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人類を否定し、神に成り代わる  作者: 雨結 廻


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14-2

「やぁ、君は朝比奈君だったね? あの時以来になるかな。見ないうちにもう一人の鶴川君は酷い傷だらけのようだけど」

突然の想定外の訪問者に朝比奈自身は驚きもあったそうだが、それ以上に米沢が一連の事件に関与していることを疑っていた可能性があったことが朝比奈に強い不信感という感情を押さえつけていた。

「まるで他人事のように言うんですね。あなたが裏で操っていたというシナリオもゼロじゃないのに」

強めのとげを入れた言葉を投げかけると、米沢は怒ったり動揺したりという一般人にありがちな反応ではなく、むしろ自分が疑われることも想定していたかのような笑みでこう答えた。

「へぇ~。僕とそこまでのつながりがあるわけじゃないのによくそんな憶測が建てられますね。何か根拠なり理由があってのことなのですか?」

まるで自分が疑われることを分かったうえでの他人事のような対応。

自分が米沢の糸によって操られているような感覚になった朝比奈は、珍しく感情的でこの部屋中に言い散らかすような言い方でこう回答した。

「根拠なんてない。でも、私たちとほんの数日しか面識がなく、かといって友達になったわけでもないあなたがわざわざ学校が一連の騒動を生徒たちに正式的に説明するよりも前に鶴川君のところにお見舞いに来たなんて随分とむしが良すぎるでしょと思っただけ」

朝比奈の指摘は今聞けば当然ともいえる。

垣見内が死んだあと、オレ達のほうに何かを言いに来るわけもなく、そのまま何もなかったかのように時は流れたのだ。

もしここで、『事件は解決したのでもう大丈夫ですよ』と一言でも言っていればこの疑問が生まれることはなかっただろう。

けど、それを行わなかった。

これは裏を返せば、垣見内を処理した後にわざわざオレたちに直接顔を合わせることに不都合が生じる可能性があったからしなかったともとれる。

むしろ、その可能性が高いと朝比奈は考えた。

朝比奈の推理に米沢は自分が疑われてもなお、動揺などの感情はなくむしろ朝比奈の推理に笑顔で拍手していた。

そして、その後に彼の口から放たれる衝撃の真実がこの場を一気に凍り付かせた。

「すごいね。まさかこんなに早く僕のことに気が付ける人がいるなんて。まぁこれも想定のうちだけど。そう。僕こそがつい先日、殺されたE組のラニエク・ソード・リリアナを裏で操っていた人物こそ僕だよ」

朝比奈が疑っていた推測が真実となった直後、米沢に対する感情にこいつが美神を殺したんだという憎悪の感情が確実に増加していた。

「な、なんで。なんで、わざわざこのタイミングで自白したの? まさか隠し切れないから自白するために会い来たっていうの!」

「とんでもない。僕はそんなレベルの低い煽りをするために来たわけじゃないよ。元々、一連の事件が解決したタイミングで君たちに自白するつもりだったからね。それに、僕にとってはリリアナを操っていたのが仮に事前にばれたとしても想定の範囲内。むしろデータも獲れて満足しているよ。もちろん、リリアナ自身が殺されることもね」

米沢の思考を全く推測できず、朝比奈は憎悪とともに理解のできない恐怖が徐々にこの部屋を覆っていたそうだ。

「い、いったい。あなたは何者なの! もしかして死神の目のメンバーの一人なの!」

朝比奈は自分が愛用する刀の鞘を右手にがっちりと掴みながら吐き捨てるように問いかける。

そして、この後に発した米沢の言葉が朝比奈の憎悪を頂点へと引き上げた。

「僕は死神の目なんか薄汚い犯罪組織のメンバーじゃないさ。むしろ逆、僕は朝比奈さんやそこで眠っている男のような犯罪者たちに鉄槌を下す正義の人間だよ」

自分、そしてオレをまるで犯罪者であると決めつけるような言い方をした米沢に朝比奈が我慢し続けていた怒りがついに沸点を超えた。

朝比奈は鞘から自分の刀を取りただし、米沢の首元へと刃を差し向ける。

しかし、その怒りの刃は米沢の右手によって首元に届くことなく留まった。

米沢の右手は刀で貫かれたことによる痛々しい出血が見受けられる。

それでも米沢は大して痛がるそぶりも見せることなく、相変わらず笑顔でこう答えた。

「久しぶりに君の刃を見たよ。相変わらず一瞬で他人に死を感じさせるほどの恐ろしい殺気だ。でも、あの時よりは確実にさび付いている。本当に残念だ。君が今も組織の一員として最前線で動き続けていればこうしてきれいな刃がさびることもなかっただろうに」

「私を犯罪者と呼ぶなり、悪者として呼ぶのは好きにすればいい。私自身もあの時に背負った十字架と呪いからは二度と決別されることはないと思っているし。でも、私以外の、それも鶴川君を犯罪者という悪としてつるし上げることだけは決して許さない!」

朝比奈の目は赤く光っていた。

米沢の目には、その目が学園に入学する前に見た朝比奈の目と同じ目だった。

「そうか。君も落ちるところまで落ちたというわけか。残念だよ。かつて、死神の目ナンバー2として人殺しの最前線で動き続けた伝説の死神がここまで一人の犯罪者によって変わってしまうとはね」

更なる言葉が朝比奈の持つ刀の力をさらに増幅させる。

しかし、結局は最後まで米沢の首に朝比奈の刃が届くことはなかった。

米沢は朝比奈の刀を刺さった右手の平から強引に引きはがした。

刺された右手が凄まじい量の血が流れている。

米沢は近くにあった予備用の包帯によって一時的に出血を止める手当をした後、朝比奈に背を向けた。

「それじゃあ僕は帰るよ。あ、それと最後に一つだけ。これから先、僕のほうから直接、今後しばらくの間は一切君たちには直接干渉しないとだけ伝えておくよ。まあこんな出来事があった後だし、信じろとも強制しない。好きに感じ取ってくれて構わないよ。僕は僕で次の準備へと進ませてもらうから。じゃあね」

米沢はそう言い残して、朝比奈からの返事を聞くことなく治療室から去ったという。


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