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人類を否定し、神に成り代わる  作者: 雨結 廻


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4-2

米沢の言われるままにオレは朝比奈と共に事件現場となった図書館へと来ていた。

既に図書館は規制線が張られており、生徒は自由に入られないようになっていた。

それでも、石山の死体はまだ現場には残されており、今朝見た時とはあまり変わっていない。

規制線の前には学校が雇っている特殊警備員が数人体制で警備にあたっている。

「詳しい人物ってまさかこの規制線の先にいるって言わないよな?」

一応、まさかとは思うが具体的にどこにその人物がいるのかを聞いていなかったので確認はしておいた方がいいだろう。

質問に対し、米沢は相変わらずの余裕の表情で淡々とした様子で答える。

「流石の僕でもそこまで鬼みたいなことはしないよ。それに、そこにいる朝比奈さんもあんまり死体のある場所の近くで話なんてしたくないでしょ?」

「い、いや、それは大丈夫だよ。人の死体なんて別に見慣れたものだし」

いやいや。そこはいいのかよ。というツッコミを心の中へとしまっておきながら、なるほどと何度か頷いた。

「あ、そう話している内に来たよ」

米沢がふと向けた視線の先に、こちらに向かって走ってくる紫髪のツインテールをした女子生徒。

中々に見た目のインパクトは強いが米沢と同じH組の生徒の一人なのだろうか。

「お待たせしてしまいすみません!」

「大丈夫。僕たちも今来たところだから」

米沢の話している雰囲気を見るに、間違いなくこの子こそが米沢の言う証人だろう。

「そいつが米沢の言う証言をしてくれるっていう……」

「そう。紹介するね。この子は1―E組のリネイク・エード・ラライナ。この学園の図書館で図書館秘書兼この学園の生徒だ」

「お二人とも初めまして。私の名前はリネイク・エード・ラライナ。米沢さんがおっしゃってくれたように図書館秘書を務めています。今は例の事件で残念ながら図書館の方が使えませんが再び図書館が使用出来た時はよろしくお願いしますね」

「オレは鶴川。こっちは同じクラスの朝比奈だ」

「よろしくね。ラライナさん」

「こちらこそよろしくお願いしますね。朝比奈さん。鶴川君」

見た目よりも声は清楚でそれでいてかなり丁寧で礼儀正しい印象のある子だ。

リネイク・エード・ラライナ。

図書館秘書をしている彼女から話される真実とは一体どんなことなのだろうか。

「さてと。早速本題に入るよ。リネイクが証言するよりも前に犯人の名前を言うけど問題ないよね?」

米沢がここで確認をとってきたということはオレたちにとってはある程度顔馴染みのある知っている人物による犯行だということなのだろう。

そうでなければ、わざわざこんな確認を取らずに先に結論を述べれば何の問題もないはずだからだ。

「問題ないが、わざわざその確認を取ったということはオレや朝比奈が接触したのある人物ってことか?」

「お、察しが早くていいね。そうだよ。実は今回の殺人事件の犯人は君と同じクラスメイトの垣見内君の犯行なんだよ」

犯人は垣見内。

米沢の口から放たれた真実に自分でも意外だと感じるように驚きはなかった。

石山と関係がある人物の中で一番殺す動機(ある意味逆恨みに近いものだが)があるのは知っている人間の中では垣見内の他にいない。

問題はどうやって垣見内が石山を殺したのか。

その事件の経緯等をリネイクが話してくれるのだろう。

「もし、本当に垣見内君が石山さんを殺したのならどうやって殺したの?」

「それは簡単な話。死亡原因が複数刺さっている五本の剣ではなく、それとは全く別の腹部の刺し傷だということだよ」

朝比奈の率直な疑問に答えた米沢の言葉は犯人が垣見内だという衝撃を遥かに超えたもの。

発見直後から時間がなかったとはいえ、磔と刺された五本の剣が想像以上に鮮烈なインパクトを放っていたせいもあってか石山のちゃんとした死因を調べていなかったという自分のミスもある。

だがそれは米沢自身も同じはず。

なぜなら、米沢も死体を見つけた時は死体そのものには近づいていないからだ。それでもなお、ここまではっきりと言いきれるのはそれ相応の理由や根拠があってのこと以外に考えられない。

「そこまではっきりと死因が特定できるのはそれ相応の理由があったてのことなんだろ?」

「そうだよ。まぁ僕自身はきちんと彼女の死体を検証したわけじゃないけど。詳しいことはリネイクさん、頼んだよ」

米沢がリネイクに話を振った後、彼女は待っていましたと言わんばかりに説明を始めた。

「実は私、米沢さんと鶴川さんが去った後、図書館が再開されるのを見越して、1限目の授業を休んで現場に来ていました。その際、その時に偶然すれ違った米沢君にここに来たついでに死体について調べてほしいって言われてね。近くにいた警備員に学生証を見せて許可を取った後に特別に中へと入って色々と辺りを調べていたんだよ。私が死体付近で何もしていなかったことは死体の近くに立っている警備員から証言を聞けばそれが証拠になるね」

なるほど。

わざわざ自分から調べるのではなく、あえてリネイクに調べさせたのは自分が調べるよりも図書館秘書であるリネイクに調べさせた方が図書館の構図を完璧に把握している彼女なら、どのようにして石山が殺されたのかなどをより具体的な手掛かりを調べられるというわけか。

犯行現場も普通とは違い、本の貸し出しなどの図書館として利用ができないだけで、事件の捜査として図書館へと入るのは警備員に生徒証さえ見せれば誰でも問題なく現場に入ることだって可能ではある。

「で、その最中に色々と現場を調べてみたんだけど犯人へと繋がる手掛かりが色々と見つかったの」

「て、手掛かりって?」

朝比奈がはやる気持ちを抑え尽きられずに質問をリネイクへと聞き出す。

リネイクは朝比奈の早く知りたいという欲求を抑えさせつつ、再び話を続けていく。

「まぁまぁ。そんなに焦らなくてもちゃんと話すからさ。まず、図書館全体を見た感じ、 大きく荒らされている部分はなかったかな。さらに、刺されている5本の剣は彼女が殺された後に刺したものみたい。これは推測だけど犯人が死因を5本の剣に刺されたことによる出血死と偽装工作するためのものなんじゃないかな」

石山の死因が5本の剣による出血死ではなく、腹部の出血死が原因だとすればその殺された原因となった刃物はどこにいったのだろうか。

さらに、図書館の中があまり荒らされていないのも何か引っかかる。

「なるほど。なら、石山が殺された刃物はどこいったんだ?」

「そこまでは私も流石に調べてないな。図書館にはどこにも隠されてなかったけど。ただ、あの5本の剣のありかなら米沢君が言ってたよ。学校が保管している武器保管倉庫から持ち出したものだって」

「武器保管倉庫だと?」

学校に武器がたくさん置いてある武器専用の倉庫があることは知っていたが、そこから持ち出されていたものだったとは。

武器保管倉庫そのものは基本的に使ってはいけないという禁止ルール的なものもないので、極論誰でも倉庫に入ることができ、それが影響しているのか防犯カメラ等も特に設置されていなかった記憶がある。

「僕が石山さんの死体を見た時に刺さっていた剣を見た瞬間に武器倉庫にあったものだとすぐにわかったよ。僕はこの学園に来てから学校の施設は一通り見て把握していたからね」

「だが、それが本当だとすると犯人だと言ってた垣見内はなんで5本の剣でわざわざ殺した後、石山に突き刺すなんて真似をしたんだ? それに偽装工作をするならこんな大掛かりにする必要もないと思うんだが」

オレの疑問に話を静かに聞いていた朝比奈もうんうんと何度もうなずいた。

石山殺しの最大の疑問に米沢は予想外の事実をオレたちへと突き付けた。

「それなら大丈夫だよ。僕は垣見内君が犯行を行う前日に武器倉庫辺りで偶然見かけて、その時に垣見内が五本の剣をまとめて運ぼうとしているところを偶然目撃したんだ。なんならその時に録音もこっそりとしているからそれを聞いてもいいよ」

米沢がズボンのポケットの中から垣見内と倉庫にあった際に使った録音機をオレ達に見せつけた。

録音された音声を聞くと、それは垣見内がビクビクと震えた声で独り言を呟きながら、五本の剣を必死に運ぼうとしている音声。

もし、これを証拠として提出すれば垣見内は間違いなく言い逃れは出来なくなる。

なぜ録音機を持っていたのか、なぜ前日に米沢が武器倉庫部屋付近にいたのかという率直な疑問もあるが録音機を偽装したにしては随分と声のトーンがリアルすぎるので偽物ではないことだけはわかった。

まだ事件が発生してから半日も経っていないのにこのスピード感と手際の良さは意図的に米沢が計画したものでなければむしろ感服すらも覚える。

「後は彼女を殺した凶器さえ見つけられれば垣見内を犯人といて吊るし上げることができるね」

「色々と多少は気になるところもあるがそれでもすごいな。短期間でもうそこまで捜査を進めていたのか。オレや朝比奈はまだ何もしていないんだが」

「大丈夫。今回の事件、君たちは関係者かもしれないけど首を突っ込む必要はないよ。むしろ、何もしなくてもいい」

米沢の真意が全く読めず、思わず本音がこぼれ出た。

「じゃあなんでオレ達と協力関係を?」

「ある程度垣見内君が犯人であるという根拠を話したから言うけど、今回は僕から貸しを作ることが目的だからね。後は単純に垣見内君を個人的に潰したい諸事情があるんだ」

「個人的な事情?」

「そう。サヨナラの前に忠告してあげるけど、ただここから先は君の方から僕に恩返しをしてからだね。そろそろ僕たちは行くよ。とりあえず、凶器が見つかり次第、早ければ明日にでも学校側に垣見内君を犯人だという証拠を突き出すつもりさ。君たちは静かに、垣見内君が処刑されていく様を見ておけばいい。彼は、この世界では生きてはいけない犯罪者は正義の立場にある僕が手を下すまでだからね」

米沢はオレと朝比奈にどこか忠告するようないい口でリネイクと共に足早に去って行った。

まるで都合の悪いことは聞かれたくないために足早に退場していく政治家のように。

二人きりになったオレと朝比奈は顔を合わせながら米沢とリネイクに関する素直な感想を話し始める。

「なぁ朝比奈。率直にどう感じた?」

「う~ん。確かに、色々と証拠とか動機とかを聞いていれば垣見内君が犯人なのかなとは思うけど。でも、なんか引っかかるというか……」

「そうだよな。何というかあまりにも手際が良すぎる上に都合も良すぎるというか。まるでオレたちに何かを悟らせないうちに早く垣見内を処刑したいという理由があるように見えるというか。このままあっさりとこの事件を解決したことにしない方がいい予感がするな」

オレと朝比奈が両方に感じた疑問。

間違ってはいないのかもしれないが、どうも違和感が完全に拭いきれなかった。

その疑問が結局は晴れることなく、垣見内の処刑は決定されることになる。



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