26話 とある現代の魔法高校生
(´・ω・`)学校を出てから、「ああ、学校の勉強は社会じゃ役には立たないけど、知識の土台ではあるんだなぁ」と実感します……
あ゛~、調子が悪い……あっ、皆さんお久しぶりです。転生神です。
季節の変わり目で体調を崩す事って良くありますよね。
はい、自分もやらかしました……ストーブを焚いていて暖かいからと言っても眠りこけると、最近は3時間ぐらいでタイマーがあるんですよね。
火事にならないのは良いんですけど、一々消えるのが面倒臭いです。
ああ、本日も業務を開始します……
「ようごぞ……神の間へ……ゴホッ」
「え、何? っていうか、顔が真っ青だけど大丈夫?」
「だ、大丈夫です……」
本日の転生者は羽柴隆則様です。
彼は友人たちに連れられて、山へハイキングに行った先で足を滑らせて、そのままここへ来たようですね。
という事は本人も状況を良く分かっていないみたいですから、ちゃんと説明しないと。
「あ……は、元……ぃ……た。し……ぃ…………」
「あ~うん、何言ってるのか全く分からないんだけど」
思ったように声が出ない……というか、頭がガンガンと痛いですし、一旦帰っちゃだめですかね?
……はい、ダメですよね。
「コホン、私は神。貴方は死んでここへ来た。OK?」
「え? あ、はい……はい?」
「ケホッ、貴方の死亡、私は予想外。貴方、天国行けない。OK?」
「えーっと、君は神様で俺は死んじゃってて、でもその死は神様には予想外の事? で、俺は天国に行けない……つまり、予定になかったから俺を天国へ行かせる事が出来ない?」
私は手で大きく丸を出す。
たったアレしか言っていないのに、素晴らしい理解力ですね。
しかし、これでこれからの説明をする訳にも行かないので、もう少し頑張りましょう。
「なのでゲフン! これからゲホッ! 貴方ゴホッゴホッ! 貴方には、いせゲホッ! ゴホッ! 異世界へ行ってゴホッ! 行って貰います。ゴホッ」
「たんまたんま、情報が全然入って来ない」
「異世界へ! ゲホッゴホッ! 行ってもらゲホッ! います……」
「異世界……って何?」
「ゲホッ!?」
今、予想外の言葉が聞こえたんですけど!?
ここへ来る人って、一定の趣味を持った方が来るんじゃなかったんでしたっけ!?
「異世界ってゲホッ! 言うのは……貴方の居た世界とはゲホッ! ゲホッ!」
「話が全く分からない……そうだよ、神様なら自分の風邪くらい簡単に治せないのか?」
無茶言わないでください。
アレって態々車の点検で螺子一本まで分解して調べるような仰々しい物なんで、風邪程度でやりたくないんですよ……
という意味を込めて私は手で×を作る。
「無理なのか……そうだ! なんか筆談なら少しは楽なんじゃないか? そうしてくれよ」
「紙……筆……ないんですゲホッ!?」
フッフッフッ、私がその方法を思いつかなかったとでも思いますか?
但し、量産型でキャパがギリギリの私では、転生業務に必要な物以外を追加できる権限も余裕もないんですよ……ハハハ。
それに頭はがんがんするし、眩暈も酷いので真面目に字が書けるとも思えないんですよねぇ。
何故か心が切なくなりながら、その事を何とかジェスチャーで彼に伝えようとして見る。
「えーっと……良くは分からないけど、筆談はできない……のかな?」
その言葉に私は手で丸を作った。
全く、何でこんな状態になってまで仕事しなくちゃいけないんでしょうかね……
「ゲホッ、貴方には、全く体系が異なる世界へ転生して頂きます。ゴホンッ、行って貰う世界は、元の世界に魔法が存在する世界だとゲホッ、考えて貰って結構です。ゴホッゴホッ」
「あ~、つまりマンガとかに出てきそうな世界って事?」
彼の質問に私は首を縦に振った。
流石はマンガ大国の日本人ですね。
例え一般人でも多少の知識は持っているので助かります。
「でも、魔法がある世界って想像がつかないんだけど……」
「ゴホン、その世界では魔法が科学のようゲホッ! ゲホッ! のように、体系化され学問として……ゴホンッ! 存在している訳です。人は生まれた時からゴホッ、属性を宿していて、時には持っている属性で差別を受けたりもしているようですね。ゲホッゲホッ」
「えーっと、つまり呪文を唱えてチチンプイプイって訳には行かないのか」
「ですね。寧ろ超能力にゲホッ、近いかもしれません」
「なるほどね」
まあ、魔法についての詳しい説明は向こうに着いてからで良いでしょう。
どうせここで説明しても、大して意味もありませんし。
「それではゴホッ、これから転生特典としてゴホン、チート能力を差し上げます」
「チート? ってなんだ?」
oh……そこもですか。
「ゴホンッ、転生先の世界でも生き残り易いようにゲホッ、転生する方に特殊能力を差し上げますゴホン、我々は転生者の方には生き残って頂きたいのでゴホッゴホッ」
「なるほど、幾ら同じ日本でも少し違えば危険もあるか……」
ええまあ、どっちかと言うと今回は派手に活躍して頂きたいという、娯楽的な面の方が強いんですけどね。
「向こうへ着けば好きに生活して頂いて構いませんゲホン、普通に学生生活を謳歌して貰って構いませんし、青春を謳歌するのもいいですよねゲホッゲホッ! 湧いて出る妖魔を狩っても構いませんし、天下一魔導大会に優勝して魔王を名乗ってもゴホッ、構いませんよ? ゴホッゴホッ」
「待ってくれ、最後の明らかにおかしい2つは何だ?」
おかしいでしょうか?
魔法なんて物があればモンスターみたいな物が湧くのは当たり前ですし、技術が一つ増えればそれを競う為の大会が開かれるのも当たり前だと思うんですけど……
「特に妖魔ってなんだよ。向こうの世界じゃあそんなのが出るのか?」
「ゴホン、そっちですか。はい、出ますよ。簡単に言えば妖魔とは『魔力の残りカスが固まった物』と考えてください。それが人間の想像力と結びついて所謂モンスター化して街にたまに出現したりします」
「……おい、思った以上に危ないぞ異世界」
まあ、アメリカのニューヨーク市街を日本人が一人で歩き回る程度には危険ですよ。
逆に言えばそれ以外に殆ど危険はない訳ですし。
「ケホッ、妖魔は夜にしか出ないのでゴホッ、人気のない暗い夜道などを出歩かなければ比較的安全ですよゴホッ。それではチート能力のゴホッ、説明に入りますね」
「ああ、そう言えば特殊能力が貰えるんだったな」
チートなんてないと魔法がある世界じゃあやっていけませんからね。
ちなみにこの世界の魔法とは、術者のイメージを魔力に反映させて魔法を作るタイプなので幼少時から訓練もしていないのに魔法を使おうとしても、付いてもいない尻尾や羽根を動かせと言われているのも同然なのです。
魔力保有量が人類最高であっても、補助輪付きじゃあ宝の持ち腐れですよね。
「所で能力は広く浅くとケホッ、狭く深くならどちらがいいゴホッ」
「それはどう違うんだ?」
「一つは即席で使い捨ての魔法を作り上げる『簡易魔導事典』……もう一つは全ての魔法の才を1つに集約する『一振りの牙』ゴホッ! 前者は応用性を斬り捨て種類の豊富さに特化……後者は一つの魔法を深く習得する事がゲホッゲホッ」
「前者はゲームに良くある使い捨てアイテムって感じか? でも、後者はどの程度の物か想像もつかないが……」
「ゴホン、例えば『火を操る魔法』だと熱や光、燃焼といった火の力そのものを操るまでに至れます。こじつけて活性や破壊、生と死からの円環などにまで発展が可能です」
「そこまで広げられるのか……それだったらどちらかを選ぶ必要があるの?」
いえいえ、これは成長しないと使えないので正直使い辛いですよ?
形式化された魔法が一通り使えるか、自分の才能を極限まで育てられるかの違いなのでどっちも厄介事の種には変わりませんね!
「……決めた。後者で頼む」
「その心は?」
「初めから色々使えても、自分に使い熟せる自信が無い」
「分かりました」
まあ、努力すればしただけ上がりますし、転生系に良くある『赤ん坊の頃から訓練したら魔力が増えた!』なんて事もできますよ。
ただこれから行く世界とは魔法体系が微妙に違うので、学校の授業とかでは評価されないかもしれませんけどね。
「それではゲホッ、そろそろ向こうの世界へお送りいたしますね」
「ああ、色々とありがとう……御大事にな?」
もう、二度と冬場は寝落ちしたりなんかしないよ。
来週には元気に走り回る私の姿がお送りできるでしょう!
私がそんな事を考えながら拳を握ると、何故か彼は苦笑いをしていました。
解せぬ……
「えーっとそれで、俺はどうすればいいんだ? 魔法的な物で飛ばされるか?」
「いえ、今回は落とします」
「はい?」
という訳でー、今週のビックリドッキリトラップ~ポチっとな。
私が手元のボタンを押した瞬間、彼の足もとが消えて彼と目が合いました。
目を見開いている彼にニコリと笑い返すと、そのまま視界からフェードアウトしました。
「仕掛けは正常に稼働っと……ケホッ、通常業務と製造神からの依頼を同時に熟さなくちゃいけないのが神様の辛い所ですねゴホン」
あ~、本当に調子悪い……
今日は早めに上がって寝る事にしましょう。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。
次回は2月28日を予定しています。




