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「初めに、みんなも承知だとは思うがこの学園は徹底した生存競争の上で学校生活は行われる。自らの生存のためには校則に則ったものであれば基本的に何をしてもかまわない。逆に言えば、校則違反を犯した者には処罰、つまりは死刑が行われる。残酷かもしれないがこの学園に入学した以上はそういう心と覚悟を持ってくれたまえ」
開口一番、高梨先生から放たれた言葉はオレを含めた全生徒たちの全神経にしっかりと突き刺さる。
この学園が普通の学校じゃないことは入学する段階、いや受験を受けた段階で十二分にわかっていたことではある。それでも、先生の口からはっきりと言われたことで改めて現実味が一気に増したといった方がいいだろう。
高校に入学した直後のワイワイした雰囲気とは正反対の一切の談笑すらも許さない沈黙という名の地獄のような雰囲気である。
そんなことをお構いなしに高梨先生は淡々と話を進めていく。
「さてと、忠告はこれくらいにして、早速ホームルームを始める。既に事前にお前たちに知らせていると思うがこの学園には入学式は存在しない。なぜならみんな仲良く学校生活を送ることがこの学園の目的ではないからだ。つまり、私が話している今この瞬間から既に競争は始まっている」
普通の高校ならあるはずの入学式がこの学園には存在しない。ここだけを見てもやはり普通の高校ではないことぐらいは明白にわかるだろう。
高梨先生は一度、持参してきた自分のペットボトルの水を喉の奥へと滝のように流し込み、再び話し始める。
「入学して早々ではあるがまずはこの学園の簡単なルールについて説明しておこうと思う。この学園は君たちが知っての通り、実力が全て競争社会。この学園に校則に基づいたルールの元、様々な試験を通じて生徒達を実力で徹底的に振るい落としていく。校則は各自でしっかりと確認した上で、気になる事があれば説明が終わり次第、私に質問してくれ。そして、その記念すべき最初の試験を今この場で発表しようと思う」
そう言って高梨先生は持参していたタブレットを取り出し、軽快な手つきとともに目の前にあったはずの黒板がみるみるうちに変形していく。
そしてものの一分も経たないうちに巨大モニターへと様変わりしていた。
こういう最先端のシステムが組み込まれているところも政府が巨額の税金を投入しただけのことはある。
「ここからは、このモニターを使って簡単ではあるが今後行われる試験内容について説明していこう。まず、入学して行われる最初の試験は五~七月にかけて長期間によって行われる人狼王試験だ。ここでの具体的な試験内容についてはあえて言及を避けるが準備だけは怠らないように。一学期は現時点ではこの試験のみだ。また詳細が入り次第、お前たちに伝えるつもりだ。また、今日から試験開始までの間は生徒同士の殺し合いは基本的に禁止だが、その代わりに生徒同士が互いに了承した場合に特別模擬として一対一での試合を行うことができる。ルールは後々お前たちのスマホに通達しておくが、内容を簡単に言えば、今回は極一部の例外を除いて基本的には殺し合いなしのお互いの実力試しといったものだ。ただし、命をかけない代わりにお互いが賭けるもの……それがこのKPT。通称、キルポイントだ」
言葉終わりと同時にクラスメイト達のスマホにピロンという通知音と同時に全生徒統一で百万KPTが付与された。
「今全員が確認したと思うが入学した全員に一律で百万KPTを配布した。これはこの学園でしか使えないお金と言っていい。今後この学園で生活をしていく際はこれを使って日常品や武器などを購入していくことになる。当然、この学園内ではこのKPT以外のお金を使うことはもちろん不可能だ。そしてこのKPTは月初めに十万KPTが全員自動的に配布される。そして自動配布以外でこのKPTを獲得する方法は定期試験と一部の特別試験を除いて、実力勝負による特別模擬で勝った場合のみ。つまりは実力なき者はいずれお金(KPT)に困窮していくことになる」
ここまでの高梨先生の話でようやくこの学園生活というものが見えてきた。
この学園は基本的に実力が全ての世界で、それは殺し合いが発生する試験においてもKPTを賭けた勝負も同じである。一応、KPTに関しては最低限の救済措置はあるものの、それでも実力格差は今後間違いなく出てくることを考えれば、ある意味シンプルでわかりやすいルールともいえる。
そしてこれは、高梨先生が後から話すテスト勉強においても同じである。
「ちなみに今後行われる学力定期テストもKPTは獲得することはできるが獲得できるのは成績の良かった上位五十人のみ。この学園でより豊かで優越感に浸りたい学園生活を送りたいのであればその自らの実力でKPTをもぎ取る他に道はない。試験を含めてな」
勉強以外でKPTを獲得するには試験を除けば実力勝負のタイマン勝負以外に方法はない。
改めて聞くとシンプルであるが故に弱き者は躊躇なく叩き落される。
これはオレも相当な覚悟を持ってこの学園生活していかなければ、あっという間に獣に狩られる草食動物の仲間入りというわけか。
いや、そんなことはこの学園に入った時点で重々承知か。
「以上が私からの説明だが、他に聞きたいことや説明があれば受け付けるぞ」
「先生、一つ質問いいっすか」
威勢のいい声と共に上から威圧するような態度で質問してきたのはさっきオレに喧嘩を吹っ掛けてきた垣見内だ。
「垣見内か。質問の内容はなんだ?」
「このスマホに送られてきた学園内のルールって違反したら処刑だって書いてあるけどよ。逆に言えばここに書かれていないことは何をしても処刑されないって認識でいいんだよな?」
「まぁそうだな。基本的には校則に書かれていないことは何をしてもらっても問題ない。私たち学校側もそういう認識のつもりだ」
「なるほどな。てことはタイマン勝負で賭ける対象がKPTではなく自らの命ってことも問題ないってことだよな?」
「お前がどこからその情報を知ったのか後で問いただしてやりたいが、双方同意の元でなら、一応問題はない。ただし後から学校に相互同意証明書を提出してもらう必要はあるが」
「おぉ! やっぱりそうか! こりゃあいいこと聞いたぜ。俺からは以上だ」
垣見内は満面の不敵な笑みで話を終えた。
垣見内のさっきの発言はまさに、ルールの穴をつくような内容は是正されるかどうかを確認したもの。ある意味、他の生徒も一番気になった内容ではあるが高梨先生の問題ないという言葉はより実力差をより顕著にしたものだともいえる。
「他に質問はないか?」
「先生。質問一ついいですか?」
そうゆっくりと手をあげたのはオレの横に座っていた女子生徒だ。
「お前はベルティアだな。質問はなんだ?」
「さっきの質問のついでに聞きますけどこの特別模擬はこのルール以外にも存在してますよね?」
「というと?」
「特別模擬のルールでは三つあるルールの内の一つであるダウン制を採用。どちらかが十秒以上ダウンさせた方が勝ちというルール。そしてここのタイマン勝負には書かれていない二つのルールが存在します。それは………」
「先制アタック制とキル制のことだね? ベルティアはタイマン勝負にこの二つが該当されるかどうかを聞きたいってことだな?」
「そうです。自分の生死にかかわることなのでちゃんと確認しておきたくて」
ここに来て、校則には書かれていないルールと勝負が続けてでてきてオレが冷静に頭の整理をつく暇も与えない。。
事前にこの学園のことは調べておいたつもりだったがまだまだオレが知りえない情報も随分と多いようだ。
そしてそれは垣見内も同様だった。
「おいおい。さっきから話を聞いてりゃ、特別模擬に隠しルールが存在してるって? そういうのは早く言ってくれよ! こっちはやり合いたくてうずうずしてるんだぜ?」
「落ち着け垣見内。この際、お前たちに話しておくがこの学園には表向きの校則とは別に裏校則が存在している。裏校則とはいわばさっきの特別模擬のような校則では書かれていない別ルール的なものが存在する。さっきの垣見内が質問していた校則に書かれていないことは何をしてもいいという内容だったがこれは裏校則に該当しているものが基本的には条件となる。ただし、裏校則は普通の校則と違って、学校側から具体的な内容を掲示したりすることはない。ベルティアや垣見内がどうやって裏校則を知ったのかは知らないが知りたい奴は自分から情報を手に入れることだ。それと、話が逸れてしまったが今回の人狼王試験までに行われる特別模擬はキル制以外の先生アタック制とダウン制のどちらかだ。なので人狼王試験が終わるまではキル制含めた殺しは一切禁止ということになるな」
高梨先生の話終わりに、ベルティアが少しフーと息を吐いた後に改めて前を向いて話し始める。
「そうですか。質問にお答え頂き感謝します」
たった短い言葉であったがそこにはどこか不満と殺気を同時に炊き上がらせたような重い言葉だった。
「質問はもうないな? ないのであればこれで入学して最初のホームルームを終了する。最後に、君たちが最後まで生き残って卒業できるよう検討を祈る。以上だ」
最後に高梨先生は改めて強い口調でそう話しを締めくくり、巨大なモニターを元に戻し、タブレットとペットボトルを両手に持ったまま教室の外へと出ていった。
この瞬間、いよいよ真の実力社会による学園生活、同時にそれぞれの想いと思惑をかけた緊張感が漂わせた極限の学園生活が幕を上げることになる。




