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高梨先生の宣言と共に幕を上げた学園生活。
同じクラスのベルティアや朝比奈、垣見内などを含めた個性的なクラスメイト達と過ごす三年間。この中から一体何人がこの学園生活で生き残れるのだろうか。
そんな常に張り詰めた緊張感が漂い続ける学園生活が始まって早くも1週間が経った。
その間、オレの予想とは裏腹に以外にもいきなり生徒同士の殺し合いが行われることはなかった。
もっと校則ガン無視の血みどろな争いがあると個人的には予測していたが、流石に誰か生徒を殺しても問答無用に学校側によって処刑されるとなれば、多少は自重せざる終えないわけか。
そして、学園生活が始まってオレの周りにもだいぶと変化が出てきた。
その一番の変化はクラスの中のクラスメイトの現時点でのそれぞれの立ち位置、そしてオレに興味を示している人間が少なくないことだ。
「ねぇ鶴川君! 良かったら私も一緒にお弁当食べていい?」
その中で特に積極的に声をかけてくるのが朝比奈である。
相変わらず誰しもが羨ましく感じるレベルのコミュニケーション能力の高さにこの明るく、全ての男女も問わずに魅了する顔と身体。
ここまで完璧な見た目だと、そこまでの努力をしなくても人生の成功が約束されていそうなレベルである。
だからこそ、朝比奈がこうして積極的にこれといった特徴がないオレに声をかけてくるのが不思議で仕方がない。
オレ自身が誰から見ても優秀な人間ならば朝比奈の方から接触するのは理解できる行動である。
事実、優秀な人間の下について働きたいといった行動原理が出るのは自然だろう。
しかし、自分で言うのもあれだが今のオレはこの学園の中では優秀な人間には入らないだろう。あえて分類するなら、この学園の中では普通の人間に分類されるはずだ。まさに可もなく不可もなくといった存在。早くも存在感を出し始めている垣見内や朝比奈たちと比べればまだ一週間しか経っていないとはいえ、オレはそこまで積極的に動いていたわけではない。
なので朝比奈がこうして積極的に声をかけてくるのがある意味本当に不思議だった。
「別にオレは構わないが、お前はいいのか? オレ以外にも朝比奈と昼飯を食べたい奴はそこら中にいると思うのだが」
「う~ん。そうかもしれないけど、何となく他の人よりも先に鶴川君と仲良くなりたいな~って! あ、後、あそこにいる玲奈ちゃんも一緒に誘っていいかな? あの子、入学して一週間も経っているのにずっと独りぼっちみたいだし」
朝比奈の指さす先に座っている長すぎず短すぎない青空が霞むほどの濃い青い髪に似合わないほどの暗い雰囲気を解き放っている女の子。
彼女の名前は確か、美神玲奈。
見た目はそこそこの可愛さなのだが、いかんせん入学した直後からずっと今のような陰湿な雰囲気を漂わせていたことで俗にいう完全なボッチ状態になっていた。
そんな彼女にも嫌な顔一つせず、嫌ったりすることもせずに優しく手を差し伸べる朝比奈の姿はまるで身近にいるお姉ちゃんのようである。
「好きにすればいい。オレは先に昼飯食べてるからな」
「うん! ありがとう! じゃあ早速呼んでくるよ!」
朝比奈は軽い会釈の後、美神の方へと声をかけに行った。
本当のことを言えば、オレは朝比奈も含めてこの学園にいる生徒全員をまだ完全に信用しきっているわけではない。むしろ、今の朝比奈がこの状況下で異質な立ち回りをしている。
普通であれば、オレやベルティアのように序盤は静観して、ある程度このクラスの状況などを把握した上でどう動いていくかが基本的なセオリーである。
安易に生徒と接触を図ることが決して悪いことではないが、今の朝比奈は誰でも満遍なく声をかけまくっているというよりもむしろ、特定の誰かに絞って声をかけているところが少し気になるところだった。
事実、朝比奈はオレや今声をかけに言っている美神以外にもベルティアやこのクラスの学級リーダーを務めることになった白と黒の髪とインテリ眼鏡をかけた司山東次郎、クラスの端の方で同じクラスの女の子たちと談笑しているサラサラとした黒いロングの柊砂羽、そしてその近くで小説らしきものを読んでいる石山成子などにも声をかけており、対照的に垣見内やその他の生徒には自分からは一切声をかけていないところを見れば、間違いなく朝比奈は自分から話すときは人を選んで声をかけている。
人を選んでいることそのものは問題じゃない。むしろ、誰にでも親しく声をかけてくる人間の方が怪しい場合も多い。では何が問題なのか。それはまだ入学して1週間という短い期間で人を選別できるほどの判断材料をどうやって手に入れたという点である。
だが、これは朝比奈の素性を調べたり、本人に直接聞かない限りは明かされることのない真実。所詮、可能性の一つとしてあげたものでしかない。
そんな考えを頭に巡らせながら自分の部屋で作った手作り弁当を口の中へとほおばっていると、朝比奈がルンルンの様子で美神を連れてきた。
「鶴川君、美神さん連れてきたよ! ほら! 美神ちゃんも一緒にご飯食べよ?」
「で、で、で、ででででも、わ、わ、わ、わた、私みたいな陰キャで人類の終末点のようなカ、カスですよ? そ、そんな私が全てを照らす朝比奈さんと昼ご飯を食べるなんて……お、お、恐れ多すぎて今にもゲロ吐きそうです……」
初めて声を聴いたかと思えばなんだ。
このネガティブの先祖様のような強烈なキャラクターは。
たまに視界に入る時に見かけるときからかなり雰囲気の暗い子だとは思ってたがまさかここまで強烈な負のオーラ放っている子だとは。見た目からして少し意外だ。
そんなド緊張の美神とは対照的に朝比奈はポンポンと美神の背中を叩きながら笑顔で話す。
「大丈夫だって! そんなに怯えなくてもリラックスで一緒にご飯食べるだけだからさ! 鶴川君にもちゃんと許可は取ってるんだし!」
「で、で、でも………朝比奈さんは良くても、そこのつ、鶴川さんはど、ど、ど、どうなんですか……?」
「オレは一緒でも問題ないぞ」
「ほらね? だから一緒に食べよ! 美神さん!」
「そ、そ、そ、そこまで言うなら……」
朝比奈の陽キャの圧に屈したのか美神はプルプルと体を震わせながらゆっくりと朝比奈が用意してくれた椅子へと座る。
その時の会話は、血で争う学園生活とは程遠い日常会話が中心だった。
そしてオレ、朝比奈、美神の三人でいろんな話をしながらご飯を食べ進めていった。
しかしこれが束の間の平和であることを後に痛感させられることになる。




