12-2
決闘当日。
私は自分の切り札的殺人円盤ヨーヨーの投入も視野に、鶴川君の決闘が始まった。
しかし、結果は私の圧勝。
確かに普通の人間にしてはあらゆる動きが優れており、私じゃなければやられていた可能性もあった。それでも結果は私の切り札を前に無惨に体中が真っ赤に染まっていた。
「随分と警戒していたけど大したことないじゃない。これじゃあ私の手で作品を創るまでもないわね」
私は残念を通り越して失望していた。
ようやく、自分が理想を捧げる作品を創れると思って切り札まで用意した結果がこんなにもあっさりとした事実。もはや怒りや失望という感情すらも湧かなかった。
私は気持ちを切り替え、鶴川と同時に動いていた朝比奈とベルティアも自らの手で赤く染めることを決めた。
「今度こそ、私が求める理想の作品を……!」
新たに心に誓った直後だった。
背後でゴトゴトと何かが動く音が聞こえる。すぐに後ろへと振り返ると剣まみれで血だらけで死んで倒れていたはずの鶴川が立っていた。
「な、なんで? 私の攻撃は確かに命中した。しかも即死に該当するの出血量。それなのに、どうしてあなたが立ち上げれるの?」
思わず動揺が出た。
今まで自分最後まできっちりと殺しを済ませた人間の中で生き返った人間は存在しない。
だからこそ、私は鶴川がゾンビのように立ち上がっている現実に動揺を隠し切れなかった。
「お前には、感謝しなくちゃな……! 最後のとどめをしなかったことにな!」
その瞬間、鶴川は自分に刺さっていた剣を次々と強引に新たに出血させながら、凄まじいオーラを放っていた。確かに、剣の雨で体の原形をとどめないほどの一撃を食らわせることも出来たが、それをしなくても数分も持たずに死ぬだろうと思っていた。
「ふ、ふざけないで! 私の刃があなたのような凡人如きに折れるはずがないのよ!」
私は再び殺人円盤ヨーヨーを取り出し、鶴川の方へと再び動かし、今度は確実に息の根を止めるべくここにある全ての刃物武器を操りながら鶴川の方へと投げ飛ばした。
ところが、鶴川はさっきとは違い、一切武器を使うことなく飛んでくる刃物たちを素手で落としていく。更には私の切り札だった殺人円盤ヨーヨーも鶴川の想像を遥かに超えたスピードで追いつくことができない。それどころか、殺人円盤ヨーヨーそのものが鶴川の手によって一瞬にして破壊された。
切り札を失い、唖然としている私に鶴川は躊躇なく、近づいていく。
「来ないで! 私に近づいてこないで!」
任務を務めて以来、初めてと言っていい恐怖の悲鳴と共に最後のあがきに近い毒を塗ったナイフを鶴川に刺しに行った。
しかし、そのナイフは無情にも鶴川の手によって跳ね返され、最後には究極の一撃と言わんばかりに右拳が私の顔に振りかざされようとしていた。
「これがオレの能力、アドバーシティー・リヴァーサル(逆境・逆転)だ」
鶴川の拳は私の顔に直撃すると、見たことのない感じたことのない圧倒的な一撃に私はなすすべなく、一秒も経たずに武器倉庫部屋の端まで吹き飛ばされた。
その瞬間、私は恩師の言葉の意味をようやく理解した。
「あ。あの人が言っていた通りだ。こいつはいずれ世界が敵に回しちゃいけない存在になる。私が勝手に失望して、勝手に呆れることなく作品として仕上げるためにちゃんととどめを刺していれば、この人なら私が求める理想の作品になったんだろうな」
私が任務の中で初めて感じた最初で最後の後悔と共に私の刃は一人の青年の手によってはっきりと折られてしまったのだ。




