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人類を否定し、神に成り代わる  作者: 雨結 廻


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今朝の出来事はあまりにも鮮烈だった。

それこそ、人によっては一生のトラウマにだってなりかねない出来事。親しい友達関係であればものの数秒で鬱になっていただろう。

それでも、そんな事を考え続けても石山が漫画やアニメのように蘇ることはない。確実に目の前で石山が死んでいた事実に変わりはない。

しかし、自分のクラスに戻って石山が殺されたという事実を察しているクラスメイトがほとんどなはずなのにも関わらず、クラスの雰囲気はどんよりとした暗い絶望的な雰囲気からかけ離れたいつも通りの普通の高校生が学校生活で送りそうな学生の日常的な雰囲気だった。

それはまるで、石山成子そのものがこのクラスにはいなかったような、そんな違和感。

「同じクラスメイトが死んでもなお、その死を心の底から悲しむ人間は皆無というわけか」

例えクラスメイトが誰かに殺されたとしても所詮は他人事。

他人の死を悲しんでいる余裕はないというわけか。

石山と接触があった朝比奈も垣見内も普段と変わった様子は今のところほとんど見られない。

まず石山殺しの犯人探しをするとなった場合、石山と何らかの形で接触があった朝比奈と垣見内を犯人の対象として見るのは別に不思議なことではない。

ただ、それでも石山が同クラスのクラスメイトではなく、全く無関係だった生徒が何らかの目的で殺した可能性も否定はできない。

オレとしては3日で犯人を捕まえることが出来なくても、最悪でも他の生徒の素性を知りえる情報が手に入れば、むしろ犯人を捕まえて処刑させたいとはそこまで考えていない。

最初にも言った通り、オレは人殺しを捕まえるという正義感に浸るためにこの学園に入ったわけではない。

父親が明かそうとしたこの学園、そして神の種に関する謎と闇を暴くためにここに入学したに過ぎない。

そして、この学園では私情や感情論だけで動くことは自らの命を危険に及ぼすリスクを一気に引き上げかねない。

残酷かつ冷酷だと思われるかもしれないが、クラスメイトが一人殺されているにも関わらずに全く気にする素振りどころか噂程度にもなっていない現状を考えれば日常生活における常識が全く通用しないということぐらいは想像に難くない。

そんなことばかりを今日一日中、ずっと考えていた。

昼休みに美神や朝比奈たちと昼ご飯を食べた時も体育の授業の時も含めて全て。


 そして時はさらに進み、放課後を迎えた。

「さてと。今日は米沢のところに向かわないとな」

まずは米沢の口から知っている情報をまずは収集する必要がある。

それが嘘なのか本当なのかはまだ見極めることは不可能だ。だが、それでも情報というのは常に嘘か真実かの二択を選択し続けなければならない線路と同じ。

不確実なものでも情報は自分の手から常に探し続けなければならないのだ。

教室を静かに去ろうとしたオレの足をもはや聞きなれた声が突如として歩みを止めさせた。「ねぇ鶴川君! ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」

声の主は朝比奈だ。ただ、普段の元気100パーセントの時とは違い、いつもよりも少しばかり声のトーンが落ち着いている。

どうやら、いつもの雑談の続きみたいな穏やかな雰囲気とはいかなさそうだ。

「どうした? 何かオレに用か?」

「あ、あのね。実は今朝、クラスメイトの石山さんが殺されたって話、本当なの?」

朝比奈の目と言葉はどこか現実ではないことを祈っているように見える。

表向きはキャラ設定なのかどうかは分からないがみんなにいつもと変わらずに元気な様子で振舞っていたのは自分がクラスメイトに殺されたことによるショックを隠すことで、他の生徒に弱さを見せつけないためだったのかもしれない。

「あぁ。今朝、図書館の中で磔にされて殺されてた。見るも無残な姿だったよ」

「そ、そっか。て、てことは鶴川君が第一発見者?」

「そうだ。正確に言えば、もう一人いたけどな」

「もう一人?」

首を傾げる朝比奈。もう一人というのは紛れもない米沢のことだ。

ここまで朝比奈が事件に首を突っ込みそうになっている以上、米沢の名を明かさないわけにもいかないだろう。それに、これは今現時点でのオレの直感ではあるが朝比奈は他のクラスメイトに比べて信頼してもいいと感じる。

多少気になる部分はあるが今は疑心暗鬼になりすぎるのも良くない。

「あぁ今からそいつと会いに……」

オレの言いかけた言葉を完璧に遮るようにドアの方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「行く必要はないよ。僕は今ここにいるからね」

声のある方へと顔を振り向くと、そこにはH組の教室で待っているはずの米沢の姿。

「お前、いつの間にここに?」

「いつの間にも何も君がいつまで経っても予定時刻になっても来ないから仕方がないから僕の方からやって来たあげたんだよ」

米沢が残念そうな表情を見るよりも先に慌てて教室にある時計へと目をやる。すると、時刻は既に夕方の十七時半を過ぎていた。教室の終礼が終わってから既に30分近く経っていた。

具体的な時刻は米沢の方から言われていなかったものの流石に放課後になってから30分近く経っていては流石に言い訳もできない。

「それはすまない。少し話しこんでいたら時が経ちすぎていた」

「まぁいいよ。で、その話し込んでいた相手ってそこのお嬢さんのこと?」

米沢の目がすぐに朝比奈の方へと目を向ける。

朝比奈は米沢からの突然の質問に一瞬こそ戸惑った様子は見せたものの、すぐにいつもの顔へと戻し改まった様子で話始める。

「は、はい! 私は朝比奈希って言います! 鶴川君とは同じクラスです!」

「なるほど。君が朝比奈さんか。僕は米沢魁真。その様子だと、例の殺人事件で誰が殺されたのかも知っているようだね?」

「う、うん。さっき鶴川君の口から石山さんが殺されたって」

朝比奈の目線がまた下の方へと俯く。

朝比奈の言葉を聞いた米沢は数秒程何かを考えこんだ後、何かをひらめいたようにオレたちに話し始める。

「ならちょうどいい。朝比奈さん、君も鶴川君と僕と一緒に石山さんを殺した犯人探しに協力しないか? 人手は多すぎるのも問題だがだからといって少なすぎるのも割かれる労力が大変だからね」

「え?」

米沢の提案は朝比奈も石山殺しの犯人探しを一緒に協力しないかというもの。

この提案はむしろ、米沢自身がオレ以外の協力者探しをするためにわざわざ自分のクラスだったH組からT組へとやってきたのかもしれない。

しかし、ここで意外だったのがこの手の提案にはかなり積極的に乗ってくるタイプだった朝比奈が即答せずにどこか戸惑った様子をみせていたことだ。

いや、正確には米沢がこのクラスにやってきた時から朝比奈は表立って表情には見せていないがどこか米沢のことを警戒している雰囲気が感じられた。

「一応聞きますけど、なんで私を?」

「それは単純に被害者と面識があったからかな。まぁ僕自身、君に関する興味があったから提案したに過ぎないけど」

「それって、私が石山さんを殺した可能性があるってこと?」

やはりだ。

朝比奈は明らかにオレと接する時とは違い、米沢に対しては慎重くらい警戒している。

それこそ、条件によっては米沢の要求を一切拒否する可能性すらもあり得るほどに。

そんな朝比奈とは対照的に米沢は表情もほとんど変えることなく淡々と話し始める。

「まぁ可能性はゼロではないかもしれないけど、朝比奈さんはこの事件に関しては犯人じゃないよ。もっと言えば、既に石山さん殺しの犯人の目星はつけているよ」

「え!? も、もう!?」

米沢の言葉にオレと朝比奈の両方に大きな衝撃が走る。

事件からまだ半日も経っていないのに既に米沢は犯人が誰であるかも目星を付けていた。

嘘かどうかは分からないが、これが本当なら警察なんて当てにしないレベルの手際とスピードの速さだ。

しかし、これが本当ならわざわざオレたちに協力を要請するという形にしなくても済ませることが出来るはず。米沢の本当の目的が益々読めない。

「誰なんだ? 犯人って」

「まだ決定的な証拠はないよ。ただ、その証言をしてくれる人物がたまたま図書館にいるからそこで詳しい話はするよ。で、その様子だと二人とも協力するって認識で問題ないよね?」

「流石にそこまで言われるとこっちに拒否権はなさそうだしな。オレは行くよ」

「わ、私も、鶴川君が言うならついていくよ」

あまりにもスピード展開過ぎるがそもそも話を聞かない限りは何も進展のしようがないのでここはYesでいい。これでオレも朝比奈も米沢と臨時的な協力関係がとりあえずは確定し、その足で図書館の方へと向かって行った。

その後、しばらくして教室の端でイヤホンをしながら本を読んでいたベルティアが一人になったタイミングでイヤホンを外し、教室の外へと視線を向ける。

そして、誰かに向けた言葉のように独り言をひっそりとつぶやいた。

「さて。そろそろ私も動くかしら」

ベルティアは自身が愛用する白いオリジナルスナイパーライフルを背中に背負い、静かに教室のドアを閉めた。



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