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転生業務日誌 ~転生神はつらいよ~  作者: 酔生夢死


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21話 乙女の夢見る職業は

(´・ω・`)乙女と聞く度に、自分は某ゲームで若本御大が演じられた傾国の漢女キャラが真っ先に頭に浮かんでしまいます……

や、ここの主人公は極普通の女の子ですよ?

 やあ、僕は転生神の中でも極めてレアなマスコット型転生神だよ。

 本日の転生業務は、何でも最近は乙女ゲームの世界への転生が流行っているらしくて、そんな世界を作った世界神から転生者(プレイヤー)を連れて来いって言う要望らしい。

 そんな事の為に態々僕みたいなタイプの転生神まで作って……全く意味が分からないよ。


「そんな訳で白河明日香さん。17歳の若さで死んでしまった君に新たな世界でやり直すチャンスを差し上げます」


「えーっと……ありがとうございます?」


 うむ、まだ彼女は現状を理解できてないみたいだね。

 まあ確かに通学途中に電車を待っていたら、よろけたリーマンに後ろから突き飛ばされて、そのままホームに入って来た電車にグシャリしちゃったから、現状を把握する暇もなかったよね。

 まあ、したらしたでパニック起こすだろうけど。


「僕は君たちで言う神様さ。本来、君はまだ死ぬ予定じゃなかったんだけど、こちらの手違いで君をここへ呼んでしまったんだ。本当ならすぐにでも君を元の世界へ蘇らせてあげたいんだけど、蘇らせるための器が無いから無理なんだよね……その代わりと言ってはなんだけど、君を異世界へ所謂チート能力を付けて転生させてあげようっていう訳さ」


「おお! つまり、異世界転生って奴ですね!」


 あの世界のこの世代は本当に話が早いなぁ。

 まあ、こっちも説明が楽でいいけど。


「うん、その認識で構わないよ。で、君に転生して貰う世界だけど、簡単に言えば乙女ゲームの世界なんだ」


「……え、そこはファンタジーな世界じゃないんですか?」


「……うん、最近はあっちの世界も転生者が増えすぎちゃってちょっと制限が掛かってるんだよ」


 咄嗟にした言い訳を内心で「どんな理由だよ!」と思いながらも、彼女に説明した。

 まあ、間違ってはいないけど世界なんてそれこそ無数にあるんだから、転生者の制限なんか掛かる訳が無いんけどね。


「そうなんですか……折角だったら冒険者とかやって見たかったんだけどなぁ」


 なんか見た目は普通の女の子なのに、やけに男の子っぽい趣味だなぁ。


「まあ、その辺はしょうがないよ。それでチート能力なんだけど、君の場合は……うわっスッゲ、【キャラクターメイカー】に決定しました」


「キャラクターメイカー?」


「まあ、簡単に言うとあらゆるパラメータを自分で設定できるって事。ついでに転生ポイントって言うので“スキル”も手に入れる事が出来るよ」


「おお! それは凄いです!」


 まあ、スキルって言っても勉強とか運動とかを補助するスキルだから、ファンタジーな世界と違って取っても意味が無いのばかりだけどね

 僕はキャラクターメイカー用に小豆色の家庭用ゲーム機とテレビ、それに机と椅子を呼び出す。


「はい、これで好きなだけ自分の転生後のキャラを弄って良いよ。終わったら僕を呼んでね」


「はーい、うわ~これってかなり昔のゲーム機ですよね。初めてみました。あれ、ボタンが2つしかないですよ?」


 やれやれ、カセットをフーフーしていた時代を知らない世代はこれだから。

 でも、25年も経ってからアレは故障の原因になるからって遅いよ!

 僕なんかガンガンやってたわ!



 ~ここからは転生神がいないので音声だけでお送りします~


「あれ? これってパラメータにもポイント上下できるんだ。ああ、でも筋力とか学力とか魅力とか、何か普通のステータスしかないや……」


「おお、スキルが沢山。あ、隠しページめっけ。へぇ、設定かぁ~」


「『対応するステータス』を“異世界”にして、『表示するスキル』を“全部”っと」


「おお! さっきまで表示されていなかったスキルがこんなに! おや、筋力上昇10%かぁ……閃いた!」


「出来る……出来るぞ! これが私の考えた最強のキャラクターよ!」


 …………



 ふう、アレから一日経ったけど全然お呼びがかからないなぁ。

 ちょっと様子を見てみるか。


「あ、神様。今、丁度設定が終わった所ですよ。これで良いですよね?」


「あ、今終わったんだ。随分と掛かったね。どれどれ……」


― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

白河明日香

 AGE:17 SEX:F

 Lv1 HP:120/120

 MP:300/300 SP:300/300

 筋力:120

 耐久:100

 敏捷:180

 知力:60

 精神:150

 運 :10

スキル:『異世界言語』 『鑑定』 『アイテムボックス』 『英雄覚醒』

『剣術』Lv10 『格闘術』Lv10 『暗殺術』Lv10 『変装』Lv10

『カウンター』Lv10 『気配感知』Lv10 『心眼』Lv10 『気配遮断』Lv10 『自動回復』Lv10 『状態異常耐性』Lv10

『舞踏』Lv10 『軽業』Lv10 『立体機動』Lv10 『料理』Lv10 『解体』Lv10

― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


「ちょっと待てや!」


「きゃ!?」


 何じゃこれ!?

 どこの剣士のステータスだよ! いや、剣士でもレベル1でこれはないよ!

 しかも、何サラリと固有技能(ユニークスキル)なんか取ってるの!?

 『英雄覚醒』なんてレア中のレアスキルで、0を1にするほぼ反則スキルじゃないか!


「何なのこのステータスは! 僕、君に言ったよね? 転生するのは乙女ゲーの世界だって! 何で剣術とか暗殺術とか取ってるの!? イケメンを狩る気!?」


「いやぁ、意外と世の中って物騒だからコレくらいは必要かなぁって」


 いやいやいや、このステータスなら冒険者になれば即上位に食い込めるよ!

 どんだけ冒険者になりたがってるのさ!


「兎に角、このステータスは却下! 作り直して!」


「はーい……ちぇ、折角作ったのに」


 全く、なんで普通の現代の日本であんな戦闘のプロが必要なんだよ。

 全然意味が分からないよ!



 ~再びここからは転生神がいないので音声だけでお送りします~


「あ~あ、折角作ったのにダメだしされちゃった……」


「でも剣とか使ってみたかったなぁ……あっ」


「コレをこうして……ああ、でも足りないかな」


「おっ、このスキルは使えそう……」


 …………



 ……アレから4時間たったけど、そろそろ良いよね?


「そろそろできたかな~?」


「はい! 今度こそ自信作です!」


 何故だろう……彼女の自信満々な顔を見ると物凄く不安になる。

 僕は謎のモヤモヤを抱えながらテレビを覗き込んだ。


― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

白河明日香

 AGE:17 SEX:F

 Lv1 HP:120/120

 MP:300/300 SP:300/300

 筋力:60

 耐久:100

 敏捷:160

 知力:150

 精神:140

 運 :10

スキル:『異世界言語』 『鑑定』 『アイテムボックス』 『魔王覚醒』

『属性魔法』Lv10 『神聖魔法』Lv10 『精霊魔法』Lv10 『召喚魔法』Lv10

『魔力消費削減』Lv10 『無詠唱』Lv10 『魔力操作』Lv10 『気配感知』Lv10 『自動回復』Lv10 『状態異常耐性』Lv10

『記録術』Lv10 『演奏』Lv10 『交渉』Lv10 『調合』Lv10 『料理』Lv10

― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


「僕の話の何を聞いてたんだ!」


「きゃ!?」


 僕は思わず彼女の額にチョップをしてしまった。

 しかし、そんな事をしてしまった僕の気持ちも分かって欲しい。

 彼女の転生する先は現代の日本を舞台にした乙女ゲームの世界だ。

 決して、ドラゴンが空を飛び妖精が歌い踊る剣と魔法の世界などでは断じてない。


「しかも『魔王覚醒』!? 一体どういう事だか意味が分からないよ!?」


 さっきは確かに固有技能の『英雄覚醒』が付いていた筈なのに……

 そこで僕は奇妙な事に気が付いた。


「あれ? 幾らなんでも、転生ポイントでこれだけのスキルを揃えるって無理がないか?」


「ああ、それはですね。ちょっとした裏技があるんですよ!」


「裏技?」


 楽しそうにウキウキと解説を始めた彼女に、僕は嫌な予感に溢れていた。


「ほら、ここの筋力とかの数値ってポイントで上下しますよね?」


「うん、そうだね」


「これって数値を0まで下げられるのは知ってました?」


 当然知っている。

 何せこのシステムを作ったのは転生神(メイン)だからだ。


「次に、こっちに各ステータスを補助するスキルがありますよね」


 そう言って彼女が指差したのは筋力などを数%上昇させるなどの効果を持ったスキルである。

 彼女は取っていなかったが、本来はこういうスキルを取って日常生活である程度の効果が出るくらいの筈だけど……


「似たような話を物語で読んだ事がありまして……見ててくださいね」


 そう言って彼女は筋力に転生ポイントを少し残して殆どをつぎ込んだ。

 次に残ったポイントで筋力を10%上昇させるスキルを取る。

 え、まさか……


「こうすると、筋力の数値が上がる訳なんですが、ここで筋力に振ったポイントを外すと……」


 再び筋力を0する。

 すると転生ポイントが……少し上がっていた。


「ほら、こうしてちょっとずつポイントを増やして後は欲しいスキルを取れば完成です!」


「……」


 僕は開いた口が塞がらなかった。

 まさかこんなシステムの穴があったとは……とりあえず腹が立ったので彼女にチョップした。


「痛っ!?」


「何考えてるの!? 本来これはこう使う物じゃないよ!? それにこんなスキル取ったって何に使うって言うのさ! 国でも乗っ取る気!?」


「いや……普通の学生生活を……」


「普通の学生生活に魔法なんかいるか!!」


 思わず彼女の頬を叩いてしまった。

 しかし、彼女には殆どダメージが無い所か、彼女は頬を擦ってニコニコしている。

 クソ……このプニプニな肉球が憎らしい。


「兎に角、増やしちゃった分に関しては仕方ないとしても、変なスキルは取っちゃダメ! 分かった?」


「はーい」


 不満そうにしながらも彼女は渋々返事をした。

 全く、どこの世界に禁術級魔法をぶっ放す女子高生がいるんだよ。


「ぶぅ、でもそれだったらどういうスキルを取れって言うんですか」


「それは日常生活や学生生活で使えそうな物じゃないかな? 勉強だったり家事だったり」


「え~、なんか地味……」


「普通はそういう物なんだよ。後は精々攻略に必要な物だよ。あ、そうそう向こうの世界はハーレム推奨だから何人囲ってもいいよ」


「へぇ、そうですか~」


 彼女は僕の言葉に興味もなさそうにキャラメイクを続けている。

 全く、漸く真面なキャラを作ってるのかな?


― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

白河明日香

 AGE:17 SEX:F

スキル:『異世界言語』 『鑑定』 『アイテムボックス』 『可能性の卵』

『暗殺術』Lv10 『格闘術』Lv10 『カウンター』Lv10 『気配感知』Lv10 『気配遮断』Lv10 

『心眼』Lv10 『高速思考』Lv10 『並列思考』Lv10 『立体駆動』Lv10 『舞踏』Lv10 

『清掃』Lv10 『料理』Lv10 『解体』Lv10 『会計』Lv10 『交渉』Lv10 

― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


「ていっ!」


「あたっ!?」


「なんで『暗殺術』がいるの! 『格闘術』には目を(つぶ)るとしても『心眼』とか『立体駆動』なんていらんでしょうが!」


「いや、メイドさんならコレくらいは(たしな)みかなぁって」


「そのメイドさんは伝説の傭兵かなんか? 後ちょくちょく『舞踏』スキルを取ってるけどダンスとか好きな訳?」


「これは『舞踏』スキルには足の運びやタイミングの取り方、相手の呼吸を読んだりする方法が詰まっているからで……」


「なんで君はそうガチなんだ!! はぁ……はぁ……はぁ……ハァ、もういいや。そこまで言うなら好きにしたら? 僕はもう止めないよ……」


「本当!? じゃあ、魔法剣士系で行こうかなぁ、いやドラゴンを召喚して竜騎兵(ドラグーン)というのも捨てがたい……いっそ素手で格闘系とか。戦うメイドさんもいいなぁ。あ、でも装備は自作しないといけないとなると生産系のスキルも……あ、裏ワザめっけ、取得する為のポイントがガクンと減っちゃった」


 ああ、なんか僕がイメージしている乙女ゲームからかけ離れて行く……

 こうして1週間かけて悩んだ末に彼女はキャラクターを作成して、そのステータスで転生した。

 その後、剣や魔法を操りドラゴンに乗るメイド服の女子高生が乙女ゲームの世界を駆け抜ける事となるのはまた別のお話……こんなの絶対おかしいよ!


最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

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