番外5‐5 異世界で俺は白米を炊く 前菜編2『高山田正大の場合』
(´・ω・`)思い付きで設定を作るもんじゃありませんね……
結局、泣く泣く削って使うのなんて精々3つぐらいです……
覇食細胞によって強化された嗅覚が、森の中にいるモンスターを嗅ぎ分ける。
「翠玉大蛇発見!」
素早くアイテムボックスから取り出した投擲用ナイフを投げつける。
ナイフは真っ直ぐとエメラルドボアの眉間を貫き、絶命させる。
しかし蛇系のモンスターは死んだ後も暫くは反射で動く為、完全に死んだのを確認してから近づかなければならない。
「おいおい……あのモンスターを一撃かよ」
「ハッ、アサシン舐めんな。あんな弱点丸出しの奴ならこのくらい当然だ」
中には魔法を使って姿を隠して来る奴や、全身を鎧の様な鱗などで覆うモンスターもいるからな。
それにアサシンは気配遮断によって接近し易くクリティカルが出し易い分、攻撃力と防御が低いから一撃で仕留めないと、発見されてまず2撃目はない。
「さて、解体解体っと」
俺は鰻を捌く要領で目を杭で打ち抜いて固定し、15mはあろうかという腹を掻っ捌く。
とりあえず、俺にはこのランクの素材は必要ないので、覇食細胞が俺の五感を通して教えてくれる、このモンスターの一番美味い部位をだけくり抜いて後は放置する。
「おい、取るのはそれだけなのか? 牙や鱗は要らんのか?」
「俺はコイツを食う為に狩ったんだ。残りは要らんし邪魔だ」
「こんなバケモン狩っといて、マジかよ……」
『灰鱗竜の爪』の槍使いが信じられないような俺を見る。
あえて言わないけど、ソイツの素材より投げたナイフの方が高いからな?
というか、入り口付近のモンスターにビビってるって、コイツらホントに奥まで行けんのか?
「俺としては早くコイツを調理して食いたいんだが……」
「おい、こんな所で火を焚くなんて自殺行為だぞ! 全く、そんなに強いのにこんな常識も知らないのか!?」
今日はやけに槍使いが突っかかってくる。
モンスター避けのアイテムを使えばいいのにと思ったが、この辺のモンスターに効かせるにはさらに上のランクのモンスターの素材が必要だからある訳もないか。
火が使えないと真面な調理ができない……ぐぐぐ、これじゃあダイヤキャンサーを食う前に餓死する!
「なあ、もっと早く進めないのか? 俺には俺の用事があるから、あんまり悠長にしていられないんだが」
俺の死活問題から何気に言った言葉だったが、それを聞いた槍使いは顔を真っ赤にして声を荒らげた。
「っ! ふざけんな!! これ以上早くなんかできる訳ないだろっ! 俺たちと来ているからって好き勝手言うなよな!!」
「まあ待てケビン、だが確かに彼の言う通りだ。これでも精一杯なのだ、これ以上無理に急げば全滅は必至だ」
「どんな理由かは知らんねぇけど、我慢してくれぇや」
おいぃ?
何でコイツら、俺が護衛されているみたいになっているんだ?
元はと言えば、リーダーの髭のオッサンが無理矢理着いて来ると言ったから一緒に来た訳で、コイツらが居なければ昨日の内に『世界の奈落』の入り口まで着いて、1日目はそこでキャンプして2日目は中を探索、3日目で帰ってくるつもりが飛んだ大誤算である。
ついでに好きに食えないのがストレスに拍車をかけていた。
「おい……一つ言って置くぞ。俺は一人でもここまで来れた。だがそこのオッサンが無理矢理にでも着いて来るって言うから同行を許可したんだ。これ以上、俺に文句があるなら……“食うぞ”?」
「「「「……!?」」」」
ああ、体中が空腹を訴えている。
ただでさえ、今までは消費した分のエネルギーを補填してただけだったのが、ここへ来て一気に減食した所為で僅かに溜め込んでいた分すら消費しているようだ……
「……はぁ、もうお前ら帰れよ。この先はこんなもんじゃないし、俺だってお前らに付きやってやれるほど時間もないんだよ。なっ、『奈落』を目指すならまた今度付いて来ていいから良いから、マジお願いします」
俺は土下座する勢いで『灰鱗竜の爪』に懇願した。
そもそも俺の目的はこの世界の美味い物を食って回りたいのだ。
その為には変に注目されるとゆっくり飯は食えないし、事件にだって巻き込まれる確率が上がるだろう。
だからと言って、山などに引き篭もって生活するよりも、塩や香辛料を簡単に手に入れるのならばやはり人里に行った方が早い。
だが、その為に不味い物を態々食うのは本末転倒であり、俺の目的にそぐわない。
俺のそんな様子に、髭のオッサンが困惑した様子で声を掛けた。
「君は……1人で『世界の奈落』まで行けるのか? 存在を確認はしているが、未だ誰も到達した事が無い最奥の秘境へ……」
「秘境かどうかは知らないが、俺はあそこの奥にいるダイヤキャンサーを食わなきゃいけないんだ。こんな所でチンタラしていられるか」
「ダイヤキャンサー? 聞いた事のないモンスターだが……」
「アレは『世界の奈落』の固有種だからな。ソイツを捕まえる事が出来れば、俺が抱えている問題は一気に解決する筈なんだよ」
俺の言葉に髭のオッサンが何やら考え込んだ。
他の三人は髭のオッサンに判断を委ねる様で、ジッと髭のオッサンが答えを出すのを見つめていた。
数分間、その状態が続いたが髭のオッサンが徐に顔を上げた。
「……実は我々は国からこの辺の調査を依頼されてここへやってきたのだ。そして君の噂はかねがね聞いて居たのだよ。年に似合わず凄腕の冒険者の少年がいるとね」
「はなっから目を付けられてたのか」
俺の呟きに髭のオッサンは頷いた。
「毎日一定量のモンスターを狩っていれば、嫌でも目を付けられるに決まっているだろう。普通ならばモンスターとの戦闘は週に3度でも多い方だというのに、これは異常だ」
「何?」
マジでか。
この世界の人間はレベリングとかしないのかよ……
ああ、そうか。 当然だがこの世界は死んだら終わりだから、無茶なレベリングは出来ないのか。
常に安全マージンを取った苦戦しないレベルの戦闘をし続けなければならない……そりゃ、レベルも上がらんわな。
「……話は分かった。じゃあ、ここで別れていいんだな。俺にお前たちを付いて来させる理由もない。俺、超腹減ったし」
「ま、待ってくれ。こちらにも仕事が……」
「こっちは命が掛かってんだよ。じゃあな」
そうと決まれば遠慮はいらない。
時間が惜しい俺はコイツらに後を付けられないように、足に力を篭めスキル全開のトップスピードで走り出した。
木々の間をすり抜けて、景色がビデオの早回しの様に過ぎ去ってゆく。
気分はジェットコースターだな。
途中でエンカウントしたモンスターを置き去りにしつつ、俺は目的地である『世界の奈落』の入口へと到着した……が。
「くっ、ここに来て……!」
入り口が見えた事で今まで張っていた緊張の糸がホンの一瞬だけ緩んでしまった。
そして、ソイツはその一瞬の隙を見逃してはくれなかった。
――ギュルルルゥゥゥ!!
まるで魔物の唸り声か、はたまた地響きの如く周囲に鳴り響いたのは……俺の腹の虫だった。
今までの足りない食事、ここへ来ての減食、そして奴らを撒く為と時間短縮の為にトップスピードで掛けてきたツケが僅かに開いた隙間から押し寄せてきた。
猛烈な空腹に思わず膝の力が抜け、その場に倒れ込んでしまう。
「クソ……あと少しだってのに!」
まだドラゴンを食っていない、ゲーム時代に実際に食べてみたいと思った食材も食ってない、この世界で……より高みを目指し食ってみたい!
こんな所で俺は死んでいる場合じゃねぇっ!
「おれに……俺に、もっと食わせろっ!!」
【状態:『飢餓』によるHP減少を確認しました。スキル【自食回復】を発動します】
俺の叫びに反応したのか。
俺の視界にアイコンが現われ、スキルが発動した。
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【自食回復】
『豪食細胞』の派生スキル。
状態『飢餓』によるHP減少を無効にする代わりに、経験値が減少して行く。
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発動したスキルの説明画面を見た俺は
ステータス画面を開いて確かめると、確かに経験値を示すバーがガリガリと減って行っている。
目算だが、このペースで経験値が減って行けば5分でレベルが1つ下がる。
「……これは早く食べないと死ぬな」
俺は力の抜けた足に再び力を入れて立ち上がり、アイテムボックスから気休めに飴玉を数粒取り出して口に放り込む。
ゲーム時代には庭のように駆け回っていた場所とは言え、万全とは言えない状態で始めてくるダンジョンに、俺はナイフの柄を握り直して気合を入れ、光をも呑み込みそうな漆黒へと飛び込んだ。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。




