そうでない方はこんにちは、わたしが神です。
ありとあらゆる所で転生が行われている今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?
とまあ月並みな挨拶も終えた所で、本日の業務いってみよー。
――パンパカパーン
「うお!? なんだ?」
「おめでとうございます。貴方はわたしが担当する記念すべき百四十一億四千二百十一万三百五十六人目の死者でございます」
――ドンッドンッ! ぱふっぱふーっ!
「偉い中途半端だな!?」
「ちなみに、貴方がここへ来る事となった時の状況の説明は要りますか?」
「……いや、いい」
大変です。
彼の顔が血の気か引いて真っ白になっていますね
ここは気を紛らわせる為に何か話しましょう。
「そういえばこういう話では、主人公が何らかの要因でトラックに轢かれて転生するパターンを『転生トラック』なんて言うそうですよ」
「……うぷっ」
おや、顔色がさらに悪くなって青くなってしまいました。
自分もここへ来る時にミンチになったのを思い出してしまったようですね。
流石にこのままでは話が進まないので、先へ進めましょう。
「改めまして、お疲れ様です。渡楽天晴様、貴方の命は本日を持ちまして終了致しました。どうもこんにちは、わたしが神です」
「……俺の命は限定イベかっ」
おや、顔を真っ青にしながらもツッコミを入れるとは中々見所がありますね。
それではもう少し弄って……いえ、楽しく業務を続けましょう。
「貴方がここへ来るのは天命でした。なので私はそれに従い貴方をここへ導いたのです」
「……つまり、アンタが俺を殺したと?」
「そうなりますね。ミステリー」
「犯人はお前だ!」
なるほどこれが誘導尋問ですか。
分体とはいえ神である私を謀るとは、神の目を持ってしても見抜けませんでした。
「なんか無駄な過大評価をされた気がする!」
「いえいえ、その話は脇に置いておいて」
「置くなよ!」
「お察しの通り、貴方は死亡いたしました。しかし、丁度百四十一億四千二百十一万三百五十六人目という事で、貴方には今の記憶を持ったまま異世界へ転生する権利を差し上げます」
「死んだのはどっかの誰かさんの所為だけどな!」
まあ、何と酷い方なんでしょうね。
その方のご両親の顔を見てみたいですね。
ちなみに私は本体からニョキッと生えて来ただけなので、親と呼べる存在はいません。
「というか、偉く中途半端な数だな。なんか理由でもあるのか?」
「いえ? 偶々あなたが死亡して、偶々その数字だっただけですが何か?」
「はぁ!? じゃあ、さっきの天命がなんちゃらは何だったんだよ!?」
「神が一々数十億人もいる人間の中から、一人だけを態々殺す為に動くと思いますか? わー、自意識過剰なんじゃないですかー?」
「ムカつくなお前!」
さらに人間に限らず、地球上の全ての生物を我々で担当しているんですよ?
そんなとこまで手が回せるわけがないじゃないですか。
死神だっていつ死ぬかは分かりますが、いつでも死なせる事は出来ませんよ。
基本、我々の業務形態は受け身なんですよね。
「まあ、私は日本にいる人間の一区域を担当しているので、貴方の事は前々から目を付けていましたけどね」
「目を付けられてた!? 一体いつから見てたんだよ!」
ふふふ、それを言ったら色々とアレな事になるけどいいんですか?
まあ、面白いので言いませんけどね!
「おはようからおやすみまで、貴方の暮らしをずっと見つめていたんだぞ☆」
「その急なぶりっこ口調が気持悪い!」
「まあ、幼少時の記憶は殆ど知っていると思って下さい。ハッ、幼い頃からの記憶を共有しているって事は、私は貴方の幼馴染と言っても過言ではないでしょう!」
「一方的に記憶を共有している相手の事を、人はストーカーと呼びます」
なんと、いつから人間というのはそんなに冷え切った関係になってしまったんでしょう。
昔の恋愛はストーキングや不法侵入はデフォだったというのに。
「そんな数百年も昔の常識を引っ張り出してくるな」
「なんですか、私が古い女だとでも言いたいんですか?」
「言ってねぇよ!?」
全く、女性にそんな事を言うなんてデリカシーがありませんね。
こう見えても私は生み出されてから日が浅いんです。
ピカピカの新品女ですよ。
「まあ生まれた時からこの姿なので、私に幼かった時代はないんですけどね。ロリコンの皆さん、残念でした」
「一体何の話だよ!?」
「いえ、一部の業の深い方々に少々牽制を……コホン、それでは改めてご説明いたします。貴方は死亡し、この神の間へやって来た事で今の状態のままで転生するという機会を得ました。但し転生できるのは所謂剣と魔法のある異世界ですのでご注意ください。一応、異世界でも生きて行けるように異能力を授けますので、全く適応できずに死亡する事はありません。全く……これだけの説明をするのにどれだけ脇道に逸れてるんですか……」
「殆どアンタの所為だけどな!」
そう言えば先ほどから私をアンタ呼ばわりですか。
私は仮にも下っ端とはいえ神ですよ?
ここは上下関係をハッキリさせておいた方が良いでしょう。
「仮にも神様にアンタとは失礼ですよ。私の胸三寸で貴方の全てが掛かっている事をお忘れなく」
「がっ!? ぐっ……卑怯だぞ!」
「ふっふっふっ、何とでも言うが良い。私が神です」
ああ、彼の悔しそうな目が心地いいですね。
貴方が負け犬でアイム・チャンピオン!
「……分かったよ。もう余計な事は言わないし、ツッコまない」
「いえ、ボケたのにツッコミが入らないと困るので、そちらは続行でお願いします」
「ボケるつもり満々かっ!」
ボケるなとは……私に息をするなというつもりなのでしょうか?
彼にはもう少し心に余裕を持って貰いたいですね。
これだから現代人は余裕が無いと言われるんですよ。
「……何故だろう。物凄くイラッときた」
「おやおや大変ですね。その年で更年期ですか?」
「もう死んでるから関係ねぇよ!?」
じゃあ、きっと便秘なんですね。
ダメですよ、ちゃんと好き嫌いせずに野菜も食べて食物繊維も取らないと。
「私は肉食系女神なので肉をガンガン食べますけどね」
「え、何の話?」
「もう……また話が進んでないじゃないですか」
「話を逸らしたのはそっちですよね!?」
何故みんな、私に気持ち良く仕事をさせてくれないですか。
こんなブラックだと……私、転生業務をしたくなくなってしまいますよ……!
まあ、こんな霧が深くなりそうな話は止めましょう。ネットで聞きかじった程度しか元ネタは知りませんし、ここは私が大人の度量を見せるとしましょう。
「仕方ないですね。今度は話の邪魔をしないでくださいよ」
「物凄い理不尽を感じる」
それでは転生業務を続けましょう。
ちゃんとお仕事をしないとお仕事の評価に響きますからね!
「貴方に転生して頂く世界は、所謂剣と魔法のファンタジーな異世界です。但し、その世界では巨大なモンスターが蔓延って居る為、ハンターと呼ばれる職業の方々が定期的に狩る事で何とか人間とモンスターの均衡を保っています」
「あー、うん。知ってるゲームに似てるヤツがあるわ」
「はい、リアルモンスターをハントするゲームと思って貰って構いません。というか元ネタはぶっちゃけそれです」
「元ネタ!?」
「とある世界神が『あのゲームをリアルに再現してぇ~』とか言って始めたら、予想以上に人間ハードだったんで急遽助っ人を要請されまして」
「そんな理由!? というか神様もゲームすんの!?」
そりゃしますよ。
お陰で引き篭もりまで出てきて、ノリと気分でハマったゲームの要素を自分の仕事に取り入れようする輩まで出てきましたし。
全く、銀河規模の大きさのロボットなんて渡されても、どうしろっていうんですか。
「ちなみに今は一周回ってSFCが流行ってます」
「それはまた懐かしい物を」
「4人対戦用マルチタップは未だ現役ですよ」
「あーあったあった、そんなの」
アレがあると『爆弾男』とか『ピーチボーイエレクトリックレールロード』などで遊ぶ時に捗りますからね。
まあ、私はよく爆弾の配置をミスって開幕でドボンする事が多いんですけどね。
「まあ、そんな世界なのでまず貴方の身体能力を超人的に引き上げる為、赤ん坊からやり直して頂きます。というか、ここからではステータスの数値は弄れても体そのものを弄るのは難しいので、崖から帯び下りても無傷な体なんて0から作り出さないと無理ですよ。ああ、一応は前の容姿をモデルにしますが何か要望はありますか?」
「格好良くなくていいから普通で、十人並みの容姿が良い。後、茶髪とか青目とか落ち着かないから黒髪黒目で」
「クソ面白くありませんね。もっと銀髪でオッドアイとか中世的な超絶美形で悩殺スマイル持ちとか、爆笑必至黒歴史確定な奴にしません?」
「そんなネタに新しい人生を捧げる気はねぇ!」
「ぶーぶー」
そんな安定した人生目指してどうするんですか。
異世界で転生で非日常なんですよ?
メアリ・スー如きデウス・エクスマキナ的ご都合キャラになれるんですよ?
「もっと劇的な人生送ろうと思いませんか?」
「ここにいる時点で十分劇的だよ!」
仕方ありませんねぇ。
じゃあ、いつもの奴をやりますか。
「あ、そうそう、異世界転生基本能力パックとして『異世界言語』と『アイテムボックス』を付加しますので使い熟してくださいね」
「おう、って言ってもどう使い熟せばいいのか分からんけどな」
「そこはもう色々アレするんですよ」
「エライいい加減だな!?」
ソレはソコをアレしてコレをソウするんですよ。
さてと、もうやる事は終わりましたね。
それではそろそろ向こうへ送る準備を……ふむ。
「そういえば、前世の記憶は初めからあった方が良いですか? それとも一定の年齢から思い出したいですか?」
「え、そんな選べるの? じゃあ5歳くらいで」
「分かりました。じゃあ初めからにしておきますね」
「聞いた意味!」
意味ですか?
そっちの方が面白いからですが何か?
彼の足下に転生用の魔法陣が展開され、ゆっくりと登って彼の姿を消して行きます。
「では、これより貴方は異世界へ転生します。その先には前世よりも過酷な未来が待っているかもしれません。しかし、貴方は本来ある筈のなかった第二の人生を送る訳です。その意味をよく噛み締め、決して絶望に膝を折る事無く強く生きてください。『始めチョロチョロ中ぱっぱ赤子泣いても蓋取るな』というように、お米を炊くのは火加減が重要です。中途半端だと芯が残ってしまい、やり過ぎると黒焦げになってしまう。しかもその焦げは洗っても中々落ちないんですよね。おこげを作ろうと思ってちょっと放置しても焦げ付く場合があるので注意してください。特に刀製作に必要な和鋼は『たたら吹き』という日本独自の製鋼法で作られています。絶えず火を焚き続ける為、山奥で行われる事が多く禿げ山が出来るほどの木材を消費したそうです。また日本刀から生まれた言葉も多く、『相槌』や『切羽詰まる』などの……」
「いやいや長い長い! というか何でこれこんなゆっくりな訳!? もっと早くなんないの!?」
「おかしいですね、1秒で1mm進む設定になってるんですけど」
「いやいやいや!? 俺の身長が170cmだとしても1700秒で約28分かかる計算なんだけど!?」
「じゃあ、そのまま頑張ってくださいね。私は次の方の準備を勧めなきゃいけないので」
「放置するなよ!?」
それ一度動かしちゃうと設定変えられないんで諦めてください。
それから私は、彼がゆっくり消えてる脇で次の転生者を迎える準備をしていました。
言い忘れた事があって言おうとしたら、彼の頭の先が消えて魔法陣も消滅する所でした。
……さてと、次の方はどんな方でしょうね。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。




